〔病院情報〕
日大芸術学部によるボランティア公演
第二機能回復訓練部(病院・ボランティアに関する小委員会) 白坂康俊



 日本大学芸術学部で芸術療法を学ぶ学生さん、OBの方々によるボランティア公演が、平成20年7月5日、当センター講堂で開催されました。病院の入院患者さま、外来通院の患者さまに多数参加いただき、楽しい1時間強の時間をすごしていただきました。
 また、入院患者さまの病棟から会場までの送迎や、会場内でのお手伝いのために、センター学院生と近隣の言語聴覚士養成校の学生にボランティアを依頼したところ、20名以上の方が参加してくださいました。
 この公演は、平成19年度にも2回開催され、今回が通算3回目になります。芸術療法は、音楽療法などのように、障害や病気をお持ちの方のQOL向上や、治療的な効果をめざして行われるものですが、その手段として、音楽だけでなく、演劇、写真、映像など総合的な要素を用いるものです。
昨年の第一回は、音楽を中心に、患者さまにも参加していただく場面もあり楽しんでいただきました。第二回は、演劇中心で大変洗練され、芸術性の高いパーフォマンスでしたが、内容が少し深刻で、「身につまされる」、「難しい」などのご意見も患者さまからいただきました。
 今回は、二回の経験を生かし、主催者の方々とも検討しあった結果、「分かりやすい」、「親しみやすい」、「参加できる」などを念頭におきながら工夫をしました。音楽はもちろん、スライドで映される映像を見ながら音を楽しむ、そして寸劇など変化にとんだ構成になりました。
 スライド上映では、豆などの小道具を使って波の音を作るなどの舞台効果音(擬音)の種明かしを紹介してくださり、参加した皆さんも実際に自分たちで小道具を使い、音を出してみました。つぎに、参加者の皆さんも加わり、もう一度、映像を写しながら、自分たちで効果音を作ることを楽しんでいただきました。また、後半の音楽でも、楽器が参加者の方に配られ、演奏に参加していただきました。小道具や楽器の操作が難しい患者さまも、ご家族や学生さんのお手伝いで、喜んで参加してくださいました。
 お芝居(寸劇)は、丁度7月5日開催でしたので、七夕をテーマにした内容で、というより、七夕をテーマにしたいので、この日に実施したというのが正確ですが・・ほのぼのとしたいくつかのエピソードが綴られました。
 前回の経験が生かされ、「ササオ(笹男?)」というユーモラスなキャラクターが話をつなげる役で登場し、全体に分かりやすく、親しみやすい内容となりました。
全体を通じ、参加した皆さんが、明るく、楽しい時間を過ごせ、なによりでした。退場の際の、患者さまの笑顔が、今回の試みを、皆様が受け入れてくださったことを表していました。
 センターや病院の役割は、ついつい患者さまの制限された機能の回復や、社会参加のスキルを得るということに向けられがちです。しかし、障害を持つ方、発症から間もない入院の患者さま、それぞれの状況は異なる中ですが、センターを利用される皆様が癒しや安らぎの時間を求めておられます。
 こうした公演が、少しでもそうした気持ちにお答えできるとしたら何よりですし、また、芸術療法を学ぶ学生さん、OBの方々、ボランティアで参加してくださったリハ専門職を目指す学生さんにとっても得るものが大きいと思います。
 本当は、患者さまのQOL確保や、ボランティアの方々との交流を通じての社会との接点の確保といった、こうした試みが、さらに患者さま、障害を持つ方の社会参加に繋がってほしいのです。
 今は、センターの付帯的な業務となっているこのような活動が、今後は、広義のリハビリテーションの役割、意義、効果としてきちんと証明され、センターの正規の役割の一つとして位置づけられることが、実は、望まれているのではないでしょうか。

 

(写真)第1回のボランティア公演の様子
(写真は、第1回のボランティア公演の様子)