〔更生訓練所情報〕
自立訓練(機能・生活)における野外訓練について
更生訓練所指導部生活訓練課  川嶋 陽平


 今年の自立訓練における野外訓練は、7月31日(木)に埼玉県日高市にある「サイボクハム(埼玉種畜牧場)」で行われました。参加者は利用者25名、職員15名、実習生2名の計42名で、楽しいひとときを過ごしてきました。
 野外訓練は、自立訓練を利用している視覚に障害がある方、高次脳機能障害のある方が、行事を通して、自主性と協調性をもちながら、利用者間の交流と日頃の訓練成果を発揮することを目的にして実施しています。そのため、企画から実施まで、利用者を中心とした実行委員会によって主体的に進められ、障害や年齢等さまざまな利用者が「楽しむ」ためには、何が必要か、そのためにお互いに協力できることは何か等、意見を出し合いながら、内容を検討していきました。計7回の話し合いの結果、サイボクハム(埼玉種畜牧場)で、美味しい料理を食べ、創作活動として実施されている陶芸教室に参加することになりました。また、利用者7名程度でグループを編成し、その中で一人ひとりが役割を持つことになり、グループを取りまとめる班長や、バスの中でのレクリエーションを行う「バスレク係」、一日の行動予定等のスケジュールを作成する「しおり係」、当日の様子を撮影・記録する「思い出づくり係」等がそれぞれ決まりました。話し合いの中では、率先して資料を点字で作成してくれる視覚障害のある方や、次回の話し合いに備え決まった内容等を忘れないよう手帳にメモをとる高次脳機能障害のある方等、日頃の訓練成果を発揮すると共に訓練の新たな課題として取り組む様子が伺えました。
 晴天に恵まれた当日、最初の出番はバスの中でのレクリエーションを担当するバスレク係です。「古今東西ゲーム」から始まり、最後は、指名された人が伴奏なしで得意な歌を歌うという難易度の高いゲームまで飛び出すなど、大変盛り上がりました。ゲームの中で、すぐに回答できない方や言葉の出にくい方に対して、「ゆっくりでいいですよ。」「少し待ちましょう。」という声が自然にあがるなど、一体感のある雰囲気が醸し出されていたのが印象的でした。


 

(写真1)皆で盛り上げ (写真2)伴奏なしで得意な歌を熱唱

バスレクの様子


 サイボクハムに到着後、午前中は陶芸教室に参加しました。粘土をこねながら何を作ろうか最後まで悩んでいた方、一度形を作っても納得せず崩してまた一からやり直すことを繰り返していた方、与えられたチャンスは一度のみというように集中して一回で作品を作る方等様々で、皿・カップ・どんぶり等が作り上げられました。作品が手元に届くまで約2ヶ月かかりますが、「焼き上がりが楽しみだ。作品は高く売れるかな。」という声や「10月にあるリハセンター並木祭に出展しよう。」等のご意見が聞かれました。

 

(写真3)何を作ろうか悩みながらそれぞれの思いを形に (写真4)あっ、上手なお皿が出来てきています。満足の出来か…

 

 昼食は、レストランサイボクでのスペシャルランチをいただきました。ほとんどの参加者が残さず食べられ、「やはり、本場のお肉はおいしいね。」という声が聞かれました。腹ごしらえした後は、グループ毎に場内を散策です。お土産の買い物をするグループ、売店の休憩所でカキ氷を食べゆっくりされるグループと、それぞれのペースで自由に行動しました。

 

(写真5)みんなでおいしいお肉を頬張る (写真6)思い出の記念に一枚

 

 今回の野外訓練を終えた後の利用者の皆様の満面の笑み、役割を無事終え安堵した表情等から、普段の訓練にない様々な経験をされたことが伝わってきました。
 今後も、利用者の皆様が主体的に、そしてお互いに協力し合いながら企画・実施していける野外訓練となるよう、検討を重ねていきたいと思います。
 最後に、野外訓練実施にあたりご協力ご支援いただきましたサイボクハムの皆様、他部署の方々に感謝するとともに、御礼申し上げます。