〔病院情報〕
病院紹介シリーズ
「リハビリテーション部 理学療法部門」

 

 当院でリハビリテーションを受ける方の障害として代表的なものに脊髄損傷による対麻痺、四肢麻痺があります。これらの麻痺には完全麻痺と不全麻痺という分類があり、完全麻痺を呈する方は移動する際に車いすの利用が不可欠となります。また障害の特性上、一般的な車いすでは日常の使用にさまざまな支障が出てしまうため、それぞれの患者さまに合わせてのオーダーメイドと適切な調整が必要です。日常生活用の車いすに関するこれらのさまざまな対応は、当院では理学療法士が中心となって行っています。具体的な対応内容には、新規作製時における助言および採寸、新規車いす完成時および使用中の問題発生時に実施する適合評価および調整、などがあります。
  車いすに要求される機能は数多くありますが、大きくは以下の3点にまとめられます。
@ 坐位の安定性(安楽な坐位の保持)
A 生活上の動作の行いやすさ
B 移動手段としての運動性能(走行性、操作性など)
 これらの基本的な考え方をおさえた上で、随時必要な対応を実施します。
 新規作製時においては、患者さまの障害の程度や身体的な特性などを考慮し、それぞれの患者さまに適合した車いすとなるよう、助言および採寸を行います。たとえば胸髄・腰髄損傷の方の場合は運動性能重視、高位頸髄損傷の方であれば安定した坐位保持を最優先といったように、まずは上記の要求される機能を考慮しながら車いすのタイプを選定します(車いすのタイプは、電動式−手動式、自走用−介助用、背もたれ固定式−リクライニング・チルティング式、など非常に多種・多様です)。その後、生活場所の条件や動作方法の特徴などから、各部の形状や必要な部品について検討すると同時に、身長・体重といった身体特性をもとに各部の寸法を決めていき、作製へとつなげていきます。
 新規車いすの完成時においては、実際に患者さまに乗車していただいて姿勢や操作および生活動作の遂行について評価します。その中で、発注どおりに作製されているか、使用にあたり危険や生活上の支障はないかなどを確認し、必要があれば各パーツを調整します。また、使用中に何らかの問題が発生することもあります。たとえば、褥創の発生、体調の変化や外傷による坐位姿勢の悪化、居住環境の変化による動作自立度の低下などがよく見受けられます。このような問題に対し、車いすの再適合をはかることで問題を解消できる場合もあるため、必要時には調整と評価をくり返し実施しています。
 ひとむかし前までの車いすは、座面と背中部分のシート色に若干の選択肢があるのみで、外見的には同じようなものばかりでした。しかし、最近はデザイン的に優れた新しい商品が多く開発され、また形状や色などのオプションが多彩となり、おしゃれの一部として捉えられるようなものも増えてきています。特に若い方はこういった外見的な要素を重視される方が多く、楽しみながら車種の選定をされている光景を見ると、こういった選択肢の拡がりはとても好ましいことであると感じます。また、機能的にも年々新しいものが開発されており、QOLの向上が期待できるような商品も増えてきています。患者さまに最適な車いすを使っていただき、より充実した生活を送っていただけるよう、今後も情報収集と知識の蓄積を心がけていきます。
 

(写真)車いす使用における助言や採寸の様子