〔研究所情報〕
平成20年度発達障害者支援施策報告会開催報告
研究所 発達障害情報センター


 平成21年3月6日(金曜日)、当センター学院講堂にて、平成20年度発達障害者支援施策報告会が開催されました。
 平成17年4月に発達障害者支援法が施行され、発達障害者の乳幼児から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を図る観点から、医療、保健、福祉、教育、就労等の制度横断的な関連施策の調整及び推進が図られてきました。
 今回の報告会は、発達障害者支援に関する自治体の取組事例及び研究事業の紹介・普及を行うことにより、各自治体等における支援体制をより充実させるため、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課により開催されたものです。
 北海道から沖縄県にわたる全国の発達障害者支援担当者など約250名が出席しました。

<報告事項>
・発達障害情報センターの取組について(発達障害情報センターセンター長 深津玲子)
 発達障害情報センターの使命、運営方針、現在の取り組み等について報告されました。

・自治体発表①
(鳥取県:「エール」鳥取県自閉症・発達障害者支援センター支援員 松田啓生)
 発達障害者支援開発事業の取り組み状況および発達障害者支援マネージャーの取り組みについて報告されました。鳥取県では発達障害児(者)に対する一貫した継続的な支援をするためのライフステージにあわせた支援手法を開発する目的で、幼児期支援を皆成学園、主として早期発見・早期介入を倉吉市、就労支援を鳥取県厚生事業団しらはまが受け持っています。今後これらの地域、事業所以外でも使えるプログラム整備を課題に支援体制整備を推進する方針が報告されました。

・自治体発表②
(三重県:三重県立小児心療センターあすなろ学園こどもの発達総合支援室 中村みゆき)
三重県からは市町村職員の人材育成についてその取り組みが紹介されました。三重県では「途切れのない支援を三重県の市町で実現する」ことを目的に市町職員を小児心療センターあすなろ学園で1年間研修を受けさせ、市町の発達総合支援室に配置する取り組みをしています。この「みえ発達障がい支援システムアドバイザー」の育成事業について報告されました。

・研究事業発表①
〔テーマ〕発達障害者支援のための地域啓発プログラムの開発
〔主任研究者・発表〕白梅学園大学 堀江まゆみ
 厚生労働科学研究の成果として、研究代表者の堀江まゆみ氏より自閉症や知的障害などの発達障害のある人の地域社会におけるセーフティーネット構築について報告されました。堀江氏は障害のある人たちをトラブルから守るために地域社会における安全ネット構築のためさまざまな取り組みをされています。その一部として、警察プロジェクト(警察官に知的障害について正しく理解してもらう取り組み)、コンビニプロジェクト(コンビニの店員に知的障害について正しく理解してもらう取り組み)、ぽっぽやプロジェクト(交通機関に働く人に知的障害について正しく理解してもらう取り組み)消費者被害プロジェクト(消費生活ワークショップを各地で開催)、医療受診支援プロジェクト(障害のある人の受診支援と工夫、受診システムの構築)について具体的に提示され報告されました。

・研究事業発表②
〔テーマ〕発達障害(広汎性発達障害、ADHD、LD等)に係る実態把握と効果的な発達支援手法の開発に関する研究
〔主任研究者・発表〕東京都立梅ヶ丘病院 市川宏伸
厚生労働科学研究の成果として、研究代表者の市川宏伸氏より知的障害を伴う発達障害児・者の医療に関する調査結果について報告されました。精神科医療については、発達障害を診ることが出来る医師の不足を指摘、また、身体科医療については、発達障害児・者への理解を深め、日ごろより密なる連携が望ましいと報告されました。

・研究事業発表③
〔テーマ〕広汎性発達障害・ADHDの原因解明と効果的発達支援・治療法の開発一分子遺伝・脳画像を中心とするアプローチー
〔主任研究者〕昭和大学医学部精神医学教室 加藤進昌
〔分担研究者・発表〕東京大学こころの発達診療部 金生由紀子
 厚生労働科学研究の成果として、金生由紀子氏より広汎性発達障害の分子遺伝研究および脳画像研究について報告されました。自閉症における染色体異常報告では15q領域の重要性が示唆され、研究が進行中である。また脳の機能画像を用いた研究ではブロードマン44野と自閉症スペクトラムの関連について注目し、検討中との報告がされました。

 なお、発達障害情報センターのホームページ(http://www.rehab.go.jp/ddis/)において、
 報告会の資料(http://www.rehab.go.jp/ddis/b/siryou.html)をご覧いただけます。

(写真)平成20年度発達障害者支援施策報告会