〔お知らせ〕
塙保己一賞貢献賞の受賞について
 


 このたび、当センター研究所の河村宏特別研究員(DAISYコンソーシアム会長)が「第3回塙保己一賞貢献賞」を受賞されました。塙保己一賞は、幼くして失明したにもかかわらず、文化史上未曾有の文献集「 群書類従(ぐんしょるいじゅう) 」を編集・出版した江戸時代後期の学者 塙 保己一にちなみ、障害がありながらも不屈の努力を続け社会的に顕著な活躍をしている方又はこのような障害者のために様々な貢献をしている方に贈られているものです(埼玉県ホームページより)。受賞にあたり、河村宏特別研究員から「塙保己一賞貢献賞を受賞して」と題してご寄稿いただきましたのでここに掲載いたします。


(写真)塙保己一賞貢表彰式の様子


「塙保己一賞貢献賞を受賞して」河村 宏


 塙保己一賞は、「群書類従」編纂という偉業を成し遂げた全盲の塙保己一の貢献をたたえて、障害者の自立を推進するために保己一ゆかりの埼玉県が設けた賞である。筆者は、「障害者の自立・社会参加の拡大につながる顕著な発明や機器開発等を行った方」に設けられた同賞の第3回の貢献賞をいただいた。塙保己一とヘレンケラーは、一人の障害者が適切な支援を得、夢を持ち努力を重ね、社会に貢献することによって、周囲の常識を変え、時代を超えてグローバルなスケールで後進に夢を与え続けている伝説的な偉人である。先にサリバン賞をいただき、今回塙保己一賞をいただくことは、この二人の偉人に生き方の上で大きな影響を与えられた筆者にとっては、大変な名誉である。
 同賞公式Webによると筆者の受賞理由は、「視覚障害者用の世界的共通録音図書として開発された『デイジー』」の開発・普及の国際的なリーダーとして活躍。デイジーにより、視覚障害者及び録音図書を必要とするすべての障害者への情報提供・情報資源の共有が飛躍的に促進された。近年では、文字の読みにくくなった高齢者や識字障害を持つ発達障害者のための情報確保手段としてもこのデイジー図書が高く評価されている」とされる。
 デジタル録音図書の国際標準規格を開発・普及することで、読むことが困難なために知識から疎外されている人々の問題を解決しようと国際図書館連盟を通じて呼びかけてから15年が経ち、今ではDAISYは50カ国で視覚障害者と学習障害者に欠かせない情報アクセスツールになっている。日本においては、DAISYの精神障害・発達障害・弱視への応用研究に平行して10年越しで取り組んできた著作権法改正は、すべての読むことに障害がある人がDAISYで読書する権利を認める画期的な改正として決着し、2010年1月1日より施行された。電子出版の本格的普及を目前に控え、読むことに障害がある人々のニーズに応えるアクセシブルな電子出版の標準規格としてのDAISY規格(ANSI/NISO Z39.86-2005)の教科書・教材をはじめとする電子出版物が出版社や図書館から普通に手に入る「出版のユニバーサルデザイン化」が焦眉の課題である。
 国内外におけるDAISYの研究開発と普及に、更に微力を尽くしたい。