〔特集②〕
高次脳機能障害及び関連事業
 
学院長 中島 八十一

 昨年度は、国リハセンター内各部門で高次脳機能障害支援普及事業及び関連事業を推進しました。病院では専門外来の充実を図るとともに高次脳機能評価入院を継続し、自立支援局では自立訓練(生活訓練)において実践を通じて評価・訓練を体系化しました。また、研究所では認知障害者向けの福祉機器開発を進める一方で、行政的課題解決にも対処し、学院では都道府県・指定都市の行政職及び関係職種の指導者向けの研修事業を実施しました。
 対外的には、国リハは全国高次脳機能障害支援拠点センターとして、全国10地域のブロックを代表する支援拠点機関と連携し、ブロック会議を通じて全国69か所の支援拠点機関の指導・助言に当たりました。また、都道府県ならびに支援拠点機関等の関係者、専門職員、学識経験者等で構成する高次脳機能障害支援拠普及全国連絡協議会および支援コーディネーター全国会議を2度開催することにより、事業の一層の推進と均てん化を図りました。
 さらに、平成23年度に設置された高次脳機能障害情報・支援センターでも高次脳機能障害に関し、様々な情報を収集・整理・発信し、諸機関に対する相談を実施するなど、中央拠点として総合的な支援を行う機能の整備を進めています。障害やサービスについてわかりやすく解説しウェブサイトで発信するとともに、支援拠点機関からの各種の相談を実施し情報の還元に努めています。
 平成25年度からは、高次脳機能障害に併存することの多い音声・言語機能障害(失語症)などについても、現場では併せて対応している実情に鑑み、「高次脳機能障害支援普及事業」から、「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」へと名称を変更します。これまで通りに年2回の支援拠点機関等連絡協議会、支援コーディネーター全国会議等の開催及び公開シンポジウムや研修事業を含む普及啓発活動を行うことにより、身近な地域でサービス利用が可能になるような取り組みを図ります。この取り組みは都道府県ごとだけでなく、ひとつの自治体の中での利便性の向上も視野に入ります。
 また、これまでの施策を通じてなお課題が残されている就学・就労支援について、引き続き課題解決に取り組みます。代表的な事項として、小学生から高校生にいたるまでの年齢層での就学が挙げられます。この年齢層での社会参加とは学校に戻ることに他なりません。これを研究課題として取り上げ、教育関連機関と連携しながら、支援拠点機関を相談に訪れた子供をどのようにしたら学校に結び付けることができるのか検討します。先の公開シンポジウムでは、特別支援教育に関する行政・学術機関から関係者を招聘し、支援体制構築の示唆を得ました。その道筋が整備されれば高次脳機能障害支援普及事業は広いライフステージにある障害者(児)に対応可能な事業になると考えられます。
 さらに年齢での広がりのみならず、種々の障害程度にある高次脳機能障害者に対応できる事業展開を図ります。これまでに一般就労可能な方々については関係諸機関の協力を得て地域ごとにそれを達成するための道筋は整備されてきました。福祉就労レベルの高次脳機能障害者の居場所の充実を図ることは、障害程度を広く設定するばかりでなく、都市部から離れた場所あるいは島嶼など自治体の中にあるサービス利用の不便の解消にもつながります。地域の支援者の高次脳機能障害への理解を深めるために、就労支援施設職員を対象とした研修会を開催する予定です。
 これまでに引き続き皆様のご助力をお願いするところです。