研究所では、新しく設置される分子病態研究室や福祉機器の臨床評価研究室の体制を整備するとともに、以下に示す中期目標達成に向けて研究を実施します。
1 リハビリテーション技術・福祉機器の研究開発
(1)医療から福祉までの臨床、現場を有する特性を活かした研究課題(重点課題)
- 脊髄損傷者の歩行機能に対するニューロリハビリテーションに関する研究
歩行の阻害要因としての痙縮(不随意運動)への介入とその効果検証を歩行ニューロリハビリテーションの中心に据え、動物実験を含めた基礎研究およびヒト訓練実験などの応用研究を行います。
- 非侵襲脳機能計測法を用いたブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)に関する研究
視覚刺激による脳波信号を用いた環境制御装置について、病院や患者の居宅等における実証評価を中心とした研究を行います。また、BMIに用いる脳波測定用に開発した電極について、実用化に向けて臨床評価データを蓄積します。
- 視覚障害の遺伝子診断技術及びその臨床応用に関する研究開発
我々が見いだした日本人網膜色素変性症に特有なEYS遺伝子の変異について大規模なスクリーニングを続けると同時に、先天性視覚障害者の遺伝子診断や変異遺伝子の機能解析を目的として、体細胞を網膜細胞に変換する新技術の開発を進めます。
- 障害者の防災対策とまちづくりの総合的な推進のための研究
所沢市などのモデル自治体における障害者の災害時個人避難計画の策定事例集を作成するための準備を進めます。
- 認知症者の自立生活を支援する情報支援機器の適合手法の研究
軽度認知障害から、軽度、中等度の認知症者を対象に、自立生活の基本となる一日の予定等を知らせる情報支援機器について、重症度別の適合手法を開発します。
- 吃音に関する臨床研究
発話の聴覚帰還制御特性を測定し、吃音の有無、脳機能との関連を調べます。また、発話速度を視覚的にフィードバックする装置を使用した訓練を行い、吃音への効果を調べます。
- 障害者スポーツ・運動用装具等の開発、普及
ゴールボールにおける外傷予防用プロテクターの開発、アイススレッジホッケーのバケットの製作方法並びに評価方法の開発を行います。
(2)産学官や地方公共団体の総合リハビリテーションセンター等研究機関との有機的連携による共同研究、研究交流の促進
- 障害者ライフモデルルームなどを活用した情報発信・情報共有による支援機器等の研究・開発・実用化・普及の促進
展示・デモ・体験等を通じて、障害を持つ人の自立支援・介護支援に関連する技術・試作品・製品等の紹介・普及に努めます。また、「福祉工学カフェ」を通じて、話題提供の講演とフリーディスカッションを通じモノ作り側、ユーザ側、行政側との情報共有促進を図ります。
- 福祉機器適合支援リハセンターネットワークの構築
更生相談所が併設されている全国の拠点リハセンター間のネットワークを構築し、それぞれが有する福祉機器の適合に関する情報の共有や連携により、福祉機器の供給に関する課題を解決する体制を整えます。
(3)福祉機器の評価・認証機能の強化、国際基準の策定支援
- 高度先端福祉機器の臨床評価機能の強化
ロボティックベッドについては、最終試作機の模擬環境・実環境評価を実施し、安全性・ユーザビリティが向上したことを実験的に確認します。また、電動車いす片流れ防止システムについては、臨床評価実験を発展させ、実環境における長期評価試験のプロトコ
ルを策定します。
- 座位保持装置の強度及び温湿度特性に関する国際規格(ISO)の策定に向けた研究成果の発信
座位保持装置の強度(ISO16840-3)の改定に向けて製品規格としての日本案の提案、車椅子クッションの高湿度機能試験(ISO16840-11)の国際規格への対応、キャスターアップ試験(ISO7176-8)の提案を行ないます。
- 福祉用具の用語と分類に関する国際規格の改訂
国際標準化機構(ISO)の第173専門委員会(TC173)の第2分科委員会(SC2)ならびに第12作業部会(WG12)に参画し、諸外国の専門家らと協力しつつ、福祉用具の用語と分類の国際規格(ISO 9999)の改訂作業を推進します。
2 リハビリテーションに関する企画・立案
(1)国の政策企画立案への協力
- 支援機器の臨床評価に関する研究
「支援機器倫理指針」と「臨床研究マニュアル」の最終案を策定します。
- 障害関係分野における今後の研究の方向性に関する研究
厚生労働省が今後重点的に推進すべき障害研究分野について、中長期的な達成目標の策定に向けた課題や論点の整理を行い、具体的な目標設定並びに障害福祉研究の基盤となるエビデンス集積のための研究基盤の整備を提言します。