〔国際協力情報〕
平成20年度JICA補装具製作技術研修コース実施報告
研究所 補装具製作部 中村 隆



 平成20年9月22日から12月4日までの間、JICA補装具製作技術コースの研修会が行われました。この研修コースはセンター開設当初から続く伝統あるコースで、すでに100名以上の海外研修生が参加しています。今年度は、ラオスで製作技術者として勤務するソマ−イさん、ドミニカ共和国から義肢装具士のウィルモアさんの2名の研修生です。
 このコースは座学講義と実技研修で構成され、その中には施設見学や展示会、学会参加の機会も設けられています。座学講義では日本の著名な先生方から義足全般の基礎知識について学び、実技研修では下腿義足と大腿義足について採型、製作の手法を学びました。義足ユーザーにモデルをお願いして、各々が製作した義足の適合評価を行い、ただ単に義足を製作するだけでなく、ユーザーとのコミュニケーションの重要性も理解してもらいました。また、義肢装具の材料メーカー、日本最大の義肢装具製作会社、療育センター、義肢装具士養成校などの施設見学や、東京で開催された国際福祉機器展、日本義肢装具学会学術大会では、最先端の研究や技術を知り、最新の義足部品に触れることもできました。最近はインターネットの普及で、研修生も最新の情報を手に入れやすく、研修参加国との情報量の差は小さくなっていると感じます。ただし、外国メーカーは知っていても日本のメーカーはあまり知られていません。これらの見学は日本にも優れた義足部品や技術があるということを知ってもらう良い機会でもありました。
 実習中のエピソードを話せばきりがありませんが、同じ義足とはいえ、自国とは異なる環境、道具、材料で義足を製作するのですから、二人とも最初は要領をつかむのに必死で緊張感もありました。しかし、実習に慣れるにつれてお互いの個性が発揮されてきました。ソマーイさんは、母国でプラスチック成型や義足の足の形状を削り出す作業が専門であり、その作業の時には、とりわけ生き生きと実習に取り組んでいました。また、ウィルモアさんは義肢装具士としての実績から、採型から仮合わせまでをそつなくこなしていました。特に実習全般の理解度が高く、実習中の我々の質問にも自分で必死に考え、的確な答えが返って来ました。よくよく話を聞いてみると、実は、昨年度この研修コースに参加した同じドミニカ共和国のビクトルさん(ドミニカのリハビリセンターではウィルモアさんの上司だそうです)が、帰国後に伝達講習会を開き、それに参加をして、この研修コースに応募をしてきたとのことです。ビクトルさんは日々の仕事が終わってから毎日1〜2時間、3ヶ月にわたり、この研修コースで習ったことを仲間へ教えていたそうです。これを聞き、このコースの本来の目的である技術伝達と言うものが確実に実行されていたことに、我々も安心しました。
 経済力も文化も異なる国々から研修生が集うこのコースでは、時として研修生同士の意見が食い違うこともあります。しかし、特に今年は二人の研修生の仲が良く、2ヵ月半という長期にわたり充実した研修を送ることができました。そしてこの研修が長年続いているのも、関係する多くの方々に支えられているからこそであります。外来講師を始め、見学先でお世話になった方々、また、休日に日本文化に触れる機会を数多く設けていただいた国際交流振興団体「所沢インターナショナルファミリー」の会員の方々の御協力に心より感謝いたします。

 

(写真1)実習中のソマーイさん(左)とウィルモアさん(右)
実習中のソマーイさん(左)とウィルモアさん(右)
(写真2)義足仮あわせの様子
義足仮あわせの様子