〔特集②〕
発達障害関連事業
 
発達障害情報・支援センター長 深津 玲子

 平成17年4月に「発達障害者支援法」が施行され、それまで既存の障害者福祉制度の谷間に置かれ、その気付きや対応が遅れがちであった自閉症・アスペルガー症候群、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを「発達障害」と総称して、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めました。また同年8月に「発達障害者支援の推進についての施策検討会報告書」が発表され、今後の施策の方向性として1.地域支援体制の確立、2.支援手法の開発、3.就労支援の推進、4.人材の育成、5.情報提供・普及啓発が重点事項として挙げられました。こういった背景のもとに、平成20年度に厚労省より発達障害情報センター(現発達障害情報・支援センター)が研究所に移管され、同年度より青年期発達障害者の地域生活移行への就労支援に関するモデル事業を開始しました。その後平成22年10月に研究所に脳機能系障害研究部発達障害研究室が新設され、またこれまで発達障害児支援に関する研修事業、療育等をおこなってきた秩父学園が同年に統合されました。平成24年度には、青年期発達障害者の地域生活移行への就労支援に関するモデル事業の知見を生かし、発達障害者就労支援普及・定着化事業を開始し、同年10月から自立支援局の就労移行支援事業において、発達障害者の受け入れを開始しました。またこれまで秩父学園で実施していた知的障害・発達障害関連研修も学院研修に一本化されました。
 こういった状況の下、平成25年度は発達障害児・者支援に関連して、6件の事業をおこないます。これらの事業は研究所発達障害情報・支援センター、自立支援局就労移行支援課および秩父学園、病院発達障害診療室等が部門間連携を行い実行します。また平成25年度には自立支援局就労移行支援課内に新たに発達障害発達障害支援室を開設し、また発達障害情報・支援センターは新たに開設される企画・情報部に移り、さらに発達障害関連の事業の拡充に努めます。事業6件については下記の通りです。なお4件が昨年度からの継続事業、2件が新規事業です。
  1. 発達障害者就労支援普及・定着化事業

  2.  昨年度から継続して、自立支援局において発達障害成人に対して就労移行支援と就労に向けて必要な生活面への支援を行い、23年度までのモデル事業において開発した就労移行支援モデルに基づいて支援事例を積み上げ、同モデルの有用性の検証を行う。
  3. 発達障害児及び家族包括支援事業(家族短期入所事業)

  4.  秩父学園は、発達障害における適応障害児も含め、地域で生活していくための発達支援やその家族も含めた療育支援の拠点となる障害児施設を目指していくため、昨年度に引き続き、専門的な支援を必要と判断する発達障害児とその家族を短期入所させ、評価、発達支援、家族に対する療育相談・勉強会、訪問支援等の包括的な支援を実施する。
  5. 発達障害児及び家族の地域生活支援モデル事業

  6.  秩父学園は、発達障害における適応障害児も含め、地域で生活していくための発達支援やその家族を含めた療育支援の拠点となる障害児施設を目指していくため、昨年度に引き続き、発達障害児及び家族包括支援事業(家族短期入所事業)やアウトリーチ活動等の実践による支援を通じた支援プログラムの開発や、発達障害児支援に関する関係機関との連絡調整の仕組みづくり等を整備し、全国へモデル を発信していく。
  7. 災害時における発達障害児・者支援の充実

  8.  昨年度に引き続き、発達障害情報・支援センターは東日本大震災の被災地3県(岩手、宮城、福島)および厚労省地域移行・障害児支援室と協力し、これまでの調査によるニーズを踏まえた障害福祉サービスが提供されるよう災害時支援方法の構築およびその普及を行う。
  9. 発達障害者の就労移行支援事業における効果的な支援手法の検証・普及

  10.  発達障害情報・支援センターにおいて、先駆的に発達障害者支援に取り組んでいる就労移行支援事業所の支援手法を調査・分析する。また、事業所とのネットワークを構築し、効果的な支援手法の共有化を図るとともに、課題、人材育成等について検討を行い、地域性を活かした支援手法を構築する。
  11. 発達障害児等デイサービス事業

  12.  発達障害児等が地域で生活していくための支援の一環として、秩父学園において、幼児期から18歳に達するまでの一貫した支援を行うため、既存の事業では補えない小学校高学年以上の発達障害児等を対象としたデイサービス事業を創設し、幼児期から切れ目ない支援を実施する。