〔研究所情報〕
第35回国際福祉機器展(H.C.R.2008)での研究所出展レポート
研究所 障害工学研究部 外山滋


 今年は10月24日(水)から26日(金)の3日間をかけて国際福祉機器展が開催されました。場所は例年と同じく東京ビッグサイトで、東展示ホールを全て使用して大々的に行われました。入場者数は一頃より若干減ったものの、それでも3日間の累計で120,773名に上ったとのことです。一般に福祉機器の重要性が認知され、安定期に入ったというところでしょうか。個人的な感想としては、外国人が例年に比べてやや少なかった様に思います。展示会場の入り口付近は通り抜けに大変なくらいの人の山でしたが、研究所のブースは奥まった所で、通路もそこまでは混雑していませんでした。それでも、当ブースには相当数の方々が訪れて下さり、今回の展示用に準備していたパンフレットだけでも4,000部以上は配布されました。
 研究所は毎年出展しておりますが、今年で14回目となり、毎年恒例の行事となっております。今年は「思いどおりに動かしたい障害者の意思を検出・増幅する技術」と題して、障害者が意識的・無意識的に意図することを機械でセンシングし、何らかの動きに変えるという最先端の技術の紹介を行いました。具体的に展示したものは、感覚機能障害研究部のBMI(Brain Machine Interface)を利用した生活環境制御システム(BMI-ECS)、補装具製作部が試作した模擬筋電義手、それに障害工学研究部のモータ駆動型股義足です。また、上記のメインテーマとは別に、研究所ブースの一角に福祉機器の安全安心コーナーを設け、福祉機器の耐久性試験などの地道な活動のアピールにも努めました。25日の昼過ぎにはワークショップも開かれ、「福祉用具の安全を考える」と題してのプレゼンテーションも行われました。
 BMI-ECSシステムでは、説明員が脳波測定用キャップを被り、パソコンへの文字入力やライトの点灯などのデモを行いました。脳波キャップを取り付けている姿が人目を引いたという効果もあったようですが、実際に操作するところを見て、多くの方々が感嘆していかれました。
 また、今回出展した筋電義手は、健常者が手で持ちながら操作できるという特殊仕様で、筋電義手の普及説明用に特別に補装具製作部で開発された物です。実際に、来場者の方々に机の上に置かれた積み木やアメなどをつんで頂くという体験デモが大好評で、ときどき黒山の人だかりができ、また常に順番待ちという状態でした。そのおかげで説明員はフラフラになるくらい忙しい思いをしましたが、嬉しい悲鳴でした。
 モータ駆動股義足は、片足を切断された方が装着するための物で、健側下肢の動きをセンサーで読み取り、義足の振り出しをコントロールして歩行するというもので、会場での実演は難しいので、枠に吊り下げてボールを蹴らせるという展示になりました。これも結構、人目を引いた様で、重量はどのくらいかとか、何時間動かせるかなどの質問が来場者から頻繁にありました。
 以上は実演展示のみならず、それぞれの研究活動をビデオに収めて流しましたが、内容的に来場者の興味を引いたものと思われ、ビデオ画像を熱心に見ている人が多かった様に感じられました。
 会場には様々な報道関係者が来られており、研究所ブースにも写真やビデオ撮影をさせて欲しいとの申し入れが何度もありました。特にNHKの取材では、後日(10月8日)に「スタジオパークからこんにちは」という昼の番組でBCI-ECSシステムや筋電義手の展示の様子が流されました。
 福祉機器展での展示を行う意義として、多くの方々に我々の活動を紹介し、またその反応を研究にフィードバックするという目的を持っているわけですが、振り返って見て、イベントとしても元気が出るなかなか楽しいものだったと思います。最後になりましたが、今回の出展に際して、実際に展示をして下さった方々や説明員として御協力頂いた方々の他、研究所事務や本館の方々など多くの方々の御協力を頂きましたことを厚く感謝いたします。

 

(写真1)モータ駆動股義足(手前)と模擬筋電義手(右奥)の展示
(モータ駆動股義足(手前)と模擬筋電義手(右奥)の展示)
(写真2)模擬筋電義手の体験風景
(模擬筋電義手の体験風景)
(写真3)BCI-ECSシステムの展示
(BCI-ECSシステムの展示)
(写真4)福祉機器の安全安心コーナー
(福祉機器の安全安心コーナー)