〔病院情報〕
病院紹介シリーズ⑬「薬剤科」
病院 薬剤科


 当院における薬剤科の業務内容は、以前は外来調剤中心でしたが、病院の方針として原則院外処方となった平成13年11月を契機に、入院されている方々や訓練所を利用されている方々を主要な対象とした、医療・薬物治療の安全確保と質向上のための業務、服薬支援に関する業務、適正使用のための医薬品管理に関する業務などに力を注ぐことができるようになってきました。
 具体的には、以下の業務に重点を置いて取り組んでいます。


1.障害者対応調剤
  訓練所を利用する方々や院外薬局の利用が困難な障害のある方々に対応した調剤として、視覚に障害のある方に対する拡大文字・音声・点字による薬剤情報提供及び1回の服用に必要な薬を一包化した包装に切り込みを付け、その数によって服用時、触って判別できるような調剤上の工夫や、肢体不自由の方に対する一包化及び開封の容易化などを実施しています。
2.個別アンケートによる服薬支援
  薬剤交付窓口において、当院で初めて処方箋交付を受けた方に対し、各人が希望する服薬説明文書の表記方法(点字、拡大文字、音声、通常文字)や調剤方法(錠剤・カプセル剤の一包化・切込み、シート包装のまま)等についてアンケートを実施し、その結果を調剤業務支援システムに登録しておくことにより、常に同一方法による薬剤情報提供や調剤等を選択できるようにしています。
3.持参薬の再調剤と情報の共有
  医薬品の事故防止に向けた取り組みの一環として、入院時の持参薬(他院にて処方された薬・持ち込み薬)の再調剤依頼に対し、錠剤(カプセル剤)の一包化を実施しています。
  訓練所を利用される方が当院を含む複数医療機関に受診した際に処方された薬剤について再調剤を依頼された場合にも錠剤(カプセル剤)の一包化を実施し、利用者ご自身が適切な服薬ができるように支援しています。
  また、持参薬に係る情報を共有するため、医師、看護師、薬剤師との間で連携を強化しています。実例として再分包などの実施にあたっては、看護師から文書での依頼や医師の指示書のコピーを提出してもらい、院内での適切なルールのもと運用を行っています。
4.薬歴管理に基づく調剤
  調剤業務支援システムにより、処方オーダリングシステムから転送された処方データがモニター画面の右半分に表示され、薬歴がある場合はモニター画面の左半分に日付順に表示できるため、同一画面で今回と前回までの処方内容の違い等を容易に比較・確認することができるようになっています。そのため、処方鑑査者はこの機能を利用して処方チェック段階における処方疑義発見手段として薬歴を活用すると同時に、今回と前回までの処方内容の違い等を処方箋にメモ書きすることによって、調剤者及び検薬者が画面を見なくとも処方鑑査者と同様に薬歴チェックの結果を参照できるようにしています。当院発行の処方に限定されるものの、調剤にあたっての薬歴参照機能の活用は、患者さんの安全性を確保するうえで有効な手段となっています。
5.未採用薬の緊急購入
  リハビリ目的で入院される方は、既に薬物治療が開始されている場合が多く、入院時に持ち込まれる薬剤の中に当院未採用薬が含まれている場合は、院内処方に切り替わる際に担当医の申請に基づき緊急購入することにより、服薬経験のない薬を極力使用しないこととし、新たな副作用の発現を抑えていくよう努めています。
6.院外薬局からの処方内容に関する問い合わせについての対応
  院外薬局からの問い合わせには、薬剤科が窓口となって対応しています。疑義照会により処方変更があった場合には、処方医の依頼に基づき薬剤科が代行して正しい処方に修正し、次回もそのまま処方されることのないような対策を講じています。なお、院内処方についても同様の扱いとして対応しています。
7.調剤室における各種薬剤情報の集中管理
  当科では、独自に作成した薬剤情報管理システムを活用し、院内採用医薬品集や病棟・外来診療科保管薬管理簿、廃棄医薬品帳簿などをまとめて管理しています。その他、特定生物由来製品・血液製剤管理簿、麻薬帳簿、指定抗菌剤受払簿を管理するシステムや、後発医薬品検索システム、院内製剤管理システムも使用し、医薬品管理に関する業務の合理化に取り組んでいます。
  医師の処方作成支援を目的とした取り組みでは、処方オーダリングシステムに登録済みの全医薬品(院外処方箋用医薬品を含む)について、適応症、用法用量、使用上の注意(禁忌、相互作用、副作用等)などに関する薬剤情報を「処方入力画面」や「オーダー指示画面」から検索し、画面上に表示できるようにしています。なお、データ更新についても定期的に実施しています。
8.医薬品の事故防止に向けた取り組み
  処方オーダリングシステムと調剤関連支援システムを連動することにより、処方から調剤に至る過程における人為的なミスを極力減らし、過誤を抑え込むことに努めています。
昨年5月から注射オーダリングシステムが本格稼動し、医師が直接処方入力することにより、注射箋発行や医事会計などの業務が正確かつ迅速に行えるようになりました。また、薬剤科設置の処方チェックシステムとも連動していることにより、投薬ミスなどを医師と薬剤師の双方が確認する体制を取ることができ、医療の安全性もより一層強化されました。

 現在、常勤薬剤師3名、非常勤薬剤師1名で日々の業務に取り組んでいます。今後は、入院中の方々や訓練所を利用される方々の服薬について、薬剤師が直接的にケアしていくための新たな体制づくりが必要であると考えています。

 

〔写真:障害者対応調剤の実例〕
(写真1)分包紙に切り込みを入れる。
1.分包紙に切り込みを入れる。
(写真4)点眼容器に識別シールを貼る。
4.点眼容器に識別シールを貼る。
(写真2)点字シールにより服用回数、服用時点等を薬袋に表示する。
2. 点字シールにより服用回数、服用時点等を薬袋に表示する。
(写真5)坐薬をコンテナから出し、薬袋用ビニール袋に入れる。
5. 坐薬をコンテナから出し、薬袋用ビニール袋に入れる。
(写真3)服用時点を大きく文字表示する。
3.服用時点を大きく文字表示する。