〔特集〕
障害者の避難訓練について
自立支援局 総合支援課 田代 優子

 自立支援局は、障害者総合支援法に基づき、指定障害者支援施設として主に身体に障害のある方々が自立した日常生活や社会生活を営むことが出来るように、障害者福祉サービスを提供しています。障害をお持ちの方々が、災害時に安全に避難出来るように、避難訓練の年間計画を策定しています。その内容については、リハセンター全体で実施している総合防災訓練(年2回実施)に加え、自立支援局内の年4回の避難訓練(日中想定:2回、夜間想定2回)、ベッド・床から車椅子への移乗介助訓練、AEDの操作訓練、懐中電灯や消火器等の設備点検、救命講習への参加(今年度は普通救命講習の予定)が挙げられます。避難訓練の年間計画には、利用を開始する方に向けての避難訓練のオリエンテーションを適宜実施すること、新任職員に対しては、宿日直者向けに作成された宿日直者安全管理マニュアルに基づき、避難訓練のオリエンテーションを実施することも含まれています。
 避難訓練を行う目的ですが、まずは利用者の方々が、避難方法を正しく理解した上で、出来る限り自分で安全に避難出来るようにすることが挙げられます。避難訓練は職員主導となり易いですが、消火器の操作訓練には利用者も参加する等、避難訓練を出来るだけ身近なこととして捉え、主体的に関わってもらえるようにしています。そして職員側も、避難訓練を繰り返し行うことで、迅速な避難誘導・検索を習熟させること、また障害に応じた適切な対応方法が取れるようにスキルアップを図ることが目的として挙げられます。
 自立支援局を利用している方は、車椅子の方、身体麻痺のため杖歩行している方、聴覚障害の方、視覚障害の方といったように、障害が多岐に渡っています。そのため、それぞれの障害特性に合わせ、出来るだけ自力で避難出来る設備や環境を整えています。自立支援局には東西に宿舎が併設されているのですが、例えば肢体不自由の方が多数利用されている東棟の宿舎では、階段を使えない車椅子の方や杖歩行の方でも避難し易いように、ゆるやかな傾斜で設計された大きな避難スロープがあり、そのスロープを利用して避難しています。また、聴覚障害の方は音声放送によって非常事態を把握することが難しいため、施設内の各所にあるパトライトを点灯させる、OHCで避難を知らせる文字情報を映し出す、就寝時には振動ベッドで緊急事態であることを知らせるといった対応を行っています。視覚障害の方については、白杖や懐中電灯を携帯し、避難場所に設置された誘導鈴に従って避難するといった方法を取っています。
 実際に避難訓練を行う時間帯ですが、日中帯の災害を想定した訓練の場合は、訓練中と訓練終了後といったように、時間帯をずらして実施しています。夜間帯を想定して、宿舎に隣接した職員宿舎に居住している職員が駆け付ける訓練も実施しています。異なる想定時間で訓練を実施することにより、時間帯による避難誘導体制の相違を確認し、混乱なく避難出来るよう努めています。
 では、実際の避難訓練の流れを、簡単にご説明します。
 まず、あらかじめ災害の状況を想定して、訓練場所や食堂といったように出火場所を決めておきます。実際に非常ベルが発報された後、防災センターから出火場所等を知らせる放送が流れます。職員は、その放送を聞いて、宿舎の入口にある災害時誘導検索ボードに駆けつけます。検索ボードには、「避難誘導」と「検索」の札があらかじめ貼られています。まず、火元に近い場所から「避難誘導」の札を取り、次に「検索」の札を取っていきます。先に「避難誘導」の札を取った職員が、札に記載された該当フロアを回って利用者の誘導を行います。次に「検索」の札を取った職員が、逃げ遅れた利用者がいないかを確認していきます。利用者の各居室の入口には、在寮している場合には名札が掛かっているため、誘導時に職員がその名札を回収します。避難後に、避難場所でその名札と避難した利用者を付き合わせて確認することで、不在者を把握しています。
 避難訓練を実施した後は、各部署から反省点を出してもらい、各部署の避難訓練担当者が集まって振り返りを行い、更に安全に避難することを目指して改善策を検討しています。平成26年度の新たな改善策としては、各居室に加えて浴室やトイレの入口等に検索札を配置する、避難誘導や検索の札に行動内容を簡潔に記載する方法(アクションカードの作成)を取り入れる、といった工夫を加えたことが挙げられます。また、自立支援局内での緊急連絡網を見直し、夜間に緊急通報訓練を実施しました。今年度に入り、去る5月20日に実施した避難訓練時にも、夜間の緊急通報訓練を実施しましたが、前回よりも迅速に連絡網の最後まで回すことが出来ました。
 今までに何度となく行っている避難訓練ではありますが、実施する度に何かしらの新たな発見があります。一番幸せなのは災害が無いことですが、近年の災害の発生状況からすると、本当にいつ災害が起こっても不思議ではありません。「備えあれば憂いなし」です。今後も、更に気を引き締めて、避難訓練に取り組んでいきたいと思います。
<誘導検索ボード> <AEDの操作訓練の様子>