〔国際協力情報〕
コロンビア出張報告
病院 健康増進センター長 飛松好子


 2月20日より3月7日までコロンビアに出張した。目的はJICAの「コロンビア地雷被災者を中心とした障害者リハビリテーション強化」プロジェクトに対する協力である。このプロジェクトは2008年に始められ、2012年6月までの4年間続けられる。国立障害者リハビリテーションセンターが日本側の協力機関となっており、これまで岩谷 力前総長が関わってきたものである。

 センターの関わりとして、プロジェクトのいくつかの獲得目標の内、1.機能回復リハビリテーションの技術の改善、2.総合リハビリテーションに必要な「リハビリテーション総合実施計画票」や「診察手順書の整備」を目的とする。 このたびの出張では、現地コロンビア側の進捗状況の視察とアドバイス、リハビリテーションチームアプローチに関する講演を2箇所で行うことであった。

  コロンビアの人たちは大変熱心で、物事の筋道を立て、計画を文書化しないと動かない。4箇所の施設を廻ったが、皆、「リハビリテーション総合実施計画票」を作るのに夢中になっている。しかしよくよく聞くといったい何のためにそれが必要なのかは今一つわかっていないようであった。何処でも討論の時間がたくさん設けられていたのだが、それでも足りないほどにいろいろな質問が飛んで来た。私は知りうる限りの日本の現状を伝えた。保険制度や、障害者認定制度、入院期間、区分された社会階層など、日本とは異なることだらけで、日本の方式をそのまま当てはめるわけにはいかないが、しかし、入院期間一つとっても日本の期間が理想的であるわけではなく、米国を見ても短い入院期間で、在宅に戻している。コロンビアにはコロンビアのやり方があるはずで、後は当事者に模索してもらう以外ない。しかし最終的には貧困こそが全ての根本にあるとも感じた。

  仕事柄たくさんの国に行ったが、何処の国に行っても、市場、スーパーマーケット、博物館に行くことにしている。メデジンの町で、市場に行ったが、警官2名、JICA現地職員、そのお手伝いさんが同行したのには驚いた。もっとも私のようなふらりと来た日本人おばさんが誘拐されるはずもなく、犯罪に巻き込まれるべくもなく、一緒の警官の方も記念写真を撮ったり、ともに食事をしたりとリラックスムードであった。最初に行ったJICA事務所で、いかにコロンビアという国が危ないか、だから勝手に外に出てはいけないよとビデオで説明されたのだが、何処の国にでもあるようなことばかりであった。私が「うん、わかった。怖いんだね。」というと、JICAは実に満足げであったが、「じゃあ、私、帰るわ。」というと慌てふためいて引き留めにかかった。外では、屋台がフルーツを売り、出勤前のサラリーマンがカフェで食事をとっている。

 庶民生活を知らずして海外協力はない。私も一緒に食事をしながら、身振り手振りで個人レベルの海外協力をしてきた。


メデジン市内 メデジン市内、庶民居住区。我々の年代には子供の頃を思い出させる懐かしい雰囲気。安全管理上、カメラはさっと構えてさっと撮る。一緒にいる警官が一瞬緊張して周囲を警戒するのが伝わってくる。
   
脊髄損傷者のレントゲン写真 バジェ大学病院で見た脊髄損傷者のレントゲン写真。白い異物は弾丸。その日見た脊髄損傷者は3人とも暴力による銃撃が原因だった。医師によれば、殆どの脊髄損傷は銃弾によるものだという。また貧困層に多い。