〔研究所情報〕
ISO TC173 SC1 WG+
マットレス会議開催報告
研究所福祉機器開発部 廣瀬 秀行


 2008年5月24日(土)から30日(金)までの土日を含む7日間、研究所の4つの部屋を使い、ISO(国際標準化機構)TC173(福祉用具)SC1(車いす)WG(ワーキンググループ)会議と、今後TC173に加わる予定の褥瘡を予防するためのマットレスの予備会議が開催されました。この会議は年2回各地で開催されております。私はWG11に参加しているのですが、いつか日本での開催ができればと考えていた矢先、今回皆様のご協力により開催することができました。


Working group
対象
日程
参加人数
(外国の参加者数)
WG1
車いす
24日午後〜26日午前
16(外6)
WG8
階段昇降機
29日〜30日
4(外2)
WG10
電動車いす
27日〜28日
10(外7)
WG11
車いすシーティング
29日〜30日
16(外10)
Mattress
褥瘡(じょくそう)防止用
マットレス
27日〜28日
14(外9)



 委員としての外国からの参加は25名、7カ国(米国、英国、スウエーデン、デンマーク、オーストリア、ドイツ、オーストラリア、そして問題のニュージーランド)です。
 WGごとの審議された対象は表をご覧下さい。
 国際規格の作り方は、まずISOに提案し、そして各国にその規格に関する専門家(エキスパート)を募り、その方々が集まって試験方法から文章となる規格へと作り上げ、その間にWD(作業原案)または、CD(委員会原案)、DIS(国際規格案)、FDIS(最終国際規格案)と各国での投票および案に対する意見や質問を受けて、そして原案を改良する会議になります。その為、今回の会議の出席者も文献で知られた方と一緒になって議論し、作り上げていく過程は非常に有意義な経験です。
 いろいろと会議前に準備しましたが、依頼として会議終了後、富士山に登りたいというWG11の議長からの問い合わせで、情報を用意し送りました。
 さて、参加者は本川越のホテルに宿泊をお願いしました。一つは会議の合間に小江戸川越を楽しんでいただけること、もう一つは2名車いすを使用する委員がおり、成田空港と川越が成田エキスプレスと埼京線で、それも新宿と池袋駅で同一のホームでの乗り換えで来られることで選択しました。二人の方とも、川越までのアクセスは全く問題なくホテルに入ることが出来、一安心しました。また、会議の後の夕食で川越を楽しんでいました。次の日、「すっぱいチェリーは何だ」で答えは「梅干」でした。
 会議の運営は毎日の「Coffee break」、Social と呼んでいる国リハおよび研究所見学と懇親会、そして「Tea Ceremony」を行ないました。会議は朝9時に始まり、17時を越えます。その中で息抜きは、Coffee break で、会話に華を咲かせることが出来ました。また、6日目のCoffee breakはTea Ceremony として茶道を楽しんでいただきました。場所はモデルハウスで行ったのですが、30分待ち、3回入れ替えとなるほど、人気がありました(写真1)。
 会議の進行は、第1日目は新所沢駅を外国の方が反対に降りて、ぎりぎり到着された以外、3日まで平穏に過ぎました。3日目の午後は研究所および国リハ見学、階段昇降機の会社のサンワでの見学、そして懇親会です。会議が延び、秒刻みになってしまいました。
 ここを乗り切ればと思った4日目の行方不明事件、そして5日目の病院外来へ行くことになった大事件、6日目の検査結果事件があっても、何とか飛行機にのせたなど、信じられないことが続きました。その節は病院のスタッフの方には御迷惑をお掛けしました。無事、帰国されてほっと一息というところです。
 さて、私が参加できた会議内容のトピックスを話します。
 月曜日、WG1で車いすの強度に関する原案をチェックしていくとき、私はこれを日本語訳するとき、どのように訳すかを念頭に文章を見て行きます。今回は車いすが壊れるという言葉のなかに「crash」という言葉がありました。「ぶつかって機械が壊れた」というイメージかと聞いたところ、メンバーの方が説明していただき、電動車いすの制御系のコードが抜けたり、切れたりするというイメージがあることがわかりました。
 水曜日にマットレスに負荷させるダミーの話になりました。米国から提案されたのは、ふくよかな臀部形状でした。実は米国では体重150kgの方が褥瘡になります。日本では痩せた高齢者が褥瘡になりやすいという結果が出ています。特に仙骨部は骨突出というとんがったお尻になります。そこから議論になりました。折衷案がでて、次回までに確認をしようということになりました。
 6日目のグループWG11は車いすの「いす」の部分、座位姿勢、座位保持装置やクッションの性能について規格を決めていきます(写真2)。現在、その中で車いすクッションの温度湿度特性の性能を決定するための試験方法を開発していますが、米国やヨーロッパが中心の会議ですと、湿度が低い気候が主となり、蒸し暑さを感じていただけません。今回、外国の委員の方に、少しその感覚を味わっていただくことができ、日本の状況にあった規格が作れるのではと思っています。
 最終日は午前中に、2時間デモンストレーションをしました。これは日本ではISOに準拠した座位姿勢を計測するシステムが世界に先駆け完成しつつあるので、計測器会社と埼玉県産業技術総合センターにデモをお願いしました。17時にはISO会議はすべて終了しました。
 最後に、センターの皆様のご協力でISO会議を開催することが出来、感謝いたします。
 最後の最後に、富士登山は無事頂上まで登ったとの絵葉書が来ました。

(写真1)立ち膝で、お茶をいただいている中腰の男性陣。「Tea ceremony」
写真1 立ち膝で、お茶をいただいている中腰の男性陣。
(Tea ceremony)
(写真2) WG11会議風景
写真2 WG11会議風景。