〔研究所情報〕
第5回 認知症のある人の
福祉機器シンポジウム開催報告
研究所 福祉機器開発部



 昨年、12月5日(日曜日)に、センター講堂にて、研究所主催による長寿科学振興財団補助事業研究成果報告会「第5回認知症のある人の福祉機器シンポジウム」を開催しました。会場にはおよそ80名の参加がありました。
 認知症のある人の福祉機器は国内でほとんど知られていない状況でしたが、この5年間に開発が進み、ケアの現場での機器活用の有効性も確かめられるようになりました。今回のシンポジウムでは、これまでの認知症のある人の福祉機器開発の足跡をふり返り、将来を見据えて新たなスタートを切るための指針を模索しました。
 まず第1部では、国内の高齢化の状況と、認知症になっても安心して暮らせる地域を構築するという目標を設定し、現在開催されている緊急プロジェクトについて、堀部賢太郎氏(厚生労働省老健局高齢者支援課認知症対策専門官)から講演していただきました。続いて研究の立場より、山内繁氏(早稲田大学研究推進部参与)から認知症のある人のための福祉機器開発における倫理審査について、その原理と研究執行上の制限をお話いただき、科学性を担保した研究デザインについて講演をいただきました。その後、国立障害者リハビリテーションセンター研究所・井上(福祉機器開発部長)より、軽度認知症のある方の自立支援手法の研究概要を報告し、臨床評価の結果を紹介しました。
 第2部では、4名の方から現場での取り組みを紹介していただきました。伊藤光世さん(若葉林あんしんすこやかセンター)は、在宅の認知症者の方へ服薬支援機器を紹介し、使ってもらううちに、服薬が嬉しい話題となって薬の説明や契約が受け入れやすくなったことを、森本正治さん(エーザイ株式会社)は、服薬支援機器の普及開発を通じて、服薬支援だけでなく緊急時対応などの見守りを視野に入れた、多職種とご近所が連携するまちづくりについて報告されました。渡部幸一さん(株式会社生活科学運営)は、高齢者福祉施設の職員として、軽度認知症者の自立を促す福祉機器の導入が、職員やご家族の介護負担を軽減するだろうと期待していると報告され、大中慎一さん(日本電気株式会社)は、高齢者を気づかう気持ちをプログラムに入れることで(カスタマイズすることで)、家族の思いが入った存在としてロボットが位置付けられるだろうというお話をしてくださりました。その後会場の方とのディスカッションを行いました。
 本館1階にて認知症のある人の福祉機器展示を開催し、PaPeRoのデモンストレーションと説明、そのほかの福祉機器の説明も行い、大勢の方に実際に触れていただきました。


(写真)シンポジウムの様子   (写真)本館一階 認知症のある人の福祉機器展示