〔卒業生訪問シリーズ〕

視覚障害学科卒業生の就職先を訪問して

管理部総務課

 

 

 当センター学院視覚障害学科を卒業し、現在社会福祉法人光友会藤沢障害者生活支援センターにお勤めの鎌田実さん(平成12年度卒業)、見原正紀さん(平成15年度卒業)のお二人にインタビューしましたので、ご紹介いたします。
 社会福祉法人光友会は、昭和52年に障害者の地域作業所として出発し、現在では、重度障害者の施設入所支援や生活介護、在宅障害者のための短期入所、就労移行(継続)支援、身体障害者福祉ホーム、グループホーム・ケアホームの運営など様々な事業を行なっています。お二人が勤務する「藤沢障害者生活支援センター」は、藤沢市の指定相談事業所として相談業務を行うほか、視覚障害者のための生活訓練などを行っています。

 

(写真1)藤沢障害者生活支援センター

 

 

 

T 視覚障害学科に入学したきっかけ
−鎌田さんも見原さんも、他の仕事を経験されたあと学院視覚障害学科に入学されたようですね。視覚障害学科に入学しようと思ったきっかけは何でしょうか?
(鎌田)  学院に入る以前は医療器具の営業の仕事をしていました。ある日営業で病院回りをしている時、病院で治療できなくなってしまう人達は、この後いったいどうなってしまうのであろうと漠然と思うことがありました。その様な気持ちで働いている中で、自分の祖母が白内障であるということを思い出し、「眼が見えない、見づらいということはいったいどういうことであろうか?どれだけ大変なことであろうか?」ということを考えるようになりました。営業という仕事が嫌いではありませんでしたが、物足りなさを感じていた時期でもあり、人に対して直接的に自分の知識や技術を活用して仕事ができないものかと考えていた頃でもありましたので思い切って会社を辞め学院を受験することにしました。
(見原)  入学する前は社会福祉協議会に勤めていました。ボランティアセンターに配属されていた際、視覚障害のある方々から外出時の誘導ボランティアの派遣相談をたくさん受けました。その当時、なかなか外出できず家に閉じこもりがちになってしまっている方がたくさんいらっしゃることを知りました。ボランティアを紹介するコーディネーターとしてではなく、専門技術や知識を身につけて、直接相手の方のお役に立てないかと考えていた時、職場に学院の視覚障害学科から、卒業生を採用してくれないかという書類が送られてきました。資料に目を通して「これだー!」と思いました。卒業生を採用するのではなく、自分が入学してしまいました!(笑)
(写真2)右が鎌田さん、左が見原さん (右が鎌田さん、左が見原さん)
U 学院での2年間をふりかえって
−学院での2年間を振り返ってみて、一番印象に残っていることは何ですか。
(鎌田)  学院時代に歩行訓練などの演習を行なう際に、二人一組になって、指導者役と利用者役で演習を行ないました。当時の私たちは、当然知識も経験も未熟ですから何もない状態で指導者としてパートナーに相対することはできません。そこで「今回の演習では何を目的にどのようなことを行なっていくのか」を事前に指導案としてまとめ、教官に提出し、確認・訂正・修正をしてもらっていました。その指導案を書き上げるために、提出期限の前になると連日のように夜中の2〜3時まで学院の寮の自習室で「あーでもない、こーでもない」と仲間と悩みながら、指導案を書いていました。それが一番印象に残っています。
(見原)  やっぱり歩行訓練の演習の授業ですね。最終的に、所沢にある学院と東京都庁の間をアイマスクをつけて移動しました。到着した時のあの嬉しさは言葉では表現できません。最初から上手に歩くことはできず、日々の授業(訓練)の積み重ね、努力の積み重ねによる成果でした。また、塩原視力障害センターと福岡視力障害センターで実習をさせて頂きましたが、そこで出会った方々と過ごした時間は、自分の人生の中でも、とても貴重な時間であり、今の自分を作ってくれたと思っています。
−視覚障害学科に入学して良かったと思うことはどのようなことでしょうか。
(見原) 自分がアイマスクをつけ、訓練生として歩行訓練や点字訓練の授業を受けてみると、上手く歩いたり、触読して点字を理解することがなかなかできませんでした。できないこと・わからないことへの不安や辛さ、悔しさ、恥ずかしさなどを味わいました。そうした時に、指導員役のクラスメイトが、忍耐強く励まし、一緒に原因を考えて適切な対応を諭してくれる姿勢は安心感がありとても信頼できるものでした。できないことばかりに目を向けるのではなく、例え小さなことであっても、努力してできるようになったことに対して、しっかりと言葉に出して評価することも大切だと思いました。こうした経験・気づきができたことは、仕事の面だけでなく、日常生活の中で様々な人と関わる上で大切な視点として役立っていると思います。
   
V 現在の仕事について
−鎌田さんは、現在はどのような仕事に携わっていますか。
(鎌田)  元々は視覚障害の生活訓練担当として在宅障害者に関わっていましたが、現在は視覚障害の生活訓練は見原に任せ、基本的には障害児者に関する(身体・知的・精神)相談支援業務を行なっています。その他に藤沢市の自立支援協議会の事務局として会の運営と障害程度区分認定調査員として調査を行っています。
−どのような相談が多いのですか。
(鎌田)  具体的には「障害を抱えてこれからの生活をどのように送ればよいのか」という相談に始まり、「どのような福祉サービスがあるのか」、「福祉サービスをどのように使っていけばよいのか」という相談が多いです。その他「複数サービスを利用している場合のサービスの調整」、「補装具・日常生活用具、便利グッズなどの情報提供」、「申請手続き等の補助(援助)」も多いですね。私たちの仕事は、利用者への情報提供を行なうと共にコーディネーターとして「利用者と行政」や「利用者とサービス提供事業者」の間に入って様々なことを調整するという役割を担っているのです。
−仕事を行っていく上で、大変なことはどのようなことですか。
(鎌田)  一人の利用者が地域で生活をしていくためには、そこに関わる人やサービスが時系列的に途切れてはいけません。また利用者が地域の生活をより生活しやすくしていくためには人やサービスをフォーマルにもインフォーマルにも重層的にもしくは多角的に準備していくことが必要になります。その際、「一人の利用者の生活をどのようにしていくのか」ということについて、利用者に関わる人々が共通認識を持つ必要があります。そのために利用者を中心に縦にも横にもネットワークを広げていく必要があります。
 相談を受ける人間として3障害の知識を持ち合わせること(まだ十分ではないと思っています)と同時に、利用者に対してライフステージに応じた対応をしていくためにネットワークを広げることに日々苦労をしています。
(写真3)同上
−見原さんは、視覚障害者の生活訓練を担当しているとお聞きしましたが?
(見原)  はい、視覚障害者の生活訓練が中心ですが、それだけでなく、ガイドヘルパー養成研修の企画開催や、障害者地域自立支援協議会の事務局、介護支援専門員(介護保険)、障害程度区分調査員としての仕事など、視覚障害関連業務に限らず複数の仕事を兼任して行っています。
  担当業務が多種にわたるため生活訓練のみに時間を割くことができず、ニーズに対して十分に対応できておらず、申し訳なく思っております。体が1つでは足りませんね(笑)。新たな訓練希望者を待たせることなく訓練を開始するためには、現在訓練中の方々の訓練時間や訓練頻度を変更しなければならないこともあり、いかに効率よく仕事をおこなうか、タイムスケジュールの管理が自分の大きな課題の1つになっています。
−多忙な毎日を送られているようですが、仕事を行っていく中でやりがいを感じるのはどのようなときですか。
(見原)  生活訓練をおこなう日、訪問する日を楽しみに待ってくださっている方がいます。とても嬉しく思うと同時に責任も強く感じます。自分の関わり方や教え方によって、相手の方のこれからの人生に、良くも悪くも影響を及ぼしてしまいます。必死に訓練に取り組まれる姿を間近で見ていると、自分の胸に熱くこみ上げてくるものがあります。とてもやりがいを感じる時ですね。
−お二人の仕事での今後の目標をお聞かせいただけますか。
(鎌田)  かつて国リハで勉強している頃と仕事を始めた頃で別々の人に2度にわたり「一人の支援者として10人の利用者に関わったら2?3人救えればよいと思え。お前の力はそんなもんだ。」と言われたことがあります。私も確かにそうだと思えるところもありますが、それでも今は2?3人でも10年後には5人に増やせたらといつも考えています。また今勤めている藤沢という土地で今よりもさらに有効に相談支援が動くようなシステム作りをしていきたいと考えています。
(見原)  目の前のことに精一杯で、まだまだ周りや先々のことがよく見えていないと思います。職場の仲間のサポートのおかげで、日々の仕事をこなせている感じです。もっと経験を積んでタフになり、1日も早く自分も仲間のサポーターになれるように努力したいと思います。
   
W これから視覚障害学科に入学しようとしている方々そして後輩へのメッセージ
−最後にこれから視覚障害学科に入学しようとしている方々や後輩にメッセージをお願いします。
(鎌田)  まず、「何のために視覚障害学科に入学したいのか」をしっかりと考えてください。そして入学後は、何を学び、その学んだことを活用して将来自分がどのように仕事に繋げていくのかをイメージしながら勉強してください。勉強として漠然と言われたことをやっているだけでは、あまり意味がないと私は思います。将来の「〜のために今やっているんだ!」という気持ちを持ち続け、辞めたくなりそうな時には「何のためにRBにきたのか」を思い出してください。目的をはっきりさせると結構面白いことが多いと思いますよ。
(見原)  視覚障害関連の仕事に限らず、福祉の仕事には、素晴らしい出会いやふれあいがたくさんあって、うまく表現できませんが、他の職種以上に、自分の生き方・人生が磨かれる仕事ではないかと感じています。とても意義のある仕事だと思います。仲間が広がっていくことを期待しています!

 


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