〔更生訓練所情報〕
「身体障害者リハビリテーション研究集会2009」に参加して
更生訓練所自立訓練部自立訓練課 周藤 方史


 平成21年11月19日(木曜日)・20日(金曜日)の2日間、「身体障害者リハビリテーション研究集会2009」が、千葉県のホテルポートプラザちばにて開催されました。この研究集会は、全国の身体障害者更生施設及び身体障害者更生相談所に勤務する職員等が、障害者自立支援法の下に行う利用者支援に関する諸課題や地域リハビリテーションのあり方などについて、研究討議するとともに情報交換を行い、身体障害者への支援やリハビリテーションの向上を目指すことを目的としています。全国身体障害者更生施設長会、全国身体障害者更生相談所長協議会、及び当センターの協催で毎年この時期に開催しており、今回は「障害者自立支援法下における社会リハビリテーションの課題と展望」というテーマで、全国から160名以上の方が参加しました。
1 講演
 当センター更生訓練所の江藤所長から「障害者自立支援法とリハビリテーション関連領域の動向」について講演が行われ、障害者自立支援法が施行されるまでの経緯、障害者自立支援法等の一部改正案、自立支援システム等についての報告がありました。
2 特別講演
 特別講演の前半は、筑波大学特任教授奥野英子氏による「障害者自立支援法下における社会リハビリテーション」と題した講演がありました。リハビリテーションの主要分野の一つである社会リハビリテーションとは「障害者が自分の障害を正しく理解し、社会の中で活用できる諸サービスを自ら活用して社会参加し、自らの人生を主体的に生きていくための社会生活力を高めることを目めざすプロセス」と定義し、社会生活力を高める支援として社会生活力プログラム(SFA)について、その意義、実施方法等についての解説がありました。
 後半は、江藤更生訓練所長と奥野教授により「社会リハビリテーションの課題と展望」をテーマに対談という形で意見交換が行われ、両氏ともリハビリテーション分野に携わってきた経験を踏まえ、今後の社会リハビリテーションの課題等について提言がなされました。
3 研究発表
 研究発表で、次の4部会に分かれて、計36題の発表がありました。
 第1部会「地域移行支援と様々な社会参加への取り組みや地域連携などについて」
 第2部会「高次脳機能障害者支援の実際と課題について」
 第3部会「就労移行支援と働き続けるための支援や連携について」
 第4部会「更生相談所の取り組みについて」
 各都道府県のリハビリテーションセンターの職員などからの発表が多く、全国各地で行われている様々な実践や研究結果の報告がありました。障害者を地域で支えていくために地域において必要な資源は何か、どのような機関と連携体制が必要か、家族への支援も重要などといった視点から幅広いサービス内容と工夫を実践しているところもあり、障害者支援に深く関わるものとして大変勉強になりました。また、訓練プログラムや訓練評価も参加者の関心も強く、発表会では活発な意見交換が行われていました。
4 シンポジウム
 シンポジウムでは、「高次脳機能障害者の自立訓練、就労支援の現状と課題」と題して開催され、横浜市総合リハビリテーションセンター大場純一氏がコーディネーターを務め、兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンター椚田敏文氏、広島県立障害者リハビリテーションセンター河口幸貴氏、千葉県福祉援護会指定障害福祉サービス事業所若葉リハビリセンター齋藤太嘉志氏の3名がシンポジストとして、それぞれの立場で自立訓練、就労移行支援利用者の状況や実績、退所後の地域生活について地域生活支援上の課題等について報告と提言がありました。椚田氏からは退所後の地域連携の大切さや正規・非正規職員を組み合わせながら収入と支出のバランスを調整しマンパワーを獲得しながら日常の支援体制を支障のないようにしているなど、報酬単価の伸びの低さもあり施設運営の困難さについて報告がありました。
 私も高次脳機能障害の自立訓練(生活訓練)に関する事例を発表させていただきました。発表内容や資料をまとめる中で改めて自身の支援を振り返ることができたことや、現在の業務も見つめ直すことができたという意味では、大変良い機会が与えられたと感謝しています。また、制度が変化していく中で、この研究集会が情報交換の場として今後も大変有意義な研究集会として発展していくものと感じました。


(写真1)身体障害者リハビリテーション研究集会2009の様子


身体障害者リハビリテーション研究集会2009プログラム
 11月19日(木曜日) 第一日目
10時00分〜10時30分 開会式
10時30分〜11時00分
講演:【障害者自立支援法とリハビリテーション関連領域の動向】
  国立障害者リハビリテーションセンター
    更生訓練所長 江藤 文夫氏
11時00分〜12時00分
特別講演:【障害者自立支援法下における社会リハビリテーション】
    筑波大学特任教授 奥野 英子氏
12時00分〜12時30分
対談:【社会リハビリテーションの課題と展望】
  司会:吉永 勝訓(千葉県千葉リハビリテーションセンター長)
    筑波大学特任教授 奥野 英子氏
    更生訓練所長 江藤 文夫氏
12時30分〜13時30分
昼食・休憩
13時30分〜17時00分
研究発表
  第一部会
    「地域移行支援と様々な社会参加への取り組みや地域連携などについて」
  第二部会
    「高次脳機能障害者支援の実際と課題について」
17時30分〜19時30分
意見交換会・懇親会

 11月20日(金曜日) 第二日目
9時00分〜10時45分
行政説明:【障害保健福祉行政の最近の動向】
  厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部
    企画課課長補佐 奥村 健志氏
11時00分〜12時30分
シンポジウム:【高次脳機能障害者の自立訓練、就労支援の現状と課題】
○コーディネーター
 横浜市総合リハビリテーションセンター
  障害者支援施設 施設長 大場 純一氏
○シンポジスト
 兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンター
  自立生活訓練センター所長 椚田 敏文氏
 広島県立障害者リハビリテーションセンター
  障害者支援施設あけぼの 課長補佐  河口 幸貴氏
 社会福祉法人千葉県福祉援護協会指定障害福祉サービス事業所
  若葉リハビリセンター 課長 齊藤 太嘉志氏
12時30分〜13時30分
昼食・休憩
13時30分〜15時20分
研究発表
  第三部会
    「就労移行支援と働き続けるための支援や連携について」
  第四部会
    「更生相談所の取り組みについて」
15時20分〜15時50分
閉会式