〔特集①〕
国リハ病院の医療サービス
 

 免震構造の新病院建物が完成しました。職員が工夫した、障害のある方への配慮がうかがえる病院棟だと自負しています。もちろん、視覚、聴覚、肢体不自由をはじめ、様々な障害のある方々の会するところであり、すべての人々に満足していただけるわけではありませんが、そこは職員の対応というソフト面で補いたいと考えています。
 最新の機器も導入しました。これらすべてを利用して、医学的リハビリテーション、障害のある方への医療サービス、健康増進に貢献していきますので、よろしくお願いいたします。

○ リハビリテーション部門

 平成26年6月16日より新病院での診療・訓練がスタートしました。
 これまで当院のリハビリテーション部門は訓練前の受診や理学・作業療法は1階フロア、ロービジョンは同じ1階でも他の訓練部門とは離れた場所にありました。また言語聴覚療法と臨床心理は2階フロアにありました。義肢装具に関しては専用のスペースがなかったため補装具の製作、修理、修正等に関しては理学療法、作業療法の訓練室などでの作業となり利用者様にはご不自由をおかけしておりました。このように今までは利用される患者様方にはリハビリテーションを受けるための移動の多さ、場所のわかりにくさなどご不便をおかけしてまいりました。
 今回新病院棟の完成に伴いリハビリテーション部門が2階フロアに集約されました。1階からエレベーターで2階にあがりますと広い廊下が真っ直ぐに見渡せます。通常の病院では見られない程の廊下の広さに驚かれるかもしれません。この廊下は身体の不自由な方が歩行したり、車椅子や電動車椅子などの通行があることを前提に空間に余裕をもって作られています。
 この広い廊下の両側にリハビリテーションの各部門の訓練室が配置されています。(※リハビリテーション体育に関しては今までと同じく体育館での訓練となります。)
 そのため皆様が利用される場合、各訓練部門の移動は距離も短く、わかりやすいものとなっています。この利便性は外来患者様だけではなく、当然入院されている患者様も同様に、病棟から2階に移動するだけでほとんどの訓練が可能となります。
 また、この利便性は患者様方にとってだけのものではなく我々スタッフにとっても同じ空間にいることで患者様方の情報の伝達、移送など以前に比較して格段に横の情報伝達が密なものとなるものと考えられます。新たな場所で、新たな環境でこれまで以上に総合力を発揮して皆様方のお役にたてるようリハビリテーション部門一同努力してまいりたいと思います。
 以下各部門の抱負を述べてリハビリテーション部門の紹介とさせていただきます。

理学療法
 新病院棟においては移動したその日からそれまでと同じように理学療法が行えるように各部屋に合わせ機器のレイアウトを検討して移動し設置しました。支障なく新しい場所で理学療法を実施することが始まりですがリスク管理として転倒など事故が起こりやすい箇所がないかなどチェックすることも必要かと思います。
 病院棟も新しくなり理学療法スタッフも少しずつ入れ替わってきていますので今まで行ってきた理学療法内容を見直し"所謂国リハ方式"と言われるような新しい方式を作り上げ日々の訓練に生かせるようにし発信して行くことや新しい機器のデモンストレーションなどに参加することにより理学療法に生かせる情報を収集して行きたいと考えています。 まずは一日も早く理学療法を受ける方にもスタッフにも使いやすい部屋となるようにして行きたいと思います。

作業療法
 作業療法では、センターの中期目標の中でも高次脳機能障害者、頸髄損傷、上肢切断の先進的リハビリテーションの構築・充実に取り組んでおります。
 以上の障害の方はもちろんのこと作業療法に来られる多くの患者様は、日常生活の再獲得やQOLの向上が重要な課題の一つです。新病院棟ではADL訓練室の設備をこれまでよりも充実させ、自宅に近い環境で訓練や指導が行えるようにいたしました。特に浴室やトイレの設備に重点をおき、より適切な環境で動作練習を行えるようになりました。
 また、これまでは子供たちの訓練はADL室を使用しておりましたが、新病院棟には小児の訓練を行う共用訓練室が設けられ、子供たちがのびのびと訓練を行える環境が整いました。
 これからも子供さんから高齢の方まで皆様に、より安全で効果的な訓練を提供できるよう努力してまいります。

義肢装具療法
 義肢装具療法は、平成22年のリハビリテーション部新設の際に新しく体制が構築されました。病院で働く義肢装具士の役割は、義肢装具の製作・修理を通して、患者様の自立生活の支援・社会復帰への貢献にありますが、こんにちまでの国リハ義肢装具部門の数多の実績を踏まえて、義肢装具「療法」として、新たな出発地点に立つことになりました。
 今回の新病院棟では、病院の中に義肢装具士の部屋ができました。補装具の簡単な加工を行うことができる部屋です。
 この部屋は、理学療法や作業療法の訓練室とも至近の場所に設けられており、患者様へのサービス向上の観点を考えますと、とても良い環境になりました。訓練の前後で補装具を調整したり、患者様へ情報提供をしたりと、「義肢装具士がいる病院」だからこそできる細やかなサービスを、これからも提供してまいります。

リハビリテーション体育
 障害者スポーツは、ルールや用具を対象者に合わせることで、多くの方々が楽しみながら、機能の維持や向上を図るための有効なツールです。しかし、そのツールにはちょっとした工夫が必要となります。
 当リハビリテーション体育部門は、病気や怪我などにより、心身に障害を持つ方々や機能が低下した方々を対象としています。
 当部門での運動プログラムは、よく知られている障害者スポーツ種目から、個々人の状態に合わせた運動やレクリエーション、体操など、その運動特性を活かしながら、合わせて、そのツールに専門的な「工夫」を加え、皆様の積極的で生き生きとした社会生活の構築の支援を行います。

言語聴覚療法
 言語聴覚療法では医療サービスの基本として、ことばの機能の障害や発音・発話の障害、聴覚障害、さらに近年は嚥下障害など、いわゆる言語聴覚障害の対象となる領域において、できる限り多くの領域に対応することを目標としています。新病院棟となってもこの基本姿勢には変わりはありません。
 言語聴覚障害の対象領域は診療科においてはリハビリテーション科や神経内科などいわゆるリハビリテーション病院における領域以外にも小児科や耳鼻科などに関わる幅広いものです。そのため当院においても各科の外来あるいは入院からの依頼はもとより、言語新患外来、小児難聴外来、補聴外来、成人吃音外来などの専門外来とも連携し、これからも多くの言語聴覚障害のある方々にできる限りのサービスを提供するための体制を整え、その質を高めていきたいと考えています。

ロービジョン訓練
 ロービジョン訓練では、視覚に障害があり、日常生活や仕事上で困難を感じている方に、医師、視能訓練士、生活訓練専門職等が連携し、生活の質(QOL)の向上のための支援を行います。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層を対象にしています。就労継続や復職を目指した稼働年齢層への対応は最も緊急性が高く、迅速に職場の視環境を整えることが必要です。そこで、新病院ではロービジョン総合訓練室に就労先での拡大読書器やパソコン等の器機の配置を想定し、自由にレイアウトできるOAコーナーを導入しました。それにより環境設備について適切なアドバイスが可能となりました。また、就学前後の児童に対して、遠方視訓練室に窓を設けたことで、遠方の目標物を捉える単眼鏡訓練が可能となりました。今後も様々なニーズに幅広く対応できるよう、スタッフ一同頑張っていきたいと思います。

臨床心理
 臨床心理部門は新病院となってから心理検査室が2部屋増え、5部屋となったことから、旧病院棟では部屋の確保を他部門へ毎日のように依頼していた状況が解消されました。また、旧病院棟では北向きの検査室でしたが、新病院棟では南向きで、明るく、風通しのよい検査室に変わり、とても良い環境で臨床業務に励むことができるようになりました。
 臨床心理部門では、この新病院棟の設備を十分に生かしながら引き続き高次脳機能障害の患者様に対する支援やそのご家族様への支援の充実を図って行くとともに、その他、各診療科担当医の指示に応じて、患者様の心理的なフォローに努めてまいりたいと思います。