〔国際協力情報〕
JICAコロンビア地雷被災者を中心とした
総合リハビリテーション強化
プロジェクト研修員受入れ報告
管理部企画課


 本プロジェクトに関しては、すでに国リハニュースで当センター職員の派遣報告の記事を掲載していますが、コロンビアで実際に障害がある人々のケアを担当しているリハビリテーション専門家を2月中旬から約3週間、研修で受け入れましたので報告させていただきます。
 昨年の2月にコロンビアで本プロジェクトを指揮、運営する副大統領府やプロジェクトを実施する大学病院やNGOの幹部職員が来日研修を行い、日本におけるリハビリテーションや福祉サービスの概略について知識を深めました。今回は実践スタッフにより、具体的なリハ・福祉サービスを知っていただくことと、障害がある当事者の声を聞くことを主な目的としてプログラムを組みました。
 研修員は2つの分野のグループで、“視覚障害者の総合リハビリテーション”グループと“切断障害者の総合リハビリテーション”グループでした。 視覚障害リハグループは2名の研修員でプロジェクトの対象地域メデジン市とカリ市にある大学病院の作業療法士で視覚障害がある患者さんの訓練に従事しています。切断障害者グループは同じく2市にある大学病院とNGO、リハビリテーション委員会の医師、理学療法士ら4名です。
 研修員の来日に先立ち、当センターの岩谷総長、眼科の仲泊部長が現地の各施設の状況を把握していましたので、その情報を踏まえて当センターをはじめとして日本での研修で知ってもらいたい内容を3週間に組み込みました。2グループの共通の内容としては“リハビリテーション概論”、“日本の保健、福祉制度”などの講義の他、両上肢切断で視覚障害がある当事者のご協力を得て、研修員がご自宅を訪問し、実際の生活上の工夫を見せていただいたりお話しを伺うプログラム等を実施しました。
 本プロジェクトにおける視覚障害リハビリテーションの位置づけは、コロンビアでは地雷により目と上肢が損傷する人々がいるため、このような人々の支援をするということですが、現実には視覚障害そのもののケアが不足していて、視覚障害者のリハビリテーションを行う施設が少ない事、眼科医師が参加していない事などの 現状があります。一方で、視覚障害のリハが保険適用されている事や臨床心理士、作業療法士、ソーシャルワーカー、特別教育専門職、リハドクターなどの 専門職によりリハビリテーションプログラムが行われているといった側面もあります。各専門職の技術はしっかりしているので、個別の技術的な研修よりは、日本における視覚障害者のリハや福祉に関わる多様な機関や専門職、歩行訓練の専門職の養成、視覚障害がある当事者のグループ活動と当事者の声を聞く事を中心に、関西、関東の施設、病院を訪問しました。
 切断グループは義肢との関係が深いので、義肢装具製作部門、外部の製作所の訪問を行うとともに、救急からリハビリテーションを一貫して行う医療センター、在宅リハビリテーションサービス、地域の総合福祉サービスを実施している自治体、障害がある人々を多数雇用している事業所などを訪問しました。
 訪問先のスケジュールの関係もあり、これら沢山のプログラムをリハビリテーションの流れに沿って組むことが難しく、研修員が全体の流れを自分の中で整理しなくてはならなかったかと思いますが、各研修員が日本での研修で得たものから自分達の仕事に必要なものを応用してもらえればと思います。実際、今回の6名の研修員は非常に熱心で、日本でできるだけ多くの情報を得ようとする姿勢がありました。
 日本とコロンビアのそれぞれで異なる専門職がいる事、コロンビアでは各自治体の力が大きく、日本のように政府の政策が国内に行き渡る仕組みとは異なるといった事情もあるため、日本のやり方がそのまま使える訳ではありませんが、今後、日本からの専門家の派遣やコロンビアの専門家の日本での研修により、コロンビアで生かせる技術や考え方を掴んでもらいたいと思います。そしてプロジェクトは2つの地域で行っていますので、帰国後に6名の研修員が綿密に協力し合い、また研修員達と当センターが連絡を取り合い、日本での研修を次につなげて欲しいと思います。
 本プロジェクトは2008年から4年間で実施されますので、本年度は丁度中間年にあたります。これまでの現地での活動を確認し、残りの期間に行うべき活動を確定する必要があるため、当センター総長を現地に派遣する予定です。
 日本での滞在中、研修員の中には自分がコロンビアで行っている日本の武道を実際に体験したり、日本食を試したりする機会もあり、研修以外の面で多少でも日本を理解していただくことができたのではないかと思います。


(写真)研修から帰国後に集まった6名の研修員
研修から帰国後に集まった6名の研修員