〔平成22年度重点事項② 部門間連携事業〕
盲ろう者宿泊型生活訓練等
モデル事業について
 



 盲ろう者に特化した支援や訓練の方法が整備され、それを実践できる施設が存在することになれば、当事者にとってとても頼りになるのは容易に想像がつく。そのような思いの一端を具現化するために、国リハは平成22年度から新たに「盲ろう者宿泊型生活訓練等モデル事業」を開始した。
 このモデル事業の目的は、盲ろう者が基本的な生活技能等を新たに習得したり、これまでに修得した技能をより良くするための生活訓練等について、その支援内容、提供体制等を検討、検証することにあり、職業指導・開発、教育等への支援については今後の課題としている。具体的には、盲ろう者が当センターを生活拠点とし、24時間を通じて支援者が付くという集中的な生活訓練の実践により、相談から各訓練指導、退所後の支援調整などに必要な体制までの総合的な支援提供体制について検証するとともに、宿泊型の支援における支援のあり方や休日や夜間の支援のあり方について検証することである。加えてこれまでの経験に照らして、盲ベースとろうベースで類別した重度の盲ろう者への訓練方法についても再検証する。これらを総合して最終的に「生活訓練マニュアル」、「訓練指導者養成カリキュラム」を作成し、成果とすることを目論んでいる。
 モデル事業実施体制は、厚生労働省の中に、関係者で構成する「モデル事業運営協議会」を設置し、事業の企画・運営方針について協議の上決定し、これを受けて当センター内のモデル事業実施委員会が実質的な運営を進めることとなっている。本モデル事業の特徴は国リハ、盲ろう者協会、盲ろう者支援施設が共同して事業の運営にあたることにあり、当事者及び当事者団体が参画することで出色である。センター内では自立支援局を中心にして、学院(生活訓練マニュアル、訓練指導員養成カリキュラム作成等)、研究所(情報収集・提供、データ集約分析等)、病院(医学的データの管理等)がそれぞれ連携して事業遂行にあたることになっている。
 支援対象者は基本的な生活技能等の獲得又は改善が必要な盲ろう者である。本モデル事業の対象者数は全国に22,000名いる盲ろう者数に比べて極めて限定的であることから、当事者団体に諮りながら慎重かつ迅速に決定する手はずになっている。
 モデル事業実施期間は平成22年度と23年度の2か年であり、22年度では最初の6か月を受け入れ準備体制構築のための期間とし、後半6か月を生活訓練モデル事業の試行に充て、並行して事業自体の検証を進めることになっている。試行的生活訓練は、盲ろう者4名に対して2クール実施する。標準的な支援計画期間(1クール)は、国リハにおける自立支援法上の計画期間である3か月を基本単位とする。また、支援対象者の状況等に応じて訓練を継続できることとし、訓練継続は23年度上期まで可能(最長12か月間)とする。訓練実践は当センター内であり、宿泊支援は敷地内モデル住宅等を活用する。日中支援は障害者自立支援制度(通所訓練)をそのまま活用し、通訳・介助者の配置や休日支援、夜間等の宿泊支援分を当該モデル事業で対応することとしている。23年度では生活訓練モデル事業を6か月間継続するとともに、事業の検証を進め、得られたデータ並びに経験を集約分析することにより「生活訓練マニュアル」をまとめる。一方「訓練指導者養成カリキュラム」を確定することにより生活訓練指導員研修を実施する。

(中島八十一)


(図)モデル事業組織体制イメージ図