〔特集〕
高齢視覚障害者への訪問訓練について
自立支援局自立訓練部機能訓練課

  昨年9月から、所沢市及び周辺地域にお住いの、概ね65歳以上の視覚障害者に対して、ご自宅に訪問しての訓練サービスを開始しました。
 現在、所沢市、東村山市、小金井市、ふじみ市にお住いの60代から70代までの5名の女性の方に支援を行っています。
 高齢の方の場合、施設に通うことが移動手段や介助者の確保などにより難しかったり、寮に入っての訓練は、自宅を離れての生活を送ることに抵抗があるなど、ニーズがあってもなかなか必要なサービスが受けにくい状況があります。
 また、施設内での訓練は、ご自宅の環境と異なることから、ご自宅に戻ってからうまく訓練で獲得したことが生かせないことや、自宅環境の調整がしにくいことなどの課題がありますが、訪問訓練はご本人にもわかりやすく、訓練を受ける抵抗感も少なくなるとともに、状況に応じて自宅の環境調整をしやすいなどの利点があります。ただし、相談者の中には、ご自宅に外部の者が入ることに抵抗がある方もおられますので、ご本人のご意向を十分確認の上行わなくてはなりません。加えて、女性利用者の場合、同性の支援員でないと抵抗感があることが多いようです。
 支援ニーズとしては、プレックストーク、自宅周囲の歩行、お金の弁別がしやすい財布やコップに適量の液体を入れるための音声・振動機器、音声でものの名前がわかるタグ等の便利用具に関する情報等が高いようですが、デジタル機器の活用についても思ったよりも関心をお持ちの方が多いようです。プレックストークの訓練では、3名の方を集団で訓練しており、ボランティアの方も時々参加し、地域における支援者の知識向上を図ることができるといった効果も見られています。
 対象者の掘り起こしでは、当初はご本人も、見えにくさに対する不自由は感じているものの、長年そのような状況で生活を送ってきたため、「まあ、こんなものかしら。特に生活が送れないわけでもないし」という感じで、積極的なサービス利用ニーズがすぐに出てこないことも多々あります。まずは、どんな些細なことでも不便を感じていることを少しずつ聞き取りながら、こんな便利な用具がありますとか、こんな工夫をすることで解決できますなど、あまり、いわゆる「訓練」をしなくてはならないといった印象を与えず、気軽に取り組めることが多いことをお伝えしています。また、受給者証を市町村から出してもらう必要があるため、介護保険被保険者の場合、障害福祉サービス利用の必要性について、ご本人等からだけでは説明が難しいことから、職員が市役所に同行したり、事前説明を行ったりするなど、利用開始に向けたところから調整、支援を行っています。
 地域の支援センターや社会福祉協議会などの関係機関に対する広報も行っていますが、センター病院眼科と連携させていただき、外来患者で対象となるような方が受診した際、すぐに機能訓練課に連絡をいただき、こちらから出向いて、支援サービスの説明をするなどしています。
 訪問に係る移動時間が最大1時間半程度かかることによる非効率性等の課題もありますが、生活の質の向上、適度な運動などによる健康維持、向上などの効果とそれに伴う介護保険サービス利用量の軽減などができればと思っており、FIM、老研活動能力指標、PGCモラールスケール、生活活動の聞き取り等のアセスメントバッテリーを作成し、訓練の前後比較による効果測定を行うことで、このサービスの必要性や効率的、効果的実施等について、今後検討を行う予定です。
写真1:アクセル、ブレーキ操作力検査 写真2:CRT運転適性検査
写真2:CRT運転適性検査