〔特集〜地域の中の国リハセンター(1)〕
②秩父学園と所沢市との連携
〜発達障害を持つお子さんのスムーズな就学移行に向けて〜
秩父学園 齋藤新一

 

 秩父学園は所沢市にある重度の知的障害児入所施設です。所沢市近隣の就学前の自閉症領域のお子さんが週1回通園する通園部と発達診療所もあります。通園するお子さんの対応については、発達診療所で診察を受けて発達の評価をしてから療育計画をつくり、それに沿って支援をします。
 この秩父学園の通園部に、同じ所沢市内にある知的障害児通園施設所沢市立松原学園に通う自閉症領域のお子さんが通園していました。平成19年度まで両学園に通園するお子さんは、秩父学園と松原学園でそれぞれ別に作成された個別療育計画に基づいて療育支援が行われており、十分な連携が図れていませんでした。このような状態はお子さんやその保護者の混乱や不安を招きかねません。
 そこで秩父学園と松原学園は、お子さんのより良い発達支援を図るために
(1)両学園で統一した支援を行うために必要な共通の関係書類の作成
(2)秩父学園と松原学園で統一した療育支援の実践
(3)就学前療育情報を次の学校教育へ円滑に引き継ぐシステムづくり
 を目的に、平成20年度から22年度までの3ヶ年計画で連携事業を行ってきました。今日までの取り組み状況を報告します。

(1)必要な共通の関係書類の作成
 秩父学園、松原学園、所沢市こども支援課・学校教育課・教育センター、所沢市児童相談所の職員により2つの関係書類を平成20年度に作成し、平成21年度より両学園で共通の個別療育計画書をつくり支援を開始しました。

①共通情報シート関係書類
 これは、一人ひとりのお子さんの生育歴・医療情報・福祉制度利用・療育〈訓練〉結果・発達検査結果等16項目について記載し、誕生から学校教育、そして青年期の生活に継続して引き継げる本人情報シートや、個別療育計画を立案するために必要な情報を収集する「聴き取り用紙」などから成っています。

②個別療育計画関係書類
 これは、2つの療育機関が連携して統一した発達支援を行うために、双方で共通して使用する個別療育計画書等であり7種類から成っています。

(2)統一した療育支援の実践
①保護者・秩父学園・松原学園で共通情報シート関係書類をベースとして、双方の学園で共通に使用する個別療育計画書の立案・作成と実施です。
②職員の専門的スキル向上の取り組みとして、
・秩父学園と松原学園で、自閉症や療育支援に対する共通の認識や支援方法を共有し、統一した療育支援を行うために合同の勉強会の開催。
・松原学園のスタッフが、秩父学園で開催する現任研修(自閉症トレーニングセミナー)にセミナースタッフ及び受講生として参加しました。
③両学園で共通の個別療育計画による支援を行うのですが、先行して秩父学園で支援を開始しました。次に目標達成の支援方法等が確立したところで、松原学園も同じ方法で統一した支援を行いました。これは療育支援方法の違いによる、お子さんの混乱を防止するためです。
④秩父学園から松原学園へ週1回の定期巡回支援を行い、松原学園の職員に対する支援や助言、お子さんについての情報交換を行いました。また、年度の半期で両学園職員と保護者が集まって、個別支援計画の見直しのための話し合いを行いました。

視覚的コミュニケーション支援 秩父学園→松原学園


(3)就学前療育情報を次の学校教育へ円滑に引き継ぐシステムづくり
 松原学園と所沢特別支援学校では以前から連携していましたが、今回、これらの連携をベースにして、保護者、両学園職員、就学先特別支援学校関係者が参加する就学引継ぎ会議を行い、就学前療育情報を次の学校教育へより円滑に引き継ぐように努力しました。
 就学引き継ぎ会議で、保護者から家庭生活の状況報告や学校に望むことを話していただき、秩父学園や松原学園の職員からは、お子さんの特性、支援に有効な方法や避けるべき対応などの情報を口頭だけでなく文書化(サポートブックや情報提供用紙)したもので、就学先特別支援学校関係者に提供しました。就学先特別支援学校関係者はこれらの情報を参考に「個別の教育支援計画」を作成していくことになります。
 就学引継ぎ会議のシステムづくりには埼玉県教育局特別支援教育課の協力を得ながら進めました。
 終わりに、他機関・他職種との連携に於いては、互いの「役割や働きの違い」「業務や勤務条件の違い」「職場・職種による常識の違い」等様々な違いがあることを常に念頭に置くとともに、互いの違いを理解し、相手に対する配慮を言葉や態度に表して伝え、相手を尊重することが円滑な連携につながっていくものと考えます。