〔国際協力情報〕
「北京・中国リハビリテーション研究センター開設20周年記念式典および中国中西部リハビリテーション人材養成プロジェクト」出張報告
病院長 赤居 正美



 この度2008年10月、北京にある中国リハビリテーション研究センターは開設20周年を迎え、その記念行事を行う運びとなりました。すなわち同センターは20年前の1988年10月28日に落成式典を挙行し、業務を開始しております。その建設から現在に至るまで、国立障害者リハビリテーションセンターは津山、初山の両総長をはじめ、二瓶、木村(哲)、陶山等の諸先生方、そしてさらに多くのセラピストの先生方が日中友好の証しとして各種の技術援助を続けて来ました。
 現在同センターは病院部門(中国唯一の三級甲等リハビリテーション専門病院である北京博愛病院)、研究部門(リハビリテーション情報研究所とリハビリテーション技術研究所)、教育・訓練部門(中国各地の主として省に設置されているリハビリテーション施設の勤務者に対する短期研修を行うリハビリテーション学院)の三部門からなります。さらに国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)の協力施設として新たなプロジェクトを立ち上げています。
 私はこれまで5年間、JICAからの協力委託を受け、何回かの同センター訪問を繰り返しています。今回のJICA第3期プロジェクトは、北京におけるリハビリテーション技術者育成の成果を全国に届ける第一歩とすべく、遠隔教育のネットワークを作って地方展開を図ろうというものです。「中国中西部リハビリテーション人材養成プロジェクト」と命名され、本年4月から5年間にわたり実施される予定ですが、陝西省西安市、重慶市、広西チワン族自治区の3箇所をモデル地区にし、まず省レベルの人材を養成し、次いで下位への浸透を図るとの戦略です。
 すでに教科カリキュラム案も作成され、プロジェクト活動も進んできておりますが、シラバス作成と各担当者についても中国リハセンターの人材を中心に概ね決まりつつあります。作成に必要な教材も既に一部は入手済みで、遠隔教育機器の選定も日本から情報コンサルタントが入り、調達に向けて最終調整中です。2009年4月開始予定の遠隔講義の試行に向けて、担当部署の教育など遠隔教育を支える体制つくりが進行しています。
 この時期の訪問の課題としては、①カリキュラム全体についての方向性、特に今後の課題となっている義肢装具士教育コース及びマネージメントコース(福祉や介護を含めた医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに近いイメージでしょうか、それとも保健婦といった公衆衛生のイメージなのでしょうか)についてのアドバイス ②今後各省の中核となるリハビリテーション人材養成の具体的内容についての話し合い、などが挙げられました。
 JICA現地スタッフがまとめていた現状の問題点につき、今回の式典に参加されていた岩谷総長を初め、国際医療福祉大の谷学長、二瓶先生、木村(哲彦)先生、陶山先生、落合元看護部長、さらには京都府立医大の平沢名誉教授などのご意見もいただいて、中国側と調整を図りました。
 一人っ子政策のあおりを受けて、中国での高齢化社会の進行はわが国を上回るペースで進みそうです。つい最近まで障害者8300万人といっておりましたが、加えて高齢者3億人の重圧がすぐそこに迫っています。早急に新たな健康施策の体系を組み立てなければどうにもならない事態が直ぐそこにあるとのことです。PT・OT・STに留まらず関連専門職の充実が急務ですが、とりわけ今回も重要なテーマとなっているソーシャルワーク、ケアマネージメントなどが注目されそうです。健康施策を医療で全てカバーすることは不可能ですから、どうしても福祉面での対応が必要になります。私達のセンターが国の施策に対応する形で高次脳機能障害、発達障害に関する事業展開を行ったように、中国リハ研究センターも研究部門、教育・訓練部門をより一層強化し、こうした方向性に進んで中国全体の健康管理に貢献するのか、大いに気になるところです。
 北京は8月のオリンピックの際は国家の威信をかけて大気汚染に対応したようですが、滞在中も朝夕はかなり冷えるものの、北京秋天というにふさわしい青空となっていました。しかしアジア欧州首脳会議(ASEM)と重なり、交通渋滞はいっそうひどくなった印象です。全世界的な金融不安の進行もあり、中国の今後は多難なようです。

 

(写真1)記念式典開会式風景
記念式典開会式風景
(写真2)盧溝橋
盧溝橋