〔学院情報〕
「リハビリテーション看護研修会」に参加して
病院 2F病棟 篠崎 菜穂子


 平成21年10月27日から10月30日までの4日間リハビリテーション看護研修会に参加する機会を頂き受講しました。今年度のテーマは「障害と看護」でした。講義の内容は、当センターの広報ビデオに始まり、厚生労働省障害福祉専門官から「障害福祉の動向」、当センター江藤文夫更生訓練所長から「高次脳機能障害の病態とリハビリテーション」、中島八十一感覚機能系障害研究部長から「高次脳機能障害と普及事業について」の各講義、また諸講師方々より「障害とリハビリテーション看護」、「在宅への支援」、「認知症の医学的理解」、「認知症の看護」、「高次脳機能障害者の看護」、「発達障害とは」、「摂食・嚥下障害者への援助の実際と口腔ケア」、「臨床における暴力の現状とその対策」、「家族心理教育の実際」などの講義が、演習やグループディスカッションも交えて行われ、大変有意義な研修でした。参加者は全国53の病院・施設から64名の看護師が参加しました。
 私は当センターに平成5年に就職し、早くも16年目となりました。リハビリテーション看護研修会は当センターにおいて毎年行われる研修で、これまで運営活動に従事したことはありましたが、今回研修生としてはじめて参加させていただきました。
 講義の中で最も印象に残ったのは、(財)茨城県総合健診協会 県立健康プラザ 大田仁史先生の講義「在宅への支援〜入院中から在宅を見据えて〜」でした。
 先生は、人は病気になると常に揺れる心を持ち、その心は「強い心」と「弱い心」の間を行ったり来たりしていると述べられ、「強い心」では、自分を客観視できる、将来のことを考えられる、外出し人と会うことができる、自分のしたいことを探せる、役割感を持てる、人を気遣うことができる、と述べられていました。
 また、苦しみには「他人に苦しめられる苦しみ」と「自分の中から出てくる苦しみ」の2つの苦しみがあり、「他人に苦しめられる苦しみ」は、①物理的、②制度的、③文化・情報、④意識(心)の4つのバリアから生じること、また、「自分の中から出てくる苦しみ」には、①生活感覚の戸惑い、②社会的孤立と孤独感、③役割感の喪失、④目標の変更ないしは喪失、⑤獲得された無力感、⑥見えない可能性、⑦障害の悪化や再発の不安の7つの心があることを紹介されていました。


(写真1)リハビリテーション看護研修会の様子1

 このような心の揺れ動き、病気や怪我で障害を持つことの大変さ(苦しみ)は、実際、入院中のリハビリにおいても、昨日できなかったことが今日出来る様になったかと思えば、次の日にはできなくなっている、一歩進んで二歩下がる、といった形で常に日々の入院生活の中でも見られることです。私達は、このような患者さんを目の前にして、暖かく見守り、励まし、時には叱咤し、患者さんの心の中の声も聴けるようにコミニュケーションを図り観察することが大切であると痛感しました。
 また先生の話の中で「孤独の殻を破る仲間の力が必要である」とありました。自分と同じ疾患、障害を持った仲間同士の意見などを聞くことで、現在の自分を知る事ができ、未来の自分を考えることが出来るということです。入院中の患者さん同志での情報交換が有効であることについては私自身も同感です。また、同じ疾患を持つ家族間でのコミニュケーションを取り持つ役割も大切だと思います。実際に病院でも高次脳機能障害のある患者さんの家族に向けた家族学習会も定期的に開催され、障害についての理解、対応の仕方などの情報交換を行い役立っています。
 最後に先生は、「患者さんが元気を取り戻す」ために、1)自分を客観視できる、2)将来を考えられる、3)感心事(興味のある事)を持つ、4)よい仲間がいる、5)情緒的に支えてくれる人がいる、ことが大切であると話されていました。この5つを兼ね備えられるように私達が仲間作りのお手伝いをし、自分を客観視できるように援助していくことの大切さを知りました。そして患者さんと家族が元気を取り戻していけるような環境を作るため、入院中だけでなく、自宅に帰ってからの生活でも元気に暮らせるよう地域の方との連携をもっともっと働きかけ深めていくことが今後の課題であると思いました。
 今回4日間の研修に参加して、臨床の看護ではなかなか目が向かない障害福祉行政のことをはじめとして、在宅への支援、疾患の医学的理解、家族心理教育の実際など、多種多様なことを学ぶことができとても有意義な研修でした。今回学んだことを今後の看護の実践に役立てていきたいと思います。


(写真2)リハビリテーション看護研修会の様子2




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