〔学院情報〕
養成課程紹介②
 

 学院の5つの養成課程のうち、前回は言語聴覚学科と義肢装具学科を紹介しました。今回は視覚障害学科、手話通訳学科及びリハビリテーション体育学科を紹介いたします。



視覚障害学科

−視覚障害を持つすべての人の生活上の困難を改善できる専門職養成を目指す−


 視覚が正常な状態で育った人が、人生途上で視覚障害を持つとき、生活の様々な行動で困難な課題が生じます。日常生活のあらゆる動作、仕事に関わる様々な作業、プライベート時間の多彩な活動。それらの多くの活動を行う上で、視覚を使わずにしていることはどれほどあるでしょうか。視覚に障害を持つことは、高度な作業のみならず、生きていれば日常的に行う活動から、生活に潤いをもたらす余暇活動まで、すべての活動に問題をもたらします。しかも、それらの問題にはかなり個人差があります。なぜなら、視覚障害の内容が個々人で異なり、見えない状態で行動する能力にも個人差があり、さらにそれぞれの人が育った文化や生活習慣、嗜好などが当然異なるからです。
 それらの方々に対して、アセスメントによって障害の状況、困難な課題を把握し、ニーズを分析し、エビデンスに基づいた最善の改善策を提案し、同意に基づいて最短の時間で最大の効果を提供し、対象者の方々の自信を回復することによってQOLの向上を実現できる、そんな専門職の養成を私たちは目指しています。
 リハビリテーションを進めるための方法は、対象者の方が必ずしも苦しい訓練をしなければ実現できないものではありません。バリアフリーやユニバーサルデザインの概念に代表される環境改善の試みによって、QOLは大きく改善できる可能性があります。個人のために社会環境を改善することは困難でも、家庭の生活空間、作業空間などからバリアを取り除き、活動性を向上させられる可能性は大いにあります。また、ロービジョンの場合も全盲の場合も、様々な道具を活用することで、視覚を補償し、多少の練習でQOLの向上を図れる事例もたくさんあります。当学科では、伝統的な知恵、技術はもちろんのこと、科学の進歩に伴って得られる恩恵を活用し、視覚障害者のために応用できる知識、技術を持った学生の育成を目指しています。当学院視覚障害学科は、視覚単一障害のみならず、様々な障害との重複障害を持った方々にも総合的に支援ができる人材を養成している、日本で唯一の学校です。

(写真1)コントラスト測定 (写真2)パソコン演習
コントラスト測定 パソコン演習
(写真3)単眼鏡原理 (写真4)歩行訓練
単眼鏡原理 歩行訓練



手話通訳学科


 手話通訳学科は平成元年に手話通訳士試験がスタートしたのを受けて、それまでボランティアを基盤としてきたわが国の手話通訳養成の分野における初の専門的・体系的な教育機関として、平成2年に設置されました。開設20年目を迎えた今日においても、手話通訳養成に特化した学科をもつ高等教育機関は、本学科のほかに私立専門学校が1校あるだけで、その果たすべき役割はますます大きくなっています。
 本学科は開設当初は修業年限1年・定員10名でしたが、平成13年に2年制・定員15名に、平成15年には定員30名になり、これまでに277名の卒業生を送り出しました。卒業生は自治体や社会福祉協議会、聴覚障害者情報提供施設などに手話通訳者あるいは手話通訳コーディネーターとして採用されたり、聴覚障害者を雇用する企業や関連団体、ろう老人ホームやろう重複施設等の関連施設に就職するなど、全国各地で活躍しています。
 学生が合格を目指す手話通訳士試験は、その合格率が15%程度という難関です。受験にあたっては3年程度の手話通訳実務経験があることが想定されており、その試験に在学中に合格することは困難をきわめます。本学科では現在、在学中に10%、卒業後3年以内に30%、最終的には50%の卒業生が手話通訳士試験に合格することを数値目標として掲げています。平成21年4月現在、卒業生全体の合格率は43.0%ですが、2年制移行後に限って、卒業後2年以上を経た5学年の平均合格率をみると51.9%となっており、目標を達成しています。また、今年3月卒業の18期生は12名中5名が在学中に合格し、現役合格率としては開設以来最高を記録しました。
 手話通訳という仕事は高度な言語力のみならず、幅広い知識と高い洞察力を必要とします。プロフェッショナルの手話通訳者を一人でも多く養成するために、入学志願者のさらなる増大に向けて、さまざまな取り組みを実施していきます。みなさまのご支援をよろしくお願いいたします。

(写真5)交流実習(全国ろうあ高齢者大会への要員参加) (写真6)手話ネイティブのゲストを招いての授業
交流実習(全国ろうあ高齢者大会への要員参加) 手話ネイティブのゲストを招いての授業
(写真7)通訳実技(手話から日本語への通訳の訓練)
通訳実技(手話から日本語への通訳の訓練)



リハビリテーション体育学科


 リハビリテーション体育学科は、障害者福祉を推進するうえで必要な総合的リハビリテーションにおける体育・スポーツ指導を専門とする技術者を養成する目的から、平成3年にわが国唯一の専門職員養成機関として発足しました。今年、開設19年を迎え、これまで130名の卒業生を送り出しました。就職先はリハビリテーション病院などの臨床現場をはじめ、高齢者施設や健康増進関連施設といった福祉施設のほか、教育機関、企業等さまざまであり、各分野でパイオニア的役割を果たしています。また、大学院へ進学して専門研究を深める者や、海外の技術援助に赴く者等、進路は多岐にわたり、その指導技術の開発や研究実績は高い評価を受けています。
 リハビリテーション体育の技術者は、人のこころとからだへアプローチするため、医学や社会福祉学をはじめ、体育・スポーツ科学に関する専門知識と指導技術を備えることはもちろん、活力ある豊かな人間性が求められます。そのため、本学科の教育課程では、考える力と判断力、社会に生きる人間としての豊かな人間性を育めるようカリキュラムを組んでいます。
 近年、急激な高齢化の進展や社会構造の変革に伴い、障害の重度化、重複化、多様化が加速しています。そして、ライフスタイルに起因した生活習慣病の割合も増加していることから、運動・スポーツの役割や重要性が再認識されてきています。こうした社会背景に鑑み、今後、当学科では体育・スポーツ科学、運動などの分野に主眼をおきつつ、障害をもつ方や老年期により心身機能が低下した方、あるいはそのおそれのある方など、全ての人を対象に機能制限の軽減から疾病予防、健康・体力づくり、生きがいづくりまで、豊かな生活の実現に寄与できる幅広い知識と人間性を身につけた実践的な技術者の養成に力を注いでいきます。さらに、需要が見込まれる地域や総合的リハビリテーションにかかわる中核的機関等で、教育、研究、研修において指導的役割を担える人材を含めて養成したいと考えています。ご支援どうぞよろしくお願いいたします。近年急激な高齢化の進展や社会構造の変革に伴い、障害の重度化、重複化、多様化が加速しています。ライフスタイルに起因した心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の割合も増加しています。医療施設や福祉施設をはじめ、地域の現場では保健、福祉、教育的観点から運動・スポーツプログラムが実施されていますが、医学的リスク管理を必要とする方から競技レベルまで一貫して、運動やスポーツの効果についての正しい知識を持ち、安全で効果的に、楽しく、継続的に”スポーツ”を指導できる人材の確保に苦慮しているのが現状です。 共生社会を目指したノーマライゼーション、完全参加と平等、自己実現などの理念に基づいて心身の活性化や健康の維持・増進を図る専門的なサービスを提供できる技術者を養成するため、志願者の増員を含めてさまざまな取り組みを実施していきます。今後もどうぞご支援よろしくお願いいたします。

(写真8)運動処方実習(バドミントンを手段に運動機能の向上を図る)
運動処方実習(バドミントンを手段に運動機能の向上を図る)
(写真9)障害者スキー実習(チェアスキー) (写真10)学会発表(卒業研究として)
障害者スキー実習(チェアスキー) 学会発表(卒業研究として)