〔病院情報〕
職員研修会「豊かな感性と接遇」
病院患者サービス向上委員会

 国立リハ病院では、各委員会主催の職員研修会を年間を通じて計画的に実施しています。
 患者サービス向上委員会でも、年3回の研修会を予定しています。
 今般、第1回研修会を去る平成20年5月14日(水)17時30分より、アカデミーPALの野崎龍(しげみ)氏を講師に迎え、患者サービス向上の一環として、職員の資質向上を図るための接遇研修が行なわれました。
 当日は『接遇』といった研修の定番の内容に関わらず、59名の職員が参加され、経験を積んでなお、更に研鑽しようという職員の関心の高さが伺われました。
 研修のテーマである『豊かな感性』を軸にした今回の研修により、あらためて、接遇における自己啓発及び内面観察の必要性を実感いたしました。
 研修の中で、いくつかのキーワードが挙げられていたので、ここでご紹介いたします。
 一つ目は、接遇の柱、つまり行動の背景にある心の部分で、最初の頭文字をとり“あみたこ電表”とすると覚えやすく、初めて聞く方も興味をもたれることでしょう。
 『あ』とは挨拶のことで、まずはお互いに目が合ったら、声を出して挨拶をしましょうということです。コミュニケーションのきっかけとして、とても大事なことです。
 『み』とは、身だしなみのことです。病院で言えば、清潔な白衣を身に着けることで、相手に安心感や、信頼できるといった印象を与えることも大切です。
 『た』とは態度のことです。相手に対して、知らず知らずに傲慢と感じる態度(腕組み、腰に手を当てる)をとってしまうことがあります。作為又は無作為に関わらず、注意しなければなりません。
 『こ』とは言葉遣いのことです。TPOにあわせた言葉遣いが大事です。
親しい間柄であると、つい場をわきまえずぞんざいな言葉遣いをしてしまいがちです。その場にふさわしい言葉遣いや会話をする様に心掛けたいものです。
 『電』とは電話の応対のことです。お互いに顔が見えないため、声から受ける印象が好ましいか、嫌いかは実際より増幅して感じるものです。
 相互の立場から、相手が伝えたいことをうまく聞きだし、的確な対応を心掛けること。相手に自分が伝えなければならないことを、押し付けるのではなく、受け入れやすいように伝えることも大事です。
 普段の声より少々高めに出すことで、相手に好印象を与えるようです。
 さらに、電話の相手を待たせない(呼び出し音は3回以内で出る)ということは電話対応の基本と言えるでしょう。但し3回以上鳴らしてしまったら、「お待たせいたしました」と必ずお詫びの言葉を掛けましょう。
 『表』とは表情のことです。どんなに丁寧な対応や言葉遣いでも、表情が付いていかなければ、相手にとっては慇懃無礼な印象しか残らないものです。相手が不快と感じないよう、相手の機微を推し量ることが肝要です。
 二つ目は、“接遇の心とは惻隠(そくいん)の情”(困っていることを見聞きして、同情すること。計算の無い心)です。これは、「孟子、公孫丑・上」から発して、「無惻隠之心非人也」と書かれているそうです。
孟子の分析を引用すると、心の作用には「四端」といって、4つの要因があるとしています。
 @惻隠の心=『仁』(人に対する同情の心が仁につながる)
 A羞悪の心=『義』(自分で恥ずかしいと思うことが、義につながる)
 B辞譲の心=『禮』(遠慮する心の作用は礼につながる)
 C是非の心=『智』(良否の判断をする作用は智につながる)
 つまり、自然の心の延長線上に得のすべてがあり、決して無理に押しつけられたり、後から教育されたものではないと主張しているとのことです。
 三つ目は、“和顔愛語”(穏やかな顔で思いやりをもった言葉遣い)です。
 四つ目は、“対話の原則”です。
 対話とは、
  ・双方通行であって、一方通行であってはならない。
  ・話を2倍聞くこと。相手の話を聞くことで多くの情報収集ができ、シグナルを受けとることができる。
  ・三つの肯定語(マジックフレーズ)を会話に組み込むことで、否定的な内容がやんわりとしたものになる。“ごめんなさい”“すみません”“ありがとう”です。
 五つ目は、“ほうれんそう”です。
  ・『ほう』とは報告のことです。仕事の結果報告をすることで、仕事の完了と言えます。
  ・『れん』とは連絡のことです。相手の仕事を楽にするためにはどうするべきかと考えるおもいやりの心を持つことは、組織に活力をもたらすものとなります。即座に、こまめに、全ての箇所に伝えるということが原則です。
  ・『そう』とは相談のことです。自分ひとりで抱え込まず、積極的に相談することです。相談するということは、相手に問題の本質を理解してもらうため、自分の中で整理して伝えなければなりません。再考することで、解決のための新たな局面が見えることも多々あるものです。
 最後に六つ目として、“自己啓発の四源泉”というものです。
  ・高い志を持つ(夢をもつ)こと。
  ・プラス思考で考えること。
  ・信念をもつこと。(自分の志を信じる。障害に突き当たったとき、あきらめないこと)
  ・豊かな感性(感謝の心、感動するなどの感性を磨く)を持つこと。
 以上、既に聞き覚えのある言葉もあるとは思いますが、職員一人ひとりが、再度お気に止めていただき、これからの接遇に役立てていただければ、国立リハセンターがより親しみやすく、人に優しいと言われるセンターになることを期待しています。



(写真)アカデミーPALの野崎龍(しげみ)氏