〔更生訓練所情報〕
「平成21年度国立更生援護施設理療科教官研修会」実施報告
理療教育・就労支援部理療教育課 谷口 勝


 去る8月3日、本館大会議室において標記研修会の開講式が挙行され、主催施設を代表して阿部光教施設管理室長並びに江藤文夫更生訓練所長からご挨拶をいただきました。各視力障害センターから14名の理療科教官、また当センター教官を合わせ三十数名の教官が参集し、1週間にわたる研修会が開幕いたしました。
 本研修会は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課施設管理室と当センターによって毎年実施されているもので、今年度も8月3日から5日までの教科教育研修会と8月3日から7日までの臨床教育研修会を同時並行で行いました。
 教科教育研修会は、各国立更生援護施設及び当センターに勤務する理療科教官を対象として、教官個々の専門性向上と教官相互の協力体制の強化を図ることを目的としています。今年度は、「就労を見据えた教育体制の検証―臨床を核とした教育体制の検討に向けて―」と題して開催いたしました。
 理療師を養成するための教育訓練はすべてが就労・臨床に向っており、臨床を核とした教育指導形態を確立させる必要があることからテーマを設定したところです。
 一方、これと並行して開催した臨床教育研修会は、初任者及び臨床研修を希望する理療科教官を対象として、臨床教育の向上を図ることを目的としています。今年度は、「臨床教育の拡充に向けて―養成施設から研修コースまで―」をテーマとし、卒後教育として、充実した研修を提供させるための方略を探ることを目指して研修を実施いたしました。
 次に主な研修内容および実施状況について日程順に報告いたします。


初日(8月3日)
 主催施設挨拶に引続き基調講演が行われました。「超高齢社会におけるあはき師の役割と理療教育のあり方」をテーマに、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科学科長である坂井友実教授から講演がありました。先生からは、超高齢社会において鍼灸手技療法は治療手段の一つになり得ると考えられるが、鍼灸手技の利点と限界、超高齢社会をよくわきまえ、現代西洋医学とうまく使いあわせて、適切に対応できる力量をもつことが重要であることが示唆されました。

(写真1)坂井先生による基調講演
坂井先生による基調講演

2日目(8月4日)
 午前中は視聴覚教室において、「効果的な受験対策をめざして―成績不振者の実践力底上げにつながる方略を探る―」をテーマとしてシンポジウムが行われました。各センターからの報告に加え、熊谷理療技術高等盲学校の大西剛教頭から、「本校における受験対策の事例紹介―あはき師国家試験の合格に向けた取り組み―」と題して盲学校における個性的でユニークな取組みが紹介されました。
 午後からは、筑波技術大学准教授の藤井亮輔氏により、「視覚に障害を有するあはき師の就労状況から将来展望まで」、また、これと関連して、「地域理療と理療経営の教授法について」の2題について講演がありました。


3日目(8月5日)
 午前中は視聴覚教室において、「各センターにおける臨床実習の実態から、基礎実習・応用実習の問題点、並びに就労への方向付けを考える」をテーマとして研究協議が行われました。また、これに続き来年度から国家試験において利用されるDAISYへの対応について、財団法人東洋療法研修試験財団のテープ問題検討会委員長で筑波技術大学の村上佳久氏から、「試験に伴うDAISY-CDの使用に係るDAISY機器(録音機能付)のデータ消去等について」、講演並びに実演を行いました。以上の日程で教科教育研修会は終了となりました。
 午後からは臨床教育研修会に的を絞り、医学博士である丹澤章八氏をお招きして特別講演とワークショップが行われました。講演は、「卒後教育のあり方−臨床研修コースの指導法確立に向けて−」、引続き、「臨床脳(あたま)を創る」と題し、模擬患者と施術者の対話から学生を臨床に導くスタイルでワークショップが行われました。
(写真2)丹澤先生による特別講演、ワークショップ
丹澤先生による特別講演、ワークショップ


4日目(8月6日)
 4日目は臨床実習室において、終日、講義と実技が行われました。講師は、訪問リハビリ研究センター代表取締役である西村久代氏、テーマは、「あはき師のための在宅ケア実践テクニック」で、介護に関するテクニックについて実技を中心としてわかりやすく指導していただきました。
(写真3)西村先生による実技指導
西村先生による実技指導


最終日(8月7日)
 午前中、視聴覚教室において、「魅力あるプレゼンテーションの実践」と題して、論文作成コーチングラボ主宰である石井一成氏にご講演をいただき、授業や臨床研究に活用するためのプレゼンテーションを紹介いただきました。
 以上をもって1週間にわたる全プログラムが終了いたしました。研修会期間中、大きなトラブルもなく全日程を円滑に進行することができましたことは、ご講演賜わりました各講師の皆様、研修会に参加いただいた教官の皆様、また、研修会に関してご指導いただいた皆様のご協力によるものと存じます。心より感謝し御礼申し上げます。