〔特集〕
国立障害者リハビリテーションセンター第2期中期目標
〜障害者支援・研究・人材育成の先導的・総合的展開とその成果の蓄積と発信〜
 

3.障害者の健康増進推進、運動医科学支援
 障害者が、その障害の初期から地域生活期に至るまで、健康で活動的な生活を維持・推進できるよう、具体的方法の研究開発・提案を行い、その実践・普及を図る。運動は社会参加そのものにもつながることから、障害者が運動・スポーツ・レクリエーションに安全かつ円滑に取り組めるよう、調査研究と支援を行う。
(1) 健康増進プログラムの開発及び提供
 様々な障害のある当事者がその特性に応じて心身の健康を維持・増進できるよう、医学・保健・運動・栄養の面から捉え、多くの施設で利用可能となることを念頭に健康増進プログラムの研究・開発を行う。
(2) 健康増進に関する事業の推進及び普及
 センター及び連携施設において障害者の健康増進を実践し、その効果に基づき手法の改善を行っていく。
 また、現場において実施にあたる人材育成を行い、普及を図る。
(3) 障害者アスリートへの支援と医科学研究の推進
障害者スポーツ選手に対してのドーピング防止に関する服薬相談業務を充実させ、選手が安心して競技に取り組めるよう支援する。
運動医科学支援についての研究を推進するとともに、アスリートのトレーニング、競技実践に際して生じる医学的諸問題に対して、医学・科学面からのサポートを実践する。
専門的なサポートが必要な競技の練習環境についての支援を実施する。
(4) 障害者スポーツ・レクリエーション参加者の拡大
 障害者が自分の障害に応じて適切な運動機会を得られるよう、その実践と情報発信を行う。
障害者のスポーツ導入プログラム及びガイドラインの作成
障害者スポーツ科学を推進する人材の育成
4.支援技術・支援機器・支援システムの研究開発
 障害者リハビリテーション分野に特化した唯一の国立機関として、また、自立支援局・病院という臨床現場を有する利点を活かして、障害者の自立やQOL向上を図るための支援技術・支援機器・支援システムの研究開発を推進し、その成果を発信する。また、厚生労働省直轄機関として国の政策立案に資する研究を実施する。
(1) 臨床現場を有する特性を活かした研究の推進
新しいリハビリテーション技術の開発
・ 中枢神経疾患の運動器リハビリテーションに関する研究
・ メカニカルストレスと運動器機能維持に関する研究
・ 吃音の評価法・支援法に関する研究
・ 新しい義肢装具・リハビリテーション手法の開発と応用
新しい診断・治療技術の開発
・ 発達障害の認知特性の解明と支援法開発に向けた研究
・ 脳内ネットワークの評価と再構成に関する研究
・ 失語症の病態解明とリハビリテーションに関する研究
・ 障害者の二次障害予防に関する研究
・ 視覚障害の遺伝子診断技術とその臨床応用に関する研究
・ 聴覚障害の病態解明と聴覚補償に関する研究
部門横断的研究プロジェクトの推進
・ 部門横断によるS・I・G(スペシャル・インタレスト・グループ)の設置
(2) 障害者の自立と社会参加を支援する研究の推進
先端技術を導入した支援機器の開発
・ ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)技術の実用化研究
・ 盲ろう者の生活支援に関する研究
・ 利用者の特性に適合する超ユニバーサール化福祉機器の開発
・ 支援機器の効果的な臨床評価手法に関する研究
・ 支援機器用要素技術の開発
当事者参加型研究の推進
・ 当事者参加型の情報創発基盤の構築
・ 精神障害者の意向・実践知に即した機器による支援モデルの構築
支援技術・支援機器の普及に関する研究
・ 軽度認知症者を支援する福祉機器の利活用モデルの構築
・ 高次脳機能障害者の生活・移動を支援する機器の実用化と普及
・ 発達障害成人に対する就労支援を目的とした福祉サービス手法の普及
・ プリントディスアビリティを支援する機器の普及
・ 福祉機器の標準化の推進
・ 障害者のスポーツ・運動用装具等の開発と普及
(3) 国の政策立案に資する研究の推進
行政データの解析
・ 障害関係データの利活用に関する研究
・ 障害者福祉サービスの整備状況と利便性向上に関する研究
施策立案への提言
・ 障害認定の在り方に関する研究
・ 福祉機器等の価格制度の整備・改良に関する研究
・ 災害における障害者支援の在り方に関する研究
・ 完成用部品指定申請/事前審査システムの開発
5.リハビリテーションに関する専門職の人材育成
 我が国の障害者リハビリテーション分野における先駆的・指導的役割を担い得る専門職の養成を目指し、臨床のみならず研究・教育分野を先導できる人材を養成するために先進的な知識と技術を付与する。
(1) 社会のニーズを見据えた障害関係専門職の育成
既存学科について、臨床のみならず、研究・教育で当該分野を先導できる人材を養成する。
障害関係専門職の養成機関として先進的な知識と技術を付与する。
教育及び研究面での指導者を養成する教育機関としての役割の充実を図る。
各学科の充足率の維持向上を図る。
社会のニーズに応じた障害関係専門職の養成を目指し、教育の内容、手法等を検討・開発する。
(2) 教官の資質向上
大学教官に相当する経歴所持のために、教官のキャリアアップを図る。
学会、学術活動等への積極的参加を促し、社会的役割の向上を目指す。
(3) 専門職に対する研修機能の充実
 社会的ニーズに対応した障害関係専門職の育成を目指し、研修の内容・手法及び開催方法等を検証しつつ、見直しを行う。
6.リハビリテーションに関する企画・立案
 障害者支援・研究・人材育成の総合的展開に資するため、各部門が連携する部門横断的な企画・立案の推進を図る。
(1) 部門横断的な企画立案及び調整
 企画経営本部を中心とした企画立案・部門横断的な調整を行い、障害者支援・研究・人材育成の総合的展開に資するための環境整備を図る。
(2) 運営委員会の開催
 当センターに関する重要事項、とりわけ中期目標に基づく毎年度の運営方針等を適確にとりまとめ、運営委員会に適正に諮る。
7.リハビリテーションに関する情報収集及び提供
 障害者リハビリテーション分野に特化した唯一の国立機関として、ウェブサイト等を通じた情報発信機能を高め、センター各部門が収集した障害者リハビリテーションに関する知見や技術等の各種情報を集約し発信する。また、高次脳機能障害及び発達障害情報・支援センターにおいては、全国の支援機関の中核センターとしての機能を一層進展させる。
(1) 事業成果の全体集約及び提供
 センターの事業成果を事業報告として取りまとめるとともに、事業成果をホームページや研修事業、関係機関とのネットワークなどを通じ積極的に情報発信する。
(2) 利用者のニーズに応じた情報の発信
現在の情報発信の方法について、対象者、情報の迅速性の観点から情報バリアフリーに配慮した見直しを行い、積極的に推進するとともに、他の広報媒体のあり方を含めて更なる効果的な発信方法を構築する。
支援機器の研究開発及び利用促進に資する情報データベースを構築し、情報発信を行う。
(3) 効果的な広報活動の展開
 リハビリテーションに関する情報等を適時効果的に提供できるように各部門が連携して情報発信機能の強化等の取り組み体制を整備する。
(4) 業績発表会の開催
 センターで実施する業績発表会における職員の研究成果について積極的に情報発信する。
(5) 全国の支援拠点機関の中核センター機能の発揮
全国の発達障害者支援センターと発達障害情報・支援センターとのウェブ上で双方向性機能の活用を図り、情報共有及び発信の方法について検討し、両者の共通データベース化を図る。
高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業を推進するため全都道府県に設置された支援拠点機関と連携し、情報提供を行うなど中央拠点として総合的な支援を行う。
 この中で、従来の支援に加え高次脳機能障害者の日中活動及び福祉的就労並びにそれらの基盤となる移動等についての支援を行うとともに、高次脳機能障害児の就学・復学について支援の強化を図る。
全国リハビリテーションセンター間ネットワークを整備し、支援機器の研究開発及び利用促進に資する情報基盤を構築する。
(6) 情報基盤の構築及び運用管理
 情報システムの基盤整備において、地方施設と共通ネットワークを構築することによる情報共有・利活用を推進する。また運用管理においても、一体的に取り組むことによりセキュリティ確保や効率化を図る。
8.リハビリテーションに関する国際協力
 障害者リハビリテーション分野の国内唯一のWHO指定研究協力センターとして、WHO事業「障害とリハビリテーション」に参加・協力するとともに、JICA事業への協力や他国のリハビリテーションセンターとの連携を通じて、障害者リハビリテーションに関する国際協力を推進し、その成果を発信する。さらに、福祉機器の国際標準化への取組にも貢献する。
(1) WHO指定研究協力センターとしての貢献
 障害の予防とリハビリテーションに関するWHO指定研究協力センターとしての協力事項、行動計画を実施する。
西太平洋地域の同分野の協力センター間の連携を強化し、情報交換を促進するため、ニュースレターを通じたセンターの活動紹介、国際セミナーの開催、リハビリテーションマニュアルの提供等を行う。
WHOが主催する会議への参加を通じてセンターの研究・リハビリテーションサービスの情報提供を行うとともにWHOの方針ならびに他の参加国の情報を収集してセンターの国際協力に反映させる。
(2) JICAを通じた技術協力
 JICAが実施するリハビリテーション技術支援に、センターの技術をもって協力する。
(3) 国際協力活動の推進と成果の発信
 WHO指定研究協力センターとしての貢献、JICAを通じた技術協力、日中韓のリハビリテーションセンター間の連携などセンターの国際協力に関する活動を推進するとともに、ホームページを通じて積極的に発信する。
(4) 福祉機器の国際標準化への協力
 WHOによる福祉機器に関する取組や、国際標準化機構(ISO)のメンバーとして福祉機器に関する国際規格策定に協力する。