〔病院情報〕
高次脳機能障害支援普及事業「平成23年度第1回支援コーディネーター全国会議」等の開催について
 


 平成23年7月5日(火)に、高次脳機能障害支援普及事業「平成23年度第1回支援コーディネーター全国会議」、翌6日(水)に、「平成23年度第1回高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」が、当センター学院6階大研修室において開催されましたので、ご報告いたします。
 5日開催の「支援コーディネーター全国会議」は、高次脳機能障害の支援拠点機関等の支援コーディネーターの職務の向上と情報交換を通じてサービス提供体制の均てん化を図ることを目的として開催されています。今回で5回目の開催となり、厚生労働省及び当センターから主催者側として4名、学識経験者4名、そして支援拠点機関等から支援コーディネーターとして86名、当事者団体から1名計95名の参加がありました。
 今回の会議も、例年通り午前と午後の2部構成で行われました。
 午前の部では、「高次脳機能障害者支援の動向」「小児高次脳機能障害実態調査中間報告」と「実績報告会」が行われました。
 まず、当センター中島学院長から「高次脳機能障害者支援の動向」として、精神障害者福祉手帳制度実施要領の改正についての説明と、改正後の留意点についての解説がありました。次に千葉県千葉リハビリテーションセンターの太田令子高次脳機能障害センター長より、「小児高次脳機能障害実態調査」の中間報告が行われ、発症した年齢により現疾患の種類が異なり、10〜15歳では「脳血管系」の疾患の割合が多いのに対し、6歳未満は「その他」の疾患の割合が多いという調査結果が報告されました。
 次に、広島県・島根県・山口県の支援コーディネーターから、「高次脳機能障害の方の就労支援」について実績報告がありました。この報告の中で、本人の希望を叶えるため、本人の復職の支援と、家族・地域の力についての評価・支援体制を2つの県で分担して行ったことにより、地域生活が可能となったという2県の連携による成果に関する事例紹介がありました。
 午後の部では、グループ討論会が行われ、まず当センター自立訓練部水村生活訓練専門職による就労支援についての講演が行われ、自立訓練における訓練・支援の流れについての説明と、終了後に就職した利用者の事例紹介等がありました。
 その後、「はたらくを支援するための資源と連携」をテーマに、グループ討議が行われ、グループで議論した結果の発表が行われました。この発表の中に各自治体での事例を用いた説明がありました。この討論と発表が、支援する側の情報収集や発想の転換になり、各支援機関やコーディネーターが現在抱えている問題の解決や、今後の支援計画等の作成に役立つと思われました。
 翌6日には、「平成23年度第1回高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」及び「第1回高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究」全体会議が開催されました。参加者は、厚生労働省及び国リハから連絡協議会委員として10名、各都道府県から連絡協議会委員等として74名、学識経験者13名、オブザーバー53名の合計150名でした。この「高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」は、支援普及事業が開始された平成18年度より開催され、全国の事業の実施状況に関する情報収集、情報交換及び高次脳機能障害者に対する支援手法等の向上を目的としております。
 連絡協議会は、厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課江浪課長補佐と当センター江藤総長の挨拶で始まり、江浪補佐からは、「支援普及事業は21年度からは全都道府県で実施され、支援拠点機関においては昨年6月に全都道府県に配置され、今後は支援拠点機関を中心に様々な支援の対策を進めていきたい」とのお話がありました。江藤総長からは、「平成23年10月には当センター内に高次脳機能障害情報・支援センター(仮称)が設置され、情報の収集・発信を充実したい」とのお話しがありました。
 次に、江浪補佐から平成23年度の運営方針等についての話がありました。「高次脳機能障害支援普及事業」とは、都道府県で障害者自立支援法に基づく地域生活支援事業であり、事業の内容は、支援拠点機関の設置、支援拠点機関への支援コーディネーターの配置、普及啓発です。23年度は、高次脳機能障害支援普及事業を従来どおり進めて行き、高次脳機能障害情報・支援センターの設置により情報収集、発信機能の強化に取り組むとの説明がありました。
 続いて、当センター、全国12ブロック及び分担研究者から、平成22年度事業並びに平成23年度事業計画が報告されました。この中の北陸ブロックの報告の中で、3県がブロック会議を開き、情報交換をしてそれぞれの県の優れたところを取り入れるというのが特徴的でした。富山県では、小児の高次脳機能障害について積極的に啓発を行い、就労支援ネットワーク会議を立ち上げ、医療機関から次の施設や自宅に戻るときまでのネットワークをつくるために、県内14施設等が参加し支援のためのパス(紹介状のようなもの)を作成中です。石川県では、家族支援、本人支援のために生活支援教室を毎週行っています。福井県では、神経生理学的な検査の県内における標準化を目指し、検査用具のレンタルを行っております。これらの北陸地域における活動は、今後全国にも浸透するのでないかと思われます。
 最後に、質疑応答の中で福島県の委員の方より、東日本大震災により役場機能の移転や福祉施設の人員不足となり、高次脳機能障害の方は、避難所での集団生活が非常に難しかったとのお話しがあり、被災地で勤務される方々の苦労を痛感しました。
 2日間にわたる会議を通じて、高次脳機能障害の方々の支援は、モデル事業からの11年が経過し、様々な研究・調査・分析、支援拠点機関等の設置及び各自治体における画期的な取組により大幅に躍進したと感じるとともに、今後も継続的に支援することの必要性を感じました。



写真は全国連絡協議会の風景
写真は全国連絡協議会の風景