〔病院情報〕
病院紹介シリーズ⑧ 歯科
 


 歯科は1980年(昭和55年)に非常勤歯科医師による週2日の診療日体制でスタートしました。現在では常勤歯科医師1名、非常勤歯科医師1名(毎週水曜日)、常勤歯科衛生士1名、非常勤歯科衛生士1名で診療に対応しています。
 診療は当センター病院に入院中の方、更生訓練所をご利用の方、障害をお持ちでセンター外からの外来患者さまを中心に行っています。平成19年の延べ患者数は2013人でした。内訳は入院の方47%、更生訓練所ご利用の方9%、センター外からの方44%でした。またセンター外からの方の約32%は所沢市民でした。主訴は虫歯37%、歯周病30%、歯の喪失24%でした。基礎疾患別にみると脳血管障害が48%、脊髄損傷が24%、外傷性脳損傷が7%でした。
 歯科診療室は病院新館西側奥、精神科の向かい側に位置しています。平成4年に病院本館2階から現在の場所に移転しました。診療台は車椅子専用診療台2台、一般歯科診療台2台の計4台あり、外の景色が見えるよう窓に向かって配備されています。車椅子専用歯科診療台は頚髄損傷等、トランスファーの困難な患者さまに使用しています(写真)。この診療台は車椅子に乗車した状態(後方に約30度傾斜可能)で診療が受けられるので好評です。さらにストレッチャーやリッターに乗車した状態でも診療が可能です。この診療台のため遠方から来られる方も多いようです。患者さまの約45%がこの診療台を利用されています。
 またパノラマエックス線装置も車椅子に乗車した状態で撮影が可能です。レントゲンはデジタル化され、モニターを利用して症状や治療の説明を行うことが出来ます。
 診療の内容は障害をお持ちの方に、その障害に充分配慮しながら通常の歯科医療すなわち、保存治療(虫歯による欠損部の充填や修復、根管の治療、歯周病の治療)、抜歯、補綴(入れ歯やブリッジ)、口腔衛生を行っています。
 現在、口腔の問題は全身に与える影響は少なくないと言われています。たとえば歯周病は糖尿病、心疾患、誤嚥性肺炎等との関連性が多数報告されています。歯周病は成人の8割以上の方が罹患している病気です。主原因は口腔内の汚れ、それを栄養源にするバイオフィルム(口腔内細菌のかたまり)です。ですから口腔内を清潔に保つことが最重要と考え、診療にあたっています。特に高齢者や嚥下障害の方の口腔衛生は重要です。口腔衛生指導、口腔ケア、スケーリング、器械的歯面清掃に多くの時間を費やしています。
 一方歯の噛み合わせの良し悪しが身体の運動能力や脳の活動性に影響するとの報告も多数あります。急性期に危険性および口から食事をしない等の理由で義歯を外され、噛み合わせが無い方も多いようです。このような方に、外されていた義歯の修理調整や新義歯作製を可能な限り行い、噛み合わせの回復を図っています。
 その他、他科関連の口腔内器具としてパラタルリフト(軟口蓋麻痺)、マウスピース(睡眠時無呼吸症候群)やマウススティック(頚髄損傷)等の作製も行っています。
 最後に口や歯は単に食べるためだけの道具ではありません。健康維持やQOLの観点から特に大切にしなければならないと考えています。そのため今後スタッフ一同、生活環境や全身との係わりを見据えながら診療に務めていきたいと考えています。

(写真1)車椅子利用者の歯科治療