〔特集〕 |
国立障害者リハビリテーションセンター第2期中期目標 〜障害者支援・研究・人材育成の先導的・総合的展開とその成果の蓄積と発信〜 |
センターは、昭和54年に、国立東京視力障害センター、国立身体障害センター、国立聴力言語障害センターの3施設を統合し、「国立身体障害者リハビリテーションセンター」として設置された。以来、障害者リハビリテーションを担う唯一の国立機関として、その役割を果たしてきた。 その活動の中で、障害を取り巻く環境に大きな変化がみられた。平成18年の障害者自立支援法の施行により、障害の種別に関わらず、福祉サービスを共通の制度の下で一元的に提供することとなり、センターの名称も平成20年10月に現在の「国立障害者リハビリテーションセンター」へと変更した。また、環境の変化を受けて平成20年から21年に、「国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会」でそのあり方についての議論が行われ、障害児・者の自立と社会参加及び生活の質の向上に一層取り組むよう提言されるとともに、国立更生援護機関の施設間で共通する機能を一元化し、統一的な方針の下で事業運営を実施する必要性が指摘された。 この指摘を踏まえ、平成22年4月に、更生訓練所、視力障害センター、重度障害者センター及び秩父学園を統合して自立支援局を設置した。 平成24年度末には塩原視力障害センターを廃止し、伊東重度障害者センターの統合への取組を進めるなど組織の見直しを図っている。また、平成22年度からは第1期目の中期目標を定めるなど、組織運営体制の整備にも努めてきた。 第1期中期目標の5年間をふり返ってみても、障害者リハビリテーションを取り巻く環境は大きく変化している。障害者の高年齢化や障害の重度・重複化、支援技術の高度化などにより利用者の障害状況や支援ニーズ等は多様化し、社会における障害に関する情報の重要性が指摘されている。さらに、平成23年3月に東日本大震災を経験し、障害者に対する防災対策の重要性も強く認識されるに至っている。また、法・制度的にも改正障害者基本法や障害者総合支援法などの制度・仕組みの見直しがあり、障害の範囲も変化してきている。平成26年2月には「障害者の権利に関する条約」が我が国で効力を発生し、障害施策は新たな局面を迎えている。一方、平成25年9月には、平成32年(2020年)の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が決まり、障害者スポーツ・運動への機運や障害者の健康への関心が高まってきている。 このような状況の中で、センターは国立の障害者リハビリテーションの中核機関として、「病院・自立支援局・研究所・学院という4つの組織が連携できる強みを一層活かし、障害の重度化や新たな障害への対応、運動・健康増進などといった時代の要請にも対応するなど、多様化するニーズに応えていくため、先導的かつ総合的取組を推進し、得られた成果・知見を蓄積し、広く社会に発信していく」ことを基本とする第2期中期目標を以下のとおり定める。 |
平成27年4月1日から平成32年3月31日までの5年間とする。 期間中、本目標と各部門の毎年度の運営方針、組織目標及び各職員の業績目標をこれまで以上に連動させる仕組みを構築し、年次ごとのPDCAサイクルが有効に機能する取組を実現し、目標達成に向け職員が一丸となって取り組むこととする。 |
1.リハビリテーション医療の提供 | |
障害者や障害になるおそれのある者を対象に良質なリハビリテーション医療等を提供する。 疾病に罹患した障害者の治療、医学的リハビリテーションのみならず、2次障害の予防、健康増進身体活動を促進する。臨床介入、臨床研究開発を通じて、先進的リハビリテーション医療の推進とその情報発信に努める。 (1) 先進的リハビリテーション医療の推進 脊髄損傷者、切断者、高次脳機能障害者、発達障害者、視覚障害者、聴覚言語障害者等に対するチームアプローチによる先進的リハビリテーション手法の開発及びサービス提供を行う。 (2) 安全で質の高い障害者医療・看護の提供 ① 障害特性に配慮した安全で質の高い障害者医療・看護を提供する。
② 地域の他の医療機関及び福祉サービスとの連携強化に努める。
① センター利用者に対し障害特性に応じた健康維持に関する情報提供・支援を実施する。
② センター外との施設とも連携し、障害者の健康増進サービスが広く提供される基盤構築に貢献する。
病院における臨床研究体制の整備や各部門との連携を図りつつ、臨床、リハビリテーシ ョン医療実施の蓄積等に基づき、それぞれの障害特性に応じた臨床研究を実施し、その成果を診断治療・予防・支援法等の開発につなげる。 (5) 臨床サービス、臨床研究開発の情報発信 障害者医療やリハビリテーション手法の開発・実践、障害者の健康増進や運動支援についての取組を国内外の学会、シンポジウム等で広く情報発信する。 (6) 人材の育成 研修生、実習生等を受け入れ、人材育成に貢献する。外国人研修生の受け入れ等も推進し、国際的な人材育成にも貢献する。 (7) 病床利用率等の向上 病院の利用に関する指標を検討し、利用の向上に努める。 | |
2.障害福祉サービスの提供 | |
国が設置する障害児・者支援施設として取組むべき重度障害者などに対するサービスの充実を図るため、伊東重度障害者センターを統合するとともに、障害福祉サービスの体系化や効率化を促進し、より一層の質の向上を目指す。利用者本位のサービス提供を促進するため、自立支援局内全施設の一体的事業運営を推進するとともに、他部門との連携の下、医療から地域移行まで一貫したサービス提供を行い、成果を広く発信する。 (1) 自立支援局内全施設の一体的事業運営 ① 利用者にとって分かりやすく利用しやすいサービスの提供
障害の特性に応じて、利用者にとって分かりやすく利用しやすい障害福祉サービスの提供を促進する。 ② 医療から訓練、社会参加の達成まで一貫した障害福祉サービスの提供
病院との連携を強化することにより、入院患者等の障害福祉サービスへの迅速かつ円滑な移行を図る。 国立職業リハビリテーションセンターとの連携を一層強化し障害者の就労を促進する。 ③ 自立支援局内全施設の一体的な運営の充実
自立支援局内各施設の運営状況を共有し、新たな課題へ協同して取り組むとともに、利用定員や組織定員等の管理を一体的に行うことにより、運営の充実を図る。 ④ 実情に即した利用定員の見直し
利用者の需要動向等を踏まえ、就労移行支援や秩父学園等の利用定員について、必要な見直しを行う。 ① サービス内容の見直し
これまで実施してきたサービスの実績、効果等を検証するとともに、地域における障害福祉サービスの動向を考慮し、国立施設にふさわしいサービスや先進的なサービスの実施に向け必要な見直しを行う。 ② サービス提供データの集積・分析と情報発信
サービス提供データの集積を継続し、各種サービスの質の向上に向け分析・検討を行い、得られたエビデンスに基づきサービスを提供するとともに、センター内外の研修会や業績発表会等を通じて広く情報を発信する。 ③ 標準的なサービスの体系化と効率化
各種のサービスにおいて、評価方法や訓練プログラムの開発・充実を図り、マニュアルとして整備することで標準的なサービスの体系化と効率化を進める。 ④ リスク管理の強化
福祉サービス第三者評価等の外部評価により、サービスの透明性と質の確保を図る。虐待防止や苦情解決体制の効果的な運用に向けた取組を継続し、ヒヤリハットやインシデント報告等の徹底により、事故の未然防止に努める。 ⑤ 職員の資質向上に向けた取組 ア 福祉職職員に対し社会福祉士や精神保健福祉士、サービス管理責任者等の資格取得を促す。
イ 障害特性に応じた支援技術を身につけるため、センター内外の研修や実習に積極的に参加する機会を提供するとともに、学会等における研究発表や大学院進学等を奨励する等、職員の資質向上に努める。
⑥ 各部門との連携によるサービスの質の向上
これまでの業績の集積や、病院との連携による支援方法の開発、研究所との共同研究の推進、学院教官との相互研修の実施等により、サービスの質の向上を目指す。 ⑦ 利用者の健康保持・増進
ア 利用者の健康保持・増進のため、個別の健康状態に配慮した安心安全な食事の提供を行う。
イ 訓練を通して障害者が自己の障害状況や健康状態を適切に理解し、生涯に亘って健康的な生活を送れるよう支援の定着を図る。
① 平成28年6月末目途の伊東重度障害者センターの統合へ向けて、旧病院新館及び画像診断棟を機能訓練棟に改修するとともに、両センター間の職員の交流を促進し、利用者の生活・訓練の移行が円滑に進むよう必要な調整を図る。
② 頸髄損傷者に対するサービス提供の充実を図るため、就労ニーズの高い若年層に対する支援とともに、高齢の中心性不全損傷者も対象とした支援プログラム等を展開する。
③ ADLが自立していない場合でも就労支援を行う等、重度障害者に対するサービス提供の一層の充実を図る。
① 利用者の就労、地域移行の推進
地域における就労支援機関との密接な連携のもと、障害者の就労環境を確立するとともに、職場開拓、就労マッチング支援の充実により、就業率及び職場定着率の維持・向上を図る。 ② あはき師国家試験の合格率の維持・向上
あはき師国家試験の合格率の維持・向上のため、模擬試験や補習等による効果的な受験対策の一層の強化に努める。 ③ 独自事業の一般事業化に向けての検討
理療教育における再理療教育や臨床研修コース、病院患者や外部の障害者を対象とした自動車訓練等の独自事業について、指定障害福祉サービスとする可能性を検討する。 ④ 知的障害児・者の地域生活への移行の推進
ア 知的障害児が特別支援学校高等部卒業後に地域生活へ円滑に移行するための支援を充実させる。
イ 平成30年3月末までに、年齢超過者の地域生活への移行を着実に推進する。
⑤ 発達障害児とその家族に対する年齢層に応じた療育の実践
幼児期、学童期、少年期にある発達障害児とその家族に対する年齢層に応じた支援を行い、療育技術の向上を図り、その技術を全国へ普及させる。 ⑥ 年齢に応じた発達支援のための生活形態の小規模化(ユニット化)の推進
秩父学園利用者の生活形態の小規模化(ユニット化)を推進し、支援の難しい児童の受け入れを行う。また、利用者の年齢に応じた生活集団への再編を行う。 ① 施設機能の地域提供・開放
ア 地域の障害児・者をはじめその家族や地域住民に対する施設機能の提供・開放に当たり、地域の自治体や関係機関との協力関係を活用し、広報に努める。
イ 地域の障害児・者の支援の充実のため、積極的に役割を担うとともに、地域の住民や関係機関を対象とした講習会等の開催や事業の公開を通じて、地域の社会資源として期待される環境を作る。 ② 地域の関係機関との連携
障害者総合支援法に基づく協議会への参画や、サービス担当者会議等への積極的な参加を通じて、地域の関係機関との連携を図る。 ③ 専門職員の実習・研修の実施
地域のニーズに対応して、障害福祉業務に従事する各種専門職員の実習・研修を積極的に受け入れる。 施設利用等に関する指標を検討し、利用の向上に努める。
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