〔国際協力情報〕 |
第3回北京国際フォーラム参加記 |
第二機能回復訓練部 白坂 康俊 |
第3回北京国際フォーラムが平成20年10月27日から30日まで開催されました。1990年以来国際協力機構(以下JICA)プロジェクトに協力した関係から、日本側の開催委員(名目だけですが)に名前を挙げられており、聴覚言語部門での発表も依頼されたので参加しました。
開催期間は、上記の4日間ですが、27日は参加登録受付のみで、プログラムは28日から実施されました。今年は、主催の中国リハビリテーション研究センター(以下CRRC)の20周年にあたり、28日に祝賀式典が組み込まれ、釣魚台國賓館で開催されました。釣魚台は、国賓を迎える中国の迎賓館として、世界的にも有名で、その歴史は1000年前にさかのぼります。清時代の養源斎、清露堂などの建物が現存する歴史的施設でもあり、簡単に使用できるものではありません。私は、JICAプロジェクト以来20年近く、CRRCとの交流が続いており、数え切れないほどセレモニーにも参加していますが、釣魚台でのセレモニー開催はわずかに2回目です。李センター長以下CRRC側の気持ちの現われでもありますが、CRRCが中国で果たす役割が、中国の国家レベルで認められていることも同時に示しています。これまでCRRCの発展に協力してきた日本人専門家の一人としても嬉しいかぎりです。
記念式典は、障害者連合会会長の鄧朴方氏を初めとする政府の要人も列席する中で開始されました。参加者は、1000人を超え、日本からは大使館、JICAの代表、さらにこの20年間の歴史においてJICAプロジェクト等を通じてCRRCの発展に協力してきた日本人専門家の多数が参加していました。もちろん、元CRRCの職員で、現在は退官している方も多数出席されており、久闊を叙することができたことが、私にとっては、何よりも嬉しいことでした。
そして、李センター長の挨拶、来賓祝辞、患者代表祝辞、センター開設以来の功労者の表彰などが厳粛に進行していきます。
最後に、鄧朴方氏の挨拶があり、四川省の大地震で障害を持った方々を初めとする障害者の方々のために、四川省リハビリテーションセンターが設置されることが紹介され、式典の幕を閉じました。
記念式典も無事終了し、会場をセンター付近の洋橋ホテルの大会議室に移し、国際フォーラムの研究発表が始まりました。
まず、全体会が、28日午後から翌29日午前の間開催、28日は15題、29日に12題の発表が行われました。発表者は、中国、アメリカ、日本、ニュージーランド、香港、ドイツ、ノルエイ、ハンガリー、イタリアの9カ国の代表でした。我がセンターの岩谷総長もこの全体会において、「日本の障害者リハビリテーションの発展」について発表されました。
28日の発表プログラム終了後には、中国の障害を持つ方による芸術集団によるパフォーマンスが披露されました。
29日午後から31日にかけては、各セクションに分かれて、分科会が開催されました。分科会の構成は以下のとおりです。
①脊髄外科、②骨と関節、③泌尿器、④神経系リハ、⑤小児リハ、 ①理学療法、②作業療法、③言語聴覚療法 |
また、分科会に並行して、第21回中国国内脊髄学会が開催されました。
私は、分科会では、言語聴覚療法(ST)分科会のみに参加しましたので、その様子をご報告します。
言語聴覚療法分科会の発表内容は以下の9件でした。
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言語の分科会会場は、小さめの部屋だったこともありますが、一番多いときは、参加者が100名を超え、部屋は、文字通り移動する通路もなくなるほど聴衆で一杯になり、このフォーラムでも一番熱気にあふれた会場の一つになりました。(写真1)
日本からは、私のほかに3名、中国からは3名、アメリカから2名のSTが発表しました。中国は、まだSTの資格制度はなく、携わる人も少なく、若い世代が多い職種です。いずれの発表も、特に若い世代には、高度でかつ新鮮な情報として受け取られたという確信があります。(写真2)
こうした国際学会では、学会会場での真剣な討論や学習のほかに、異なる国の専門家同士が交流することがあげられます。私と今回の国際フォーラムでのST部門の主催者である李ST室長は、私にとって1990年来の親友でもあります。そして、日本から参加のSTは、私の親しい先輩や友人であり、李室長の部下や友人との交流は楽しく、意義深いものとなりました。(写真3)こうした輪が広がり、継続することが、将来大きな実りをもたらすことが期待されます。実際、私たちは、来年6月に言語聴覚士だけの国際フォーラムを中国で開催することを約束して中国を離れました。
さて、この大会は、中国リハビリテーション研究センターの李センター長の肝いりで開始されたもので、毎年開催されています。第1回は、中国国外からの参加としては、日本人がほとんどで、他の国からの参加者は少数のため、日中フォーラムの様相でした。しかし、昨年夏開催された第2回大会では、ノルウエイから多数の参加者があった他、アメリカはじめ参加国も増え、外国人の参加は日本人も含め50名ほどになっていました。
今回は、日本人参加者が50名を超え、外国人の参加は、総勢で100名以上、参加国数も10カ国を数え、名実ともに国際フォーラムとなりました。
毎年参加者、参加国が増えることは、参加者がその意義を認識し、またそれが実効のあるものであることを示しています。私は、何にも優先して、次回の北京国際フォーラムの日程を来年のスケジュール帳に書き込むことになります。
![]() 写真1 ST分科会会場(狭い会議室の会場にあふれる聴衆) |
![]() 写真2 発表する都筑ST(左)、通訳する中国人医師陳さんとCRRCのST室長(李勝利医師) |
![]() 写真3 国際学会のもう一つの重要な役割 (下町の中国料理店でのST同士の国際交流) |