〔研究所情報〕
発達障害情報センターの現在の活動
発達障害情報センター センター長 深津 玲子

 
 発達障害情報センター(以後センターと略)が厚生労働省から国立障害者リハビリテーションセンター(以後国リハと略)に移管されてから早いもので10カ月が経過しました。これまでも国リハニュースを通じて当センターの紹介を行っておりますが、今回は現在の活動状況、Webサイトのアクセス解析、来年初めに予定している全面リニューアルなどについて具体的にご紹介したいと思います。センターは発達障害の正しい理解の啓発と、適切な支援の開発、普及を目的に平成20年3月に厚生労働省内に設置され、同年10月1日国立障害者リハビリテーションセンター研究所に移管されました。その使命は、発達障害のある人が乳幼児期から成人期まで、保健・医療・療育・教育・福祉・就労の分野での支援を円滑に受けるための情報を提供することです。そのために発達障害に関する情報収集・分析、ウェブサイト等を通じての情報発信、発達障害支援に関する調査・研究を行っています。

発達障害情報センターの体制と運営方針
 センターは国リハ研究所の一部門として設置されました。第1研究棟1階旧展示室に位置します。スタッフはセンター長を含め7名が病院からの併任で、センター専従スタッフは2名です。スタッフの職種は医師、心理療法士、言語聴覚士、作業療法士、医療社会福祉士、行政官と多分野にわたります。またセンターの事務局は厚生労働省精神・障害保健課内にあり、連携して情報収集にあたっています。センター顧問には都立梅ヶ丘病院の市川宏伸院長をお迎えしています。
 センターの提供する情報について、企画提案や情報提供協力する組織として、外部委員を含む運営会議が設置されています。ここには我々センターおよび事務局に加え、国立精神・神経センター、国立秩父学園、発達障害教育情報センター、高齢・障害者雇用支援機構、国立成育医療センターから発達障害者支援の専門家が委員として参加しています。またセンターが提供する情報については発達障害者施策検討会に諮問しています。
 センターの運営方針は下記のとおりです。
   発達障害に関する情報収集、分析、蓄積:発達障害に関する研究情報、支援情報について収集し、ユーザー、分野等により分類しデータベース化する。
   発達障害に関する情報の発信、普及啓発:本人、家族、支援者、一般国民向けにホームページ、パンフレット、シンポジウム等により情報発信し、発達障害に対する正しい知識の普及啓発につとめる。
   発達障害に関する調査・研究:発達障害者支援に関するニーズや新しい支援手法等について調査、研究する。
   発達障害教育情報センターとの連携:特別支援教育総合研究所に設置された発達障害教育情報センターは、発達障害のある子どもの教育の推進・充実に向けて、発達障害にかかわる教員及び保護者をはじめとする関係者への支援を図り、さらに広く国民の理解を得るために、 Web サイト等による情報提供や理解啓発、調査研究活動を行っています。発達障害情報センターと発達障害教育情報センターとの連携強化は発達障害者施策検討会報告の中でも課題としてあげられていました。現在、同センターとは掲載情報について可能な限り相互協力することで合意しています。特に共通する情報の多い発達障害に関する研究成果、発達段階をふまえた相談窓口、幼児期の支援について各共同作業班を立ち上げ、連携して情報収集にあたるとともに、共有データベース構築をめざして検討を開始したところです。
 
発達障害情報センターウェブサイト(http://www.rehab.go.jp/ddis/)の紹介
 皆様は発達障害情報センターのホームページをご覧になったことがあるでしょうか?国リハホームページのトップページから簡単にアクセスすることができます。センターからの情報は主としてこのウェブサイトを通じて発信されます。現在のコンテンツのおもなものは、「発達障害に気づく(乳幼児期、就学前後、思春期、成人期)」「発達障害を理解する」「支援・診療のための資料(ガイドブック、マニュアル等)」「国の施策」「福祉・就労等制度の情報」「相談窓口の情報」「日本の取組み・世界の動き」「イベント・研修会等のご案内」などです。このうち資料やイベント・研修会情報等については、当サイトの基本コンセプトである、発達障害に関する正確かつ信頼できる情報を掲載するため、ガイドラインを設けています。それに従い、官公庁、国立施設等機関、独立行政法人、外国の政府機関が関係(主催、共催、助成)している情報について掲載しています。今年4、5月の2ヶ月間のアクセス解析によれば、訪問数は平均して1日400程度でこれは国リハホームページ訪問数の約半分に当たります。ページ参照が多いのは「発達障害者支援センター一覧」、「発達障害を理解する」、「支援・診療のための資料」、「発達障害に気づく」の順となっています。またダウンロードが多かったのは、今年3月6日に行った施策報告会資料となっています。

今後の課題
 当サイトは当事者、家族、発達障害を専門とする支援者、発達障害を専門としない支援者、いずれにも該当しない一般の方など様々なユーザーが想定されます。また乳幼児期から成人まですべてのライフステージにおける情報が求められます。関連する分野は保健、福祉、療育、教育、医療、労働など多岐にわたります。こういった多様なニーズに答え、かつ使いやすいサイトをめざし、現在全面リニューアルの準備中です。リニューアルに当たっては、根幹となるセンター独自のコンテンツ量を現在の約2倍に増やし充実させます。この新しいコンテンツ作成には、一部外部研究者に依頼しましたが、ほとんどを情報センタースタッフが書き起こしています。この新しいコンテンツ原稿は前述した発達障害者施策検討会にてチェックを受けます。表1にサイトリニューアル計画を示しました。7月現在やや計画に遅れはあるものの順調に進捗しており、原稿の整理・編集、インフラ整備のための会議、仕様書準備に大わらわ、と言った状況です。一方現行のサイトもイベント・研修会情報、支援・診療のための資料を中心に平均週1〜2回更新情報を掲載しています。これらは主として他の機関が作成した情報から発達障害支援に関連する情報を、我々が探し出してユーザーが利用しやすい形で掲載しています。もう一つの仕事として、収集した資料のデータベースを作成しています。将来的には、全国の発達障害者支援センターと連携し、共同して支援ニーズの調査・情報収集にあたり、共通のデータベースを利用できるようなシステムを構築していきたいと考えています。

(図)サイトリニューアル計画