〔学院情報〕
学院卒業生レポート
〜視覚障害学科〜
学院視覚障害学科


平成17年3月に当学院視覚障害学科を卒業し、高知県にある「財団法人高知県身体障害者連合会」に勤務されている金平景介さんに、学院時代の思い出や現在の勤務について、お話を伺いましたのでご紹介します。


Q.現在勤務されている「財団法人高知県身体障害者連合会」について教えてください。

A.高知県身体障害者連合会では、高知県の社会参加促進事業の中の視覚障害者生活訓練事業の委託をうけており、高知市を除く36の市町村を対象に生活訓練(歩行、調理、日常生活、点字、パソコン等)と生活相談を行っています。視覚障害当事者への業務の他には、視覚障害者機器展示室ルミエールサロンの見学対応や視覚障害についての講義、ガイドヘルパー講習、バリアフリー関係の道路実験などを行っています。


Q.視覚障害学科に入学された動機は何ですか。

A.大学を卒業し、自分の就職について考えるようになったときに、一般の会社に勤める事にどうしても納得がいかないでいました。当時(H15年)テレビや映画などで視覚障害者や盲導犬について取り扱っているものが多く、興味をいだくようになりました。今思えば、そのような番組に興味をもったのは、私の父が視覚障害ということが影響していたのかもしれません。そんな中、視覚障害や盲導犬についての書籍を読みあさるようになり、「盲導犬・聴導犬・介助犬訓練士まるごとガイド」という本の小さな注釈の欄に国リハ学院の記事を見つけました。そこで初めて、視覚障害の方への歩行訓練や生活訓練を専門に扱う視覚障害者生活訓練指導員(歩行訓練士)について知りました。入学試験を受けたときは、実は、盲導犬訓練施設の就職試験も受けていました。でも、犬のことより先に、視覚障害について、ヒトについて、まず勉強しなければいけないという思いがあり、視覚障害学科に入学をきめました。大学では福祉分野とは全く関係のない学部にいたために、本当に何も知らなかったというのも理由の一つにあげられます。今思えば「盲導犬・聴導犬・介助犬訓練士まるごとガイド」は、人生を変えた本だった思います。


Q.2年間を振り返ってみてどうでしたか。印象に残っている授業について教えてください。

A.2年間はあっという間でした。大学とは違って、モチベーションも高かったというのもあると思いますが、先生や同級生にも恵まれ大変充実した2年間でとっても勉強になりました。(でも、もう一回やれといわれたら断りますが…)

私にとって学院の授業は、初めてづくしの物ばかりでした。もちろん専門的な視覚障害の授業もそうですが、各心理学や福祉についての一般教養的なものについても、私にとって新しい分野だったので今でもとても役にたっています。授業ではこんな事知っているだろうという前提で授業は進んだりすることもありましたが、私にとっては知らないことばかりで、はじめのうちは困惑した部分も正直ありましたが、先生に質問をすると、私が理解するまで丁寧に説明してくださったことに大変感謝しています。


Q.印象に残っている科目について

A.実習の授業はとても印象に残っています。歩行訓練や調理・日常生活訓練の実習では、同級生同士ペアになり、視覚障害役と指導員役に別れて実習したことは大変印象に残っています。歩行訓練中に新宿駅で迷ったり、調理実習のときには、塩と砂糖を間違えたり、色々あります。学院での座学や訓練実習だと、実際に視覚障害の方に会う機会があまり無いのですが、臨床実習で一年次1ヶ月、2年次3ヶ月の外部施設での臨床実習は大変勉強になりました。2年次の臨床実習のときは、国立塩原視力障害センターにお世話になりました。そこでは、実際に利用者の方への訓練をさせてもらうのですが、とてもよい経験になったと思っています。つい先日のことですが、実習中に私が始めてパソコン訓練を受け持った方からパソコンを使って書いたお手紙をいただきました。約4年も前に関わった方ですが、覚えていてくださり、手紙をいただきました。私が関わった頃は、文字入力どころか、パソコンも触ったこともない状態でしたが、あれからパソコンの練習を続けられて、初めてパソコンを教えてもらった金平にどうしても手紙を書きたかったという旨が書かれていて、とても感激しました。


Q.今の職場を選んだ理由は何ですか。

A.学院に入学した当初は、盲導犬の訓練士になりたいという気持ちがまだ残っていたのですが、学院で勉強するうちに、より多くの視覚障害の方と関わりたいという気持ちが強くなっていきました。私は就職する地域にこだわりが無かったので日本全国どこでもよかったです。そんな折に、高知での採用枠があることを伺いました。高知で視覚障害リハをしている、高知女子大学の吉野由美子先生や今の職場の先輩である別府あかねさんにお話を伺い、高知に行くことを決めました。


Q.現在はどのような内容の仕事をしていますか。

A.歩行訓練や調理訓練もありますが、多いのがダントツで音声ソフトを利用したパソコン訓練です。視覚障害者にとって情報を獲得する道具としてパソコンはとても有効なものだと思います。特に高知のような地方で、日本全国、世界中、同じ情報を取得できるこの道具はとても役に立つと思います。「パソコンを立ち上げてください」というと本当にパソコンを持ち上げてしまうような所から始める方が多いので、なるべくわかりやすい表現をつかって、本当に理解しているかを評価しながら訓練しています。


Q.仕事をしていく上で、大変なことはどんなことですか。

A.なんといっても移動です。高知県下相談があればどこでも訪問するので、往復300キロ以上運転したりすることがあります。片道3時間かけて行って、2時間訓練をしてまた3時間かけて戻ってくるといった感じです。ちなみに運転免許は高知の就職が決まってからどうしても必要ということを言われて学院の2年生の冬に所沢で取得しました。


Q.職場は楽しいですか。

A.楽しいです。事務所は高知県立盲学校内の視覚障害者向け機器展示室の隣に小さな事務室をお借りして、先輩の別府さんと二人きりの事務所です。ほとんどが外にでる事が多いので事務所に一日いることはたまにしかありません。盲学校内ということで、児童・生徒さんが遊びに来たり、運動会や学習発表会など学校行事に声を掛けてくれるので、とても楽しいです。高知に来てまた学校に通うとは思っていませんでした(笑)


Q.障害のある方に接するとき、一番気をつけていることはなんですか。

A.相談を受けるときは、時間の許す限り、傾聴するということを大事にしています。座席の位置や言葉使いなど具体例を挙げればきりがありませんが、一番は、やはり相談者の話をじっくりと聞くということを大事にしています。一人の相談時間で半日以上掛かることも少なくありません。


Q.これから学院視覚障害学科に入学されようとしている方々にメッセージをお願いします。

A.視覚障害リハビリテーションは、まだまだ世間には浸透されていないかもしれません。学院を卒業して視覚障害専門職についている人数もまだまだ少ない状況です。日本には約30万人の視覚障害の手帳をもった方がいらっしゃいます。障害の認定を受けていないロービジョン者(弱視者)は100万人以上いるといわれています。さらに近年、高齢化、障害の重複化、重度化が進み、この職種を必要としている方がたくさんいます。視覚障害学科では、学院教官を始め各方面の専門講師が、視覚障害の専門知識はもちろん、その他障害の知識など様々な事を勉強することができます。ぜひ、視覚障害学科に入学して私と一緒に視覚障害リハビリテーションの分野で働きましょう。