第12回  国際障害統計に関する
国連ワシントングループ会議
障害福祉研究部主任研究官 北村弥生

 2012年10月22日から25日まで、タイ(バンコク)の国連会議場で行われた障害統計に関する国連ワシントングループ(以下、WG)について報告します。2002年からはじまった障害統計に関する国連ワシントングループは、すでに、2006年に国勢調査で使うことを目標とした6つの短い質問セットを開発しました。「2010年ラウンド人口・住宅センサスのための原則および勧告」では、「障害に関する事項(障害の状態)」を国勢調査に入れるべきとされ、その具体例として、この短い質問セットは紹介されました。設問だけでなく、4つの選択肢((1)いいえ、苦労はありません、(2)はい、多少苦労します、(3)はい、とても苦労します、および(4)全く出来ません)と、(3)と(4)を「障害」と集計することも紹介されています。
 日本でも「生活のしづらさなどにかんする調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(2011年)の対象者を例示するのに、短い質問セットは使用されました。国勢調査で使うには設問数を少なくしなければいけないために、短い質問セットはICFの「心身機能・身体構造」に対応することを意識して開発されましたが、精神・認知領域は含まれていませんでした。また、活動・参加・環境に対して行う設問を欠いているため、続いて、拡張質問セットが開発され、2010年には実用版が作られました。ただし、活動・参加・環境に関して国際比較に耐える設問を既成の調査から見つけることは難航しています。各国の国勢調査や全国調査で2つの設問セットを採用した結果から、設問の妥当性、集計方法、翻訳や知的障害者向けの言い換えなどに、新たな課題が紹介されました。さらに、子どもと環境に関する設問についてユニセフの協力を得て、議論が続いています。
 第12回会議への参加は、32カ国(アフリカ・中東から7カ国、アジア・太平洋から9カ国、ヨーロッパから8カ国、北・南アメリカから3カ国)、5組織から44名でした。年次大会では、加入国に対して障害統計に関する年次報告(カントリーレポートと呼ばれています)の提出を参加国だけでなく不参加国にも求めています。回答42カ国の内訳は、アフリカ・中東から9カ国、アジア・太平洋から12カ国、ヨーロッパから14カ国、北・南アメリカから7カ国でした。その結果、短い質問セットを直近の国勢調査において含めた国は11カ国で、次回の国勢調査で含める可能性を回答したのは32カ国でした。2009年には21カ国だったのと比べると増加は顕著です。国勢調査だけでなく、全国調査などで過去にWGの質問を含めたことのある国は22カ国でした。国勢調査に短い質問セットを含めなかった理由としては、「障害は別の情報(業績記録、確立された調査、法規)で明示されている」8各国、「近い将来、使われる」7カ国、「WGの短 い質問セットに類似した質問を使用してきた」6カ国、「人口国勢調査では障害について質問しない」5カ国が上位でした。「障害者」の比率は、短い質問セットを国勢調査に使用した国では4%から10%で、全国調査(全数調査ではない)に使用した国では5%から17%であったと報告されました。
 今回は、当事者としてIDA(International Disability Alliance)から車いす利用者が参加しましたが、主催者に財源がないことから介助者費用は自己負担でした。アクセシブルな移動手段の準備には至らずに、タクシーのトランクに車いすを挟んではみ出したまま移動していました。各国の代表からも「会議への関心はあっても経済的な理由から毎年参加できないこと」も聞かれました。一方、初めて集合写真を撮影する時間がプログラムに設定され(図1)、過去数年のように会議終了時間が予定を大きく超えることはなく、10年来の旧知を含む会議は和やかな雰囲気で進行しました。2日目の朝は「国連の日」のイベントに出会った反面、帰路に流しのタクシーを見つけられないうちに夕立に会い、素朴なスクーターのタクシーを体験することができました(図2)。

図1 参加者集合写真(初日)   図2  国際会議場からの帰りにホテルまで利用した移動手段
図1 参加者集合写真(初日)   図2  国際会議場からの帰りにホテルまで
利用した移動手段