〔研究所情報〕
新しくなった発達障害情報センター
情報共有システムについて
研究所 発達障害情報センター


 発達障害情報センター(以下当センター)が国立障害者リハビリテーションセンター(以下国リハ)に移管されてから1年4カ月が経過しました。これまでも国リハニュースを通じて当センターの紹介を行ってまいりましたが、今回は、本年1月20日にリニューアル公開したウェブサイト(https://www.rehab.go.jp/ddis/)とその基盤となる情報共有システムについてご紹介いたします。


発達障害情報センターの使命と情報共有システム構築の目的

 発達障害情報センターの使命は、発達障害に関する最新かつ信頼できる情報を収集・分析・蓄積し、広く普及啓発活動を行うとともに、発達障害者支援に関するニーズや新しい支援手法等について調査、研究することにあります。情報提供の対象は、発達障害当事者とそのご家族、発達障害を専門とする支援者、発達障害を専門としない支援者、一般国民と多種多様であり、乳幼児期から成人まですべてのライフステージにおける情報提供が求められています。また、関連する分野は保健、福祉、療育、教育、医療、労働など多岐にわたります。さらに、啓発活動のみならず、調査・研究を推進するために、関連機関における情報の共有・利活用が求められています。こうした多様なニーズに答えるため、新たな情報共有システム(以下新システム)を構築いたしました。

 従来のシステムはポータルサイトとして情報発信のみの機能でしたが、新システムでは情報発信のみならず情報共有の場を提供できるようにしたことが大きな特徴です。また、新システムを使ってリニューアルした一般公開用のウェブサイト(以下当サイト)では、より分かりやすくより使いやすい情報源となるよう、コンテンツを再編集、追加作成いたしました。本文の後に「新しいウェブサイトのご紹介」としてまとめた図(図1)を掲載していますので、ぜひご参照いただき、当サイトをご利用ください。


情報共有システムの機能的特徴

 情報の発信、提供、共有、利活用を支えている主な機能を紹介します。

   (1)  情報発信・提供
 当サイトでは、コンテンツ及びデータファイル(PDF等)を提供しています。掲載情報について、電子媒体としてはもちろん、紙媒体でも必要な時にすぐに利用してもらえるように、簡易に本文が印刷できる機能を提供しています。
(2)  情報共有・利活
 アンケート機能及び問い合わせ機能は、ウェブサイト閲覧者による入力を可能とする機能で、インターネットを介した情報収集が可能となります。また、新システムには、ユーザIDとパスワードを入力しないと入れない会員専用のウェブサイトを構築する機能があります。この機能を使用すると、関連支援機関や作業グループ間における情報共有や利活用が可能です。
(3)  アクセシビリティ
 アクセシビリティとは、ウェブサイトを利用する全ての人が、年齢や身体的制約、利用環境等に関係なく、提供されている情報に問題なくアクセスし、コンテンツや機能を利用できることを意味します。当サイトには、文字サイズ及び表示色の変更機能があり、変更した条件のままページを遷移したり印刷することができます。また、サイト上で提供しているアクセシビリティ支援ツールの使用により、コンテンツの音声読み上げやふりがな表記が可能となります。その他、サイトマップや全文検索機能を提供しています。
(4)  ユーザビリティ
 ユーザビリティとは、ユーザがその目的を効率よく達成できるためのウェブコンテンツの使いやすさや分かりやすさのことです。情報の受け手となる閲覧者が多種多様であるため、アクセスの入口を利用者別、ライフステージ別、カテゴリー別、検索(キーワードから入る)と複数提供しています。また、携帯電話からアクセスすることも可能です。更新情報を簡単にまとめて配信する機能(RSS配信)を利用いただくことで、タイムリーに情報を入手していただくことができます。

コンテンツの再編集

 当センターは、情報の発信、提供、共有、利活用にあたり、閲覧対象者別に次のようなコンセプトを持っています。

 ・当事者・家族が、情報を得て、安心して暮らせるようにすること

 ・支援者が、標準的な支援方法を知ることで落ち着いた対応ができるようにすること

 ・自治体関係者が、担当業務の垣根を越えて、発達障害に関する様々な制度や通知などを把握できるようにすること

 ・国民全体が、発達障害について正確な情報を知り、当事者・家族の訴えを正しく受け止め、互いに安心して生活できるようにすること

 ・海外在住者が、日本の支援制度などの最新情報を正しく知ることができること

 こうしたコンセプトに基づき、それぞれの対象者が効率よく有用な情報にたどりつけるよう、コンテンツを7つのカテゴリーに再編集しました。はじめの3つのカテゴリー(「発達障害に気づく」「こんなとき、どうする?」「発達障害を理解する」)では、発達障害に関する基礎情報を掲載しています。それぞれ、日常生活の中で障害特性に気づくこと、診断前支援を目的とした事例紹介、誤解のない障害への理解を目的とした情報を提供しています。続く2つのカテゴリー(「発達障害者を支える、さまざまな制度・施策」「日本の取り組み・世界の動き」)では、発達障害に関する制度の情報を提供しています。発達障害と付き合いながら生活していくため、制度や利用できる福祉サービスを紹介することを目的としています。「相談窓口の情報」では、発達障害の相談や支援を受けることができる相談窓口として、地域発達障害者支援のキーステーションとなる全国の発達障害者支援センターをご紹介しています。最後の「発達障害に関する資料」では、「すぐに探せて、手に出来る」発達障害の詳細情報を提供することを目的として、公的機関で作成されたガイドブック・マニュアル及び国の助成で行われた研究の成果物等のデータファイルを紹介しています。

 今回、カテゴリー分けを変えただけでなく、新しく支援者の方に向けたコンテンツも追加しております。ぜひ、ご活用ください。


当サイトのリニューアル後の状況と今後の展望

 当サイトでは、アクセスログ解析により、ウェブサイト閲覧者の傾向分析や効果分析等を行っています。当サイトには、平日1日あたり600~750のアクセスがあり、7,000~9,000ページを閲覧いただいています。閲覧元の解析結果から、日本全国からご覧いただいているだけでなく、世界各国から閲覧いただいていることが分かりました。より広い視点での情報提供が求められていると考えています。

 また、当サイト上でアンケート調査を実施しています。1月20日から3月16日までの間に111件の回答がありました。回答の約6割が当事者(もしくはその疑い)の方で、残りの4割は発達障害のことを知りたい方や支援者の方でした。アンケート集計結果から、当サイトの使いやすさ、分かりやすさ、信頼性等について、多くの方からご好評いただいていることが分かりました(図2)。また、「役立つ情報が見つかった」という嬉しいご意見とともに、「もっと事例を増やしてほしい」「講習や研修に参加したい」などの具体的な改善点やご希望もいただいております。

 今後、こうしたアクセス状況や皆様の貴重なご意見を参考にしながら、情報の質の向上、提供方法の改善、タイムリーな情報更新に努め、コンテンツの充実化を図りたいと考えています。さらに、研修・啓発用の動画配信等の機能の開発や、発達障害教育情報センターや全国の発達障害者支援センターと共同して支援ニーズの調査・情報収集を進めていくことで、より多くの方に有用な情報を提供していきたいと考えています。今後ともご支援のほど、お願いいたします。

  文責:小倉加恵子



図1.新しいウェブサイトのご紹介(広報パンフレットより)
(図1)新しいウェブサイトのご紹介(広報パンフレットより)



(図2)当サイトのウェブアンケート集計結果