〔病院情報〕
看護学生就職説明会に参加して
看護部 田村玉美


 看護部は平成18年度から毎年、看護師の就職説明会に参加している。
 梅雨とは思えないカンカン照りの6月27日の土曜日、さいたま市で開かれた埼玉県看護協会主催の看護学生就職説明会に堤看護師長と参加した。
 会場には埼玉県下の43施設が参加し、各病院は2人〜3人の体制で臨んでいた。会場は病院側の人数が優に100名を超え、広い会場も狭く感じる程であった。
 ところが、ドアが開いて学生が登場したとき、その人数は驚くほど少なかった。看護協会の担当者に看護学生の人数を聞くと、参加者は40名前後であると言う。
 理由は、この時期には大半の学生が主たる実習病院に就職が内定しているからだそうだ。そういえば、2〜3年前に看護系の教授から学生が他の病院に就職しないよう大学が厳しい方針をだしていると聞いたことがある。それがそのまま実行されていることにも驚き、空前の看護師求人難と言われている現実を目の当たりにし、新人看護師確保の困難さを実感した。
 このような状況になった背景には、2006年の診療報酬改定がある。改定の骨子は入院患者に対する看護師の数が多いほど、病院が得る診療報酬が高くなるというものである。この時から、大学病院などの大病院はもの凄いパワーで看護師の確保に走り、その現状が、今回の看護学生就職説明会でも展開されていた。
 会場に並ぶ各施設のパンフレットを見ても、あの手、この手と必死な姿勢が伺えた。封筒はカラフルで、中には、パンフレットの一番上にお菓子を置いている施設もあった。学生はどの病院のパンフレットを手にするか見ていると、やはり急性期の大規模病院でデザインなどに工夫を凝らしているものを手にしていた。祈るような気持ちで、茶封筒に準備した国立障害者リハビリテーションセンターのパンフレットの減り具合を見たが、学生は誰も手にしなかった。
 説明会が始まり学生の移動が始まると、誰一人国立障害者リハビリテーションセンター病院のブースを訪れる気配がない。学生は私たちの目の前を通り過ぎていく。会場の様子を眺めると、最初から最後まで、全く誰も訪れないブースが数多く存在するさまは異様な光景であった。自然な流れに任せていると、学生の関心は急性期の大規模病院や大学病院などに集中してしまう。手を拱いていても仕方がないので積極的に学生に声をかけ、我がブースに呼び寄せた。そして、6人の学生に看護部のいいところを伝え、アピールした。
 学生と接してみると、一番の関心ごとは、就職したらその職場は新人をどのように支え、どのような教育を受けられるかということであり、いろいろな病院の話しを聞いて自分にあった職場を探そうとしていることがわかる。これは、ここ数年どの就職説明会に参加しても変わらないものだと感じている。

 新卒看護師の離職率の高さが問題になって久しい。スキルアップの転職はいいが、仕事や人間関係の辛さが原因であることが多いと聞く。
 では、当院の看護師はこのことをどう見ているのだろうか。看護部の強みについて複数の看護師に聞いてみた。口を揃えて、「人間関係の良さ」と「ベテラン看護師が多く先輩から教えられることがよい」ということをあげる。これまでの看護体験を生かし形にして残す力、臨床知を育む力のどちらもが国リハの歴史と共に進化し文化として根付いている証拠だといえる。
 この看護の力を生かすために、看護師の教育体系を見直し、クリニカルラダーを取り入れて卒後教育の充実を図っている。また、国リハの看護師の持つ専門性の高さを生かしたスペシャリスト育成に着手したり、フロア間交流などを取り入れ、幅広くさまざまな看護の知識・技術を身につけることができるよう看護部全体で取り組んでいる。
 将来、脳卒中リハビリテーション認定看護師の養成に向けて研修コースを開始できるよう、総長はじめ中島学院長やセンター幹部の支援を受けて奮闘している。これらのことを説明している時、学生は身を乗り出し質問も交えて聞いた。
 しかし、学生は国リハのことを知らなかった。これでは就職先の候補にすらならない。全国的に専門看護師、認定看護師を置く病院がもの凄い勢いで増えているのに、国リハには専門看護師も認定看護師もいない。私は脳卒中リハビリテーション認定看護師の養成に大いに期待する。是非、実現してほしいと願っている。なぜなら、頑張って働く国リハの看護師の希望につながるだけでなく、学生募集によって国リハの知名度がアップする。
 看護師の求人予測は今後も厳しい。なんとしても乗り切らなければならない。それには強みを強化する必要がある。すでに看護師は国リハの強みをわかって看護力を発揮している。看護学生には、このような国リハの看護師の姿勢を知ってほしいと思う。
 だから、学生に見学に来てくださいとすすめた。見学すれば、現場の看護師が専門性を生かして生き生きと働いているところを見て、こんな病院で働きたいと選んでくれると信じている。
(図)2009年看護学生就職説明会ポスター  
(写真)看護学生就職説明会の様子 埼玉県看護協会ホームページより
看護学生就職説明会の様子
〜埼玉県看護協会ホームページより