〔病院情報〕
病院紹介シリーズ⑱
「第二機能回復訓練部」
 


1. 第二機能回復訓練部の業務
 第二機能回復訓練部(通称二訓)は、コミュニケーション障害を担当する部門で、聴覚・言語障害、摂食・嚥下障害を主な対象としています。対象患者さまは通常の病院と同じく入院・外来に大別されます。訓練件数の割合をみると平成20年度では入院48%に対して外来52%と外来がわずかに多くなっています。入院患者さまは、脳血管障害や頭部外傷による、失語症、高次脳機能障害、運動障害性構音障害、摂食・嚥下障害が中心ですが、頚髄損傷による摂食・嚥下障害や高位頚髄損傷者の人工呼吸器使用の場合の音声確保など対象は多岐にわたっています。さらに数は少ないのですが耳鼻科関連では人工内耳の手術のケースもあります。そのため年齢層は乳幼児から高齢者の方まで幅広い層にわたっています。


(写真1)個別訓練の様子
個別訓練の様子


(写真2)グループ訓練の様子
グループ訓練の様子

 一方外来の患者さまは、言語発達遅滞、口蓋裂による構音(発音)障害、発声発語器官に問題はないものの発音がうまくできない機能性構音障害、数は少ないのですが脳性まひなどお子様の言語障害が多いのが特徴です。聴覚障害は、年齢的には新生児から高齢者まで幅が広いのですが、お子様の聴覚障害はことばの獲得に関係するので、成人に比べて頻度も多く、期間も長くなる傾向があり、二訓の業務では、大人の聴覚障害より比重が重くなっています。また成人の方々の外来では入院後のケースや他施設からの紹介による失語症や高次脳機能障害が主となっています。また音声障害も身体的な問題を伴わないので外来での対応が主となります。そのほか幼児から大人まで幅広く対応を求められる障害として吃音があります。吃音に関しては対応する医療機関が少ないため当部門への問い合わせが多く、現在二訓でも十分な訓練対応はできずに他施設への紹介や相談に終わらざるを得ないケースが多くなっています。
 こうした言語障害を担当する二訓の職員は、言語聴覚士の国家資格を必要とします。現在常勤7名、非常勤3名で臨床を中心に多くの業務をこなしています。このほかに当センター学院には、言語聴覚士を養成する専門学校があり、その教官4名が病院と併任になっており臨床業務が行えるようになっています。また発達障害情報センターの言語聴覚士1名も病院併任となっており、主に病院でことばの遅れを主とする臨床を行っています。通常の病院業務以外に二訓職員の一部は、学院の講義や実習などを担当しています。さらに別の言語聴覚士養成校の実習受け入れも行っています。また、聴覚障害児・者の方々の相互交流、情報提供を目的とした人工内耳友の会の活動、発達障害の保護者会の活動、高次能機能障害者の家族会など直接的な訓練業務以外での患者さま方を支える支援にも取り組んでいます。


(写真3)発達保護者会の様子
発達保護者会の様子

2. 今後の課題
 ここ数年の人員削減の影響もあり、二訓も常勤職員は3年前からみると9名から7名に削減されています。しかしながら対象患者さまは入院においては、この数年高次脳機能障害、摂食・嚥下障害の患者さまを中心に増加傾向にあります。一方外来においても言語発達遅滞、吃音、構音障害を中心にその数が減少することはありません。結果としては一人の言語聴覚士が対応できる領域を増やすことで出来る限りのサービスを提供するよう努力を続けています。しかしながら現実的には主に言語発達障害や吃音などの外来患者さまの新規の受け入れを制限せざるを得ない状況が、この2〜3年続いています。このことは当センターが「身体障害者リハビリテーションセンター」から「障害者リハビリテーションセンター」へと名称変更し、より多くの障害に対応しようとしている状況と相反する状況といえます。国立の医療機関として30年に及んで多くの聴覚言語障害のある方々への支援を継続してきましたが、現在その中でいくつかの障害領域の臨床を事実上縮小、中断している状態を今後はなんらかの方策で打開していきたいと考えています。
 もう一点はこれまでの国の機関としての聴覚言語障害の臨床・研究は維持しながらも、障害児・者が地域で生活することを広く支えていくために、単に狭い意味での臨床・研究から、各地域の社会資源との連携、地域ネットワークの形成などを業務の一環ととらえ、言語聴覚障害児・者と家族の方々が地域生活でよりよい生活ができるよう支援していく機関となれるよう努力していきたいと考えています。