〔病院情報〕
高次脳機能障害支援普及事業
「平成22年度第1回支援コーディネーター
全国会議」等の開催について
 


 平成22年6月29日(火曜日)に、高次脳機能障害支援普及事業「平成22年度第1回支援コーディネーター全国会議」、翌30日(水曜日)に、「平成22年度第1回高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」が、当センター学院6階大研修室において開催されましたので、ご報告いたします。
 29日開催の「支援コーディネーター全国会議」は、高次脳機能障害の支援拠点機関等の支援コーディネーターの職務の向上と情報交換を通じてサービスの均てん化を図ることを目的として開催されています。今回で3回目の開催となり、厚生労働省及び当センターから主催者側として3名、学識経験者2名、そして支援拠点機関等から支援コーディネーターとして77名、計82名の参加がありました。
 今回の会議も、例年通り午前と午後の2部構成で行われました。
 午前の部では、「小児高次脳機能障害調査の紹介」と「実績報告会」が行われました。
 まず、千葉県立リハビリテーションセンター太田令子地域連携部長から「小児高次脳機能障害調査」の紹介があり、小児期発症の高次脳機能障害の課題及び全国調査の必要性と調査方法について説明がありました。
 次に、大分県・島根県・長野県の支援コーディネーターから、実績報告として「支援ネットワーク構築の取り組み」の紹介がありました。この中では、各自治体の実情や抱えている問題点についての説明とともに、問題解決に対する取り組みや工夫についての報告がありました。
 午後の部では、「小児の高次脳機能障害」をテーマに、診断評価機能と具体的な教育現場の協働に必要な要素や条件、就学・復学に関する情報交換、制度に関する問題提起についてグループ討論会が行われ、グループで議論した結果の発表とともに、各自治体で実際に起きている事例についての発表がありました。このグループ討論会で各自治体が相互に情報を交換することによって、他の自治体での取り組みの特徴や工夫を参考にして今後のサービスの向上を図ることができるのではないかと思います。
 翌30日には、「平成22年度第1回高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」及び「第1回高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究」全体会議が開催されました。参加者は、厚生労働省及び国リハから連絡協議会役員として9名、各都道府県から連絡協議会委員等として61名、学識経験者14名、オブザーバー43名の合計127名でした。このうち、「高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」は、高次脳機能障害者に対する訓練方法及び社会復帰支援方法等の検証と事業の実施状況の分析、普及啓発方法等についての協議検討を目的に、支援普及事業が開始された平成18年度から開催されています。
 連絡協議会は、厚労省社会・援護局障害保健福祉部木倉部長と当センター岩谷総長の挨拶で始まり、木倉部長からは、「モデル事業を始めて今年で10年となり、今後も都道府県、拠点の病院等ネットワークの強化や新たな支援についても考えていきたい」とのお話がありました。
 次に、厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課高城課長補佐から、平成22年度の運営方針について説明がありました。その中で、普及啓発事業が今年度で5年目となり、拠点機関が全都道府県に指定されたこと、研修や地域生活支援事業における今年度の予算は例年どおり確保されたことが説明されました。このうち、普及啓発事業では、市町村に対する一般向けの研修を実施している都道府県、及び就労支援、生活支援、相談支援等の具体的なサービスの提供を行っている都道府県が各々半数程度とのことでした。また、高次脳機能障害の方への支援の際に活用可能な施策例として、精神保健福祉手帳の取得を挙げて、本人にとっては、障害福祉サービスの利用が可能となり、精神科通院にかかる自立支援医療の対象になり給付を受けることができること、年金の受給可能性も出てくる等のメリットがあること、これらの方を雇用している事業主にとっては、障害者雇用率の算定の対象にできる等のメリットがあるという説明がありました。
 続いて、当センター及び全国12ブロックから、平成21年度事業並びに平成22年度事業計画が報告されました。この中で、東京都からは、今年度から、医療・保健・福祉が連携した専門的なリハビリテーションを2カ所の医療機関で実施する新規のモデル事業について報告がありました。事業の内容は、医療機関を指定して、その医療機関が持っている高次脳機能障害者に対する専門的リハビリのノウハウを、地元の福祉機関や保健機関に伝授するという試みです。福祉機関や保健機関では、医学的ノウハウを欲しがっており、また医療機関では、患者が退院した後の地域でのリハビリ訓練の場を確保できるというメリットがあります。この事業については、今後、他の地域にも普及していくのでないかと感じられました。
 最後に、「第1回高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究」全体会議では、静岡英和学院大学白山准教授から分担研究について発表がありました。内容は高次脳機能障害者のご家族の介護の負担に関するもので、社会的な行動障害のある高次脳機能障害者のご家族は介護の負担感が増大し精神的な健康感が悪化する傾向が強い、という調査報告がありました。
 2日間にわたり事務局として関わりましたが、高次脳機能障害の方々の支援に関して、このような地域における事例や取り組みの状況等を聞きますと、あらためてその支援の難しさを感じると共に、新たな発想を持って、継続的に支援することの必要性を感じました。