〔研究所情報〕
平成22年度
JICA補装具製作技術コース
研修実施報告
研究所 義肢装具技術研究部 三ツ本 敦子



 平成22年9月17日から12月2日までの約2カ月半の間、国際協力機構(JICA)の委託を受けて、研究所義肢装具技術研究部にて補装具製作技術コース研修が行われました。この研修は、日本における義肢装具の製作技術の伝達だけではなく、参加した各国の研修生らが指導的立場となり自国にて技術の普及活動を行うことを目的としています。
 今年度の研修生は、コロンビアで義肢装具製作会社を起業したニコラスさん、そしてガイアナのリハビリテーションセンターで義肢部門のリーダーであるコリンさん、最後にミャンマーの病院に勤めているピューコさんの3名でした。
 研修内容は、座学と実技に分かれています。座学では、基礎医学を始め、切断者のリハビリテーション、そして義肢装具の理論等の講義がありました。実技では、下腿義足・大腿義足について採型から完成までの製作手法を学び、義足ユーザーであるモデルさんのご協力のもと、コミュニケーションを図りながら製作した義足の適合を行いました。また、施設外研修として国際福祉機器展、日本義肢装具学会学術大会への参加や、小児療育センター、他県のリハビリテーション病院、義肢装具の部品メーカー、日本最大の義肢装具製作会社、義肢装具士養成校の施設見学も設けられました。
 今年参加した3名の研修生の印象としては、知識・技術共にレベルがとても高く、研修中は質問やディスカッションが絶えないほど熱心だったと思います。慣れない土地で、設備環境も異なる中、彼らは協調性を育み、研修が進むにつれてリラックスして臨むようになりました。母国語とは異なる英語での講義ではありましたが、皆臆することなく、自分の意見を述べ、知識を分け合い、助けが必要な時は手を貸しあうという風に、お互いを尊重しあう良い雰囲気の中で研修が進みました。JICA研修の様子は、義肢装具技術研究部のホームページ(http://www.rehab.go.jp/ri/hosougu/english.html)にも紹介しています。
 送別会では、「充実した研修内容だった」「指導者との距離が近く、丁寧に教えてもらって良かった」「帰国するのは嬉しいが、同時に寂しい気持ちもある」という感想を聞くことができ、お互い爽やかな気持ちで2ヶ月半の研修が終了しました。
 現在、コロンビアでは義肢装具士の育成だけでなく義肢装具の支給制度の確立も重要視されてきているとのことです。またガイアナでは人材確保と共に将来的には義肢装具の教育機関設立も必要になってくると聞きました。そして3カ国の中で最も資材不足が深刻であるミャンマーでは、更なる義肢装具の普及と限られた材料で製作する応用力が必要とされ、未だ義肢装具に関する情報を入手することさえも困難であるという問題を抱えています。今回の研修が、それぞれの国で義肢装具の教育や普及に有効に活用されるよう、ニコラスさん、コリンさん、ピューコさん、今後のご活躍をお祈りします。
 最後に、この研修にご協力いただいた外来講師の先生方、施設見学でお世話になった方々をはじめ、この研修にご協力いただいた多くの方々へ心より感謝いたします。


(写真)仮合わせ中のニコラスさん   (写真)モデル修正中のコリンさん
仮合わせ中のニコラスさん   モデル修正中のコリンさん
     
(写真)義足のチェックを受けているピューコさん   (写真)ソケットの製作を行っている様子
義足のチェックを受けている
ピューコさん
  ソケットの製作を行っている
様子