〔特別寄稿〕
国立障害者リハビリテーションセンター
創立30周年に寄せて
佐藤 德太郎



 国立障害者リハビリテーションセンター創立30周年に当たり、過去を振り返りながら、将来への期待を述べてみたい。
 統合前の3施設において節目毎に作成された記念誌、「国立身体障害センター創立30周年記念誌」、「国立東京視力センター31年誌」、「国立聴力言語障害センター創立20周年記念資料」などを紐解いてみると、更生援護活動の発展に加えて、研究・教育がどのように形作られたかが解る。また、非常に多くの活動内容が今日の本センターの活動の中に引き継がれていることを知ることもできる。
 本センター創立5周年に作成された「草創」には、センター発足前後の様子が詳しく書かれているが、「国立聴力言語障害センター21年のあゆみ」の巻頭言に記されたようなエールをもって送られ・集われた方々が、互いにエネルギーをぶつけ合いながら、次第に一体化していった。それと共に、更生訓練所と病院の整備に続いて、前施設から引き継がれた研究・教育の火種が、研究所、学院として形作られ、各部署の発展が図られてきた。
 これまでに、多くの実績を上げている。例えば、更生訓練所においては、6,000名を越える入所生の社会参加に貢献しており、研究所などにおける特許の取得数は13件となり、義肢装具等適合判定医師研修会の受講者は5,000人を越えている。
 また、各部署において、特色ある活動がなされてきている。創立から約20年間の更生訓練所の職業訓練によって、外傷性脳損傷、知能指数が60未満の脳原性運動機能障害、あるいは精神障害をもつ人々の実に半数以上が一般企業に就職(一般就労)できていた。病院においては、「ハローベビーコーナー」が立ち上げられ、その集大成として「赤ちゃんとの出会いを語る−脊髄損傷女性の出産と子育て」が刊行されている。研究所においては、補装具の研究とともに、画像解析技術や遺伝子分析、細胞生物学的技術による障害の診断・治療の研究も進められてきた。学院においては、「盲ろう者ガイドヘルパー指導者研修事業」などの多くの重要な研修事業が継続されている。
 さらに、中国やチリ等への国際協力や、高次脳機能障害に対する取り組みなどの大きな事業には、センターの各部署が一体となって、国内外の要請に応えてきた。
 これまでに、センターの諸活動を通して、優れた人材を養成し、地域のサービス現場や他機関の要職に送り出していることも本センターの重要な実績である。
 一方、センターにおいては、他機関との人事交流が大きなエネルギーの注入になっていることを実証済みである。
 このように、本センターは、研究・教育機能を併せ持ち、医療・福祉サービスを実施できる施設であり、先進的なサービスの開発や国際協力に関する要望に応えうる体制を備えている。
 さて、米国のNIHにおいて今なお重要なスタッフとして活躍しているインターン時代の同僚を2回訪問したことがあるが、2度目に訪れた時には、改修工事中であった。それは、活動方針の変更による施設の縮小のための大改修であった。将来計画に応じて、大きく縮小することもあり得るNIHのダイナミックな取り組みに感銘を受けた。
 本センターでは、創造的な活動が一層重要になるものと考えられるが、慣例にとらわれない人事交流を進めるとともに、厳密な計画の見直しを行いつつ、時には縮小もありうる柔軟性をもって、国内外の要請に大いに応えていくことを期待する。