〔病院情報〕
病院紹介シリーズ⑰「3階病棟」
 


 3階病棟は神経内科単科の病棟で、主に脳血管疾患、外傷性脳損傷、神経疾患の方が入院しています。疾病や外傷により脳を損傷した結果、見当識や判断力、記憶力が低下するなどの高次脳機能障害を有する患者が多くなっています。今自分がどこにいるのか場所がわからなくなり自室に戻ることができなかったり、入院していることを忘れてしまい無断で離棟、離院するため、安全に配慮した設備を整え職員全体で見守りしています。
 高次脳機能障害は外見からはわかりづらいために、患者自身も障害を認識しづらく、症状が多様で個別性が大きいために私達の対応も画一的にはいきません。入院後は患者が混乱することなく新しい環境に慣れるように関わり、生活のリズムを整えます。毎日の生活の中で反復しながら日常生活動作の習得と共に、それぞれに合ったスケジュール表を使用し自主的に生活できることを目指しています。また1人で外泊することができるように訓練する方もいます。交通機関の乗り方や経路について確認を行い、初回は家族の見守りのもと、切符の購入や経路に間違いはないか、安全面での配慮ができるか確認してもらい、問題がなければ1人で外泊し通院リハビリに結びつけています。
 高次脳機能障害者にとって家族の役割は非常に重要です。看護師は日々の出来事をご家族に話し、どのように対応すればよいのか説明しています。家族支援のなかでも外泊訓練は重要で、ご家族が退院後どのように対応すればよいのか学ぶ機会として捉え、外泊中困ったことなどに対して帰棟後相談に応じたり、訓練にいかすように調整を行っています。病棟での1日を紹介致します。
 3階病棟の朝は早く6時起床ですが、その前から廊下を歩き自主トレする方や、血圧測定をする方などがいます。起床後は生活のリズムを整える目的で、パジャマから日中着への更衣練習を行い、朝食後はトイレでの排泄を習慣化する為に排尿誘導を行っています。当院へ転院してくる多くの方がオムツを使用していますが、排尿誘導によりオムツがとれる方も多く、患者やご家族が喜んでいる顔をみることは私達にとっても嬉しいことです。午前・午後とリハビリがありますが、発症後間もないために疲れやすく、休憩のとり方も含めて、どのように体力を向上させるか調整するのも看護師の大切な役割の一つです。
 入浴はご自分で入ることのできる方、介助が必要な方、どちらも週に3回入浴して頂き、大変満足とのお言葉を頂いています。リハビリが終了したらパジャマへ更衣練習を行い21時に消灯になりますが、朝が早いためか多くの患者さんが消灯前には入眠しています。
 入院中は季節を感じる機会が少ないため、毎年七夕やクリスマスに催しを行っています。今年の七夕会は7月8日に行い、病棟の飾り付けは患者と共に看護師も楽しみながら行っています。
 昨年度より高次脳機能評価入院が開始となり、3階病棟で受け入れを行っています。平成20年度は遠方の方も含めて4名が入院されました。前院で高次脳機能障害と診断されたものの、障害についてほとんど説明を受けていないため家族が対応に苦慮していたり、「どの程度の障害なのかわからないから教えてほしい」等、評価入院を希望される理由は様々です。患者は2週間ほど入院し訓練部からの評価を受け、家族と共に医師から評価内容についての説明を聞き、高次脳機能障害について理解を深めて退院されます。評価入院が患者にとってより意義のある入院になるようチーム医療の一員として、看護師は日常生活全般に対する評価システムの構築を目指し、地域リハに繋げていくことが今後の課題です。
 高次脳機能障害は外見からは障害がわかりづらく、社会的な理解もまだまだ不十分であることからご家族も不安を抱えています。周りの人から何故入院しているのか、どうして会社に行けないのかと言われることがつらいなど、障害のことを誰にもわかってもらえず孤独を感じるという方も多くいます。そのような患者や家族の悩みを傾聴し、支援できるよう努力していきます。

(写真1)月に1回行われるコーラスの様子
月に1回行われるコーラスの様子
 
(写真2)7月8日に行われた七夕会の様子
7月8日に行われた七夕会の様子