〔特集〜地域の中の国リハセンター(1)〕
③点字を学ぼう-所沢市立美原小学校4年生との交流-
理療教育・就労支援部 理療教育課 伊藤和之



1. はじめに
 本年9月30日、縁あって、所沢市立美原小学校の4年生86名を対象として、「点字を学ぼう」というタイトルの総合的な学習のお手伝いをしました。理療教育課の地域貢献の一つとして、有意義な交流ができましたので御紹介いたします。
2. 小学校4年生と点字
 小学4年生の国語科教科書には、点字に関する読み物と点字一覧表が掲載されています。点字表記には樹脂が使用されており、触り続けても潰れません。五十音、濁音、半濁音、数字、「カラマツノ■ハヤシヲ■スギテ」と、分かち書きまで紹介されています。
 子供たちは授業で目の不自由な人の文字として点字が考案されたことを学びます。夏休みには図書館やインターネット等で自主学習を重ね、その成果を同級生の前で発表していました。
 発表に使用された模造紙に「1825年」「ルイ・ブライユ」の文字を見まして、気を引き締めて子供たちに会わねばならないという思いを持ちました。
3. 当センター学院 視覚障害学科との連携
 点字の読み書きのあれこれを、与えられた80分で86名の子供たちに効果的に伝えるためには、信頼できる仲間が必要です。
 そこで、当センター学院視覚障害学科との連携を図り、指導員を目指す10名の学生の協力を得ました。小学生8名もしくは9名に一人の学生が張り付き、プログラムに沿って指導するグループ学習を採用しました。
 そして、点字はローマ字のように母音と子音の組合せで構成されること、点字器で書いて読む場合、表示される点字形は逆向き(線対称)になることなど、点字の構成は6個入りの卵パックに2色の卓球ボールを入れて説明することにしました。
 また、子供たちからの質問には、「英語や音楽の点字はどういうものですか」など、高度なものも含まれており、学生にとっても良い復習になると考えました。


(写真)卵パックと卓球ボールを活用した教具
卵パックと卓球ボールを活用した教具


4. 子供たちのエネルギーに圧倒されて
 当日は雨。昼休みの体育館は暗く感じました。
 しかし、一転。集合し、グループ活動を始めた子供たちの熱気は一瞬で静寂を破り、辺りには興奮のエネルギーが満ち溢れました。点字盤や点字タイプライターが、子供たちには初めて触れる魔法の筆記具に映るのでしょうか。机に向かう順番を決めるにも我先にと手を挙げ、1点打つごとに表情が変わっていきます。
 説明をする学生にも自然と熱が入り、和やかな中にも真剣なやりとりがなされました。
 音楽用の点字は、学生がピアノの音と説明用の教材を提示して、説明を行いました。教材は力作で、まじまじと見つめる4年生たちの姿に、視覚と聴覚に訴える手法の有効性を再認識しました。


(写真)体育館に勢揃いした美原小学校4年生
体育館に勢揃いした美原小学校4年生
 
(写真)点字の説明に奮闘する視覚障害学科の学生
点字の説明に奮闘する視覚障害学科の学生


5. 視覚障害者の文字手段は点字だけではない

 子供たちには、「視覚障害者=点字」という固定観念を持って体験を終えて欲しくありません。
 そこで、現在研究開発中である文字入力システムを紹介しました。キー入力や手書き入力すると即座に音声が出るシステムに、彼らの目が丸くなるのが印象的でした。
 最後に、私たちも見えなくなる可能性があること、理療教育在籍者が、死をも考える時間を乗り越え、難しい学業の末に職業人として家族の下に帰ることを伝えるとともに、皆の中からリハビリテーションを志す仲間がひとりでも多く現れてほしいというメッセージを送り、学習を終えました。
6. 4年生からの手紙
 後日、子供たちからの手紙が綴られた手紙集が届きました。深みは違えど、子供たちに「点字」が刻まれたことがわかり、安堵しました。
 本稿が掲載された「国リハニュース」が発行される頃には、私たちの「点字の手紙」が、小学校に届く予定です。子供たちの学びは続きます。
7. おわりに
 当センター理療教育課は、授業の一環として、外来の実技協力者(患者さん)を対象としたあん摩マッサージ指圧、鍼灸臨床実習を行っており、日常的に近隣地域の皆様の健康維持増進に貢献する努力を継続しております。今後も、東洋医学分野、中途視覚障害を有する方々の支援に関する情報提供など、広く地域の皆様に役に立つ取組みを行って参りたいと考えております。
 最後に、美原小学校倉林校長先生はじめ、第4学年主任関口先生、同校教員の皆様に厚くお礼申しあげますとともに、当センター病院河野氏、学院小林氏、松崎氏、野口氏、理療教育課江黒氏の協力がありましたことを付記します。


(写真)子供たちから届いた手紙集
子供たちから届いた手紙集