〔センター行事〕
第24回業績発表会優秀賞受賞者から一言
管理部企画課


 1月号国リハニュースでお知らせいたしましたが、12月25日(火)に行われました第24回業績発表会において、優秀賞を受賞されました7名の方々にコメントをいただきましたのでご紹介します。


○優秀賞  
 病院看護部 井草 良子
 管理部総務課栄養管理室 内山 久子
 病院看護部 鏡味 麻里子
 病院看護部 木内 玲子
 更生訓練所職能部職能訓練課自動車訓練室 熊倉 良雄
 更生訓練所理療教育部 舘田 美保
 研究所補装具製作部 三田 友記




病院看護部手術室・中央材料室師長 井草 良子

演題:「衛生材料・滅菌器材の在庫管理一元化と手術室業務の見直し」


 この度は、看護の日常業務の取り組みを評価していただきありがとうございました。

 看護部は、看護の質の向上を目指して業務改善を重要な活動方針にしています。手術室・中央材料室では、平成16年から医療材料・衛生材料の物品管理に関わる無駄、無理、ムラの見直しを積極的に進めました。そして、平成17年には手術室と中央材料室の機能を維持しながら改修工事が行われ、工事期間中の仮の移転先探しや医療サービスが低下しないように必要な資源(人・物・予算・情報)の調整など困難な状況に直面したとき、これを逆に良い機会ととらえ生かそうとしました。

 人は変化ということに恐れを感じる心理を持っているといいますが、この時期に病棟勤務であった私は、色々と変わっていく医療材料・衛生材料などに戸惑いを感じ業務に支障がでては困るなどと考えていました。立場を変えて手術室・中央材料室師長となった時、業務を改善するために根拠となる沢山の情報をもって他部門と交渉を進め、中央材料室通信を配信しながら改善を進めていたのだということを知りました。根拠をもってわかりやすく情報提供し、信念を持って行動すれば新しいことも徐々に受け入れてもらえるということを実感しました。今後、医療材料・衛生材料などは購入窓口の一本化を充実させ、安全、迅速、経済面を考慮した委員会の設置や各部門と連動したバーコード管理が好ましいと考えています。

 今回の変更に伴い多数の方にご支援いただいたことに感謝いたします。







管理部総務課栄養管理室栄養係長 内山 久子

演題:「脊髄損傷者の食事提供計画における安静時代謝量の測定意義の検討」


 この度は、過大な評価をいただきましてありがとうございました。

 また、調査協力に携わった栄養管理室スタッフ、病棟看護師の方々、首都大学東京の稲山貴代氏、城西大学の加園恵三氏・角田伸代氏及び大学院生横瀬さん並びに協力いただいた学部生の方々との共同によって得られた結果ですので、この場をお借りして感謝を申し上げます。

 今回の発表は、入院患者を対象に脊髄損傷者への適切な栄養管理を検討することを目的とし、実際に安静時の代謝量測定を行った結果、その必要性を認められるとした報告です。

 今まで、脊髄損傷者に対する厚生科学研究でも、健常者と比較すると基礎代謝量は低値であることが示唆されており、そのことを検証していくために行ったものです。

 実際、障害者に対する栄養管理は、まだ未開発なところが多く、エビデンスを示していくための研究や調査は重要だと思います。目指す栄養管理は、個々の栄養状態を評価・判定し、問題点を捉え、解決のための最適なプログラムを作成、実施し、実施後の評価を行うことです。科学的根拠に基づいた医療・栄養の実践及び指針の作成が対象者への健康の貢献につながっていきます。

 今後も調査を継続し、データを集積して、その結果をもとに、QOL向上のための栄養サポートガイドの作成を行い、提供していきたいと考えています。そして、障害の特性を把握しながら、未開発な領域を少しでも明らかにしていくために検討を続けていきたいと思います。







病院看護部4階病棟看護師 鏡味 麻里子

演題:「「患者と共に立てる看護計画」導入後の評価」


 「患者と共に立てる看護計画」は、患者・家族が医療・看護者への希望や要望を看護記録用紙に直接記入し、看護師がその内容をもとに看護計画を立案し、患者・家族に説明を行い、同意を得るというものです。

 このような取り組みは、患者の医療への参加と自己決定を求める声の高まり、また、医療側が患者の生活の質を尊重しようとする主張により、1998年ごろから看護学雑誌に「患者参加の看護計画」として特集が多く組まれるようになりました。ほぼ10年のときを経た現在、「患者と共に立てる看護計画」は多くの病院ですでに導入されています。

 これまでも私たちは患者の気持ちを推し量りながら看護ケアを実践してきました。しかし、患者・家族に説明し同意を得るためには、専門用語をわかりやすくするための用語の整理や、記録様式の検討など課題の見直し作業が必要でした。これらの検討を重ね「看護記録ガイドライン」の改訂を行い、試行期間を経て「患者と共に立てる看護計画」の導入に至りました。

 今回、この日常業務の取り組みが評価されての受賞は今後の活動への大きな励みとなります。患者の「思い」と看護計画を第三者にわかる記録にすることで他部門や患者・家族とも共有できるよう、看護記録検討委員会の活動を中心に看護部全体で看護記録の充実を目指していきたいと考えています。ありがとうございました。







病院看護部外来・入所者診療室看護師長 木内 玲子

演題:「共に健やかに生きる知恵を学び合う〜健康教室の取り組み〜」


 この度は業績発表会において、1年間取り組んできた健康教室について評価していただき、うれしいかぎりです。ありがとうございました。

 担当者は医師・看護師・栄養士・運動療法士と職種は異なりますが、それぞれが専門職として、健康の維持・増進のために病院の利用者の方々にどのような医療サービスを提供できるか、また、センター職員として病院のサービス向上にどのように貢献できるかという思いからスタートしました。足を踏み出してからあっという間の1年でしたが、よく続いたねというのが担当者の実感です。継続は力と言いますが、これも、参加者のみなさまと快く講師をお引き受けいただいた諸先生方のお力と、心より感謝いたしております。

 参加される方々に、健康教室を通して自分の体・自分の生活と向き合い、共に健やかに生きる知恵を学び合うことで、よりよい生活を選択していただけることが私たちの願いです。これからも、障害の有無にかかわらず、参加される方々へのヘルスプロモーションの一環として、また、コミュニティーの場として、生活の質の向上への一助となるよう、参加される方々と共に創意工夫しながら、健康教室を継続させていきたいと考えております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。







更生訓練所職能部職能訓練課自動車訓練室自動車訓練専門職 熊倉 良雄

演題:「重度障害者の自動車搭乗時の安全性―ダミーを使った走行実験結果―」


 重度障害者は、施設や学校での送迎時や家族の運転する一般の自動車に乗車して移動する場合が多いと思いますが、運転中の危険防止策については、運転者の判断で行われているのが現状です。そこで、重度障害者が一般の自動車による送迎時の安全性をより高めるための基礎資料を得ることを目的に、2005年から研究所福祉機器開発部と職能部自動車訓練室が共同で調査研究を始めました。今回受賞した研究発表は調査時に明らかとなった乗車姿勢の問題点について、日常の運転で起こりうる急停止などの時に安全性が保てるかについて、ダミーを使い走行実験を行った内容を報告したものです。その結果により、背もたれを後方へ大きく倒して乗車しているためにシートベルトを装着しても身体が大きく前方へずれること、また、交通事故の時には、シートベルトの接触圧が高くベルトによって身体に傷害を与える可能性があることが分かりました。近年、身体に障害のある方にとって乗車しやすい自動車が増えてきましたが、乗車中の安全性に関しては、一般的に障害のない方を基準に自動車が作られているため不十分な点が生じるものと思われます。今後、急停止については重度障害者を対象にした既存の座位保持装置があるので、その有効性について検討していきたいと考えております。最後になりましたが、調査研究にあたり良きパートナーとなって積極的に協力して下さった研究所福祉機器開発部・廣瀬秀行氏に対して心からお礼申し上げます。







更生訓練所理療教育部教官 舘田 美保

演題:「マルチメディア活用のシステム開発とモデル訓練による実用化への課題」


 今回の発表は、マルチメディアを活用した視覚障害者用教育訓練支援システムの研究開発の3年間の取組みとして報告を致しました。研究活動には国リハ、視力センター他、30名のメンバーが関わり、業績発表会では6題についてグループとして発表させて頂きました。優秀賞はグループとして受賞できたと受止めております。ありがとうございます。3年間の取組みで最も印象に残った場面は塩原視力障害センターにて行われた5日間のモデル訓練です。インストラクターとして訓練に参加したことで、被検者の皆さんが、何に困っているのか、何をしたいのか、パソコン活用を介して考える機会を得られたと実感しています。また、5日間連続の訓練であっても、被検者の皆さんが疲れも見せずに元気になっていく様子には驚き、深く印象に残っています。

 この3年間を振り返りますと、私自身が研究の対象者であったような気がします。その結果、情報支援のインストラクターとしての一歩を学ぶことができたと思っています。

 ご協力を頂いた視力センター利用者の皆様、多くの場面でご指導をしてくださった皆様、共に活動を重ねましたグループの皆様、最適学習環境を目指して再びお会いできる日が来ることを願っております。







研究所補装具製作部義肢装具士 三田 友記

演題:「幻肢の運動感覚を励起する義手「幻肢マニピュレータ」の有効性について」


 切断した手足がまだあるかのように感じる「幻肢」には「幻肢痛」という苦痛が伴うために、幻肢そのものが害であるかのように捉えられがちです。切断には脳血管障害や脊髄損傷のように中枢神経系への直接的な障害はありません。しかし近年の脳科学研究の成果は、幻肢痛や幻肢の短縮と大脳皮質再構成との高い相関を示し、痛みのある幻肢と無い幻肢を区別しています。切断によって生じる身体と身体像とのギャップが、少なからず中枢神経系への影響を及ぼしていると考えると、切断リハもその一部は「神経リハビリテーション」の範疇に含まれ、装着訓練や義肢の仕様は脳の可塑性を前提にデザインされていくべきものと考えます。

 私たちは幻肢をむしろ利用することが幻肢痛を軽減するのではないかという視座から、幻肢の運動感覚を励起する義手「幻肢マニピュレータ」の有効性について検討を行いました。その結果、少数例での計測ではありますが、幻肢マニピュレータによって幻肢が動かしやすくなり、断端部の血行が促進されることがわかりました。今後は幻肢の動かしやすさと幻肢痛の度合いについてさらに研究を進めていく予定です。

 国立身体障害者リハビリテーションセンターは義肢の訓練部門、製作・適合・調整の製作部門、脳機能評価を行うことが可能な研究部門をすべて保有する国内はもとより世界的にみても稀有な施設です。本研究のテーマはこれらの部門のセラピストや研究者との共同によってのみ進められるものでした。今回頂きました評価は、本センターの機能を横断的に発揮できたことに対するものと認識しております。関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 発表の内容についてお問い合わせがありましたら、発表者メールアドレスmita@rehab.go.jpまでご連絡いただければ幸いです。