〔更生訓練所情報〕
就労移行支援の現状と課題
更生訓練所職能部・指導部


 更生訓練所では、平成18年10月から、埼玉県より障害者支援施設としての指定を受け、新たに就労移行支援をスタートさせ、職能部、指導部職員が一丸となって利用者の就労支援を展開してきました。その内容の一部は、これまでの国リハニュースで紹介してきたところです(職業準備プログラム:平成18年11月号、職場体験訓練の紹介:平成18年12月号、就職面接会参加までの支援:平成19年7月号)。今回は就労移行支援事業の開始から1年以上経過したこともあり、新事業開始から平成19年12月までの就労移行支援の現状と課題を整理しましたので以下の通り報告します。


1.就労移行支援事業利用者の現状

 平成18年10月以降に全国の市区町村より就労移行支援の支給決定を受け、利用を開始した方は146名で、利用者の状況を整理すると次のようになる。

 先ず性別は男性が124名、女性が22名。利用契約時の平均年齢は29.7歳であった(最高年齢:58歳、最低年齢:18歳)。特別支援学校等の新卒利用者も多く、約26%が20歳以下の就業経験のない利用者であった。出身地を地域別にみると北海道・東北17名、関東92名、中部21名、関西2名、中国・四国4名、九州・沖縄が10名となっている。その内、地元の埼玉県が39名で隣接する東京都の26名を加えると、全体の44.5%を占めている。

 障害種別では、肢体不自由が108名と最も多く、次いで聴覚障害24名、視覚障害12名、内部障害の順となっている。障害種別は、主な障害から整理しており、重複して障害を持つ利用者、身体障害者手帳以外に療育手帳や精神保健福祉手帳を所持している利用者もいる。障害程度は身体障害者手帳1、2級の所持者が110名で全体の75.3%を占めている。

 また、更生訓練所の自立訓練から就労移行支援へ移行した利用者が10名。自立訓練在籍時に就労移行支援の訓練を体験をしていただくなどスムースな移行を心がけている。

 次に利用契約後の支援の経過の状況である。当センターの就労移行支援事業のみのサービスを利用の方が58名、一定期間就労移行支援事業で訓練を実施し、国立職業リハビリテーションセンター(以下職リハという)の職業評価(再評価含む)を受け、職リハの職業訓練に移行した方が30名、利用契約後直近の職リハ評価後に、職リハの職業訓練に移行した方が58名となっている。


2.就労移行支援事業修了者の現状

 平成18年10月から平成19年12月までの間に、就労移行支援事業の契約を終了した方は69名(職リハへ移行した方は除く)で、内訳は次のとおりである。

 就労が23名、職場復帰4名、就労継続支援事業利用5名(A型2名、B型3名)、職リハ以外の職業能力開発校入校2名、就職活動継続27名、その他(自己退所等を含む)8名である。就労者の職種を見てみると、事務・事務補助と軽作業が約半々であった。

 ちなみに平成17年度の新規就労(平成17年度事業報告より)が5名であったことを考えると新規就労者の数が大幅に増加している。これは、訓練体制を整備すると共に、生活支援専門職が就労支援員としての意識を強くもち、職能指導室、職業指導員、関係機関と連携し積極的に職場開拓、就職活動を行ってきた成果と言える。

 しかしながら、就労したものの離職した者が4名おり、離職の理由は職場内の人間関係、業務縮小、試用期間中の職場の判断等であった。そのうち1名は、離職後にフォローアップとしての就労支援を行った結果、再就職している。

 また、就職活動継続で修了した利用者27名について、就職活動を行ったが就労に至らなかった要因を、実際の事例から探ると、例えば、地元就職か関東地区での就職かといった就職活動を行う地域がなかなか決まらなかった事例、就職活動の具体的なイメージづくりに時間を要した事例、実習を数回実施したが、就労意欲を高めることができなかった事例などである。 


3.就労移行支援の課題と今後の取り組みについて

 新規就労者の数だけを見ると一定の成果があったと評価できる点はあるが、課題が山積しているのが現状であり、アセスメントの結果やサービス提供期間が適切だったのか、また、モニタリングをふまえたサービス内容の変更や支援計画の進行管理はできていたのかといったサービス提供側の課題、問題点も多いと考えている。

 現在、職能訓練課、指導課内にあらためてワーキンググループを作り、支援の足場を強固にするために、(1)個別支援計画(2)アセスメント(3)職場体験訓練について、課題改善に向けた検討を行っている。その他にも職場定着支援、ハローワークとの更なる連携を含む地域の就労支援協議会等への参加等の課題についても引き続き取り組み、就労移行支援の充実に努めていきたいと考えている。