〔トピックス〕
「支援機器利活用拡大シンポジウム−情報基盤で進めるイノベーション創出−」開催報告
研究所福祉機器開発部 石渡利奈、井上剛伸

 現在、国立障害者リハビリテーションセンターでは、厚生労働科学研究費「支援機器イノベーション創出のための情報基盤構築に関する研究(平成26〜28年度,研究代表者:加藤誠志)」により、全国の拠点リハビリセンター等、関係機関と連携したオールジャパン体制で、障害者支援のための基盤構築に取り組んでいます。 本研究の成果報告として、平成27年3月7日、TOC有明コンベショホールWEST HALLにて、表題のシンポジウムを開催いたしましたので、ご報告いたします。

【 開催趣旨および概要 】
 平成26年に日本が批准した国連障害者権利条約では、その第四条 一般的義務 第一項の中に、支援機器の開発と利活用の促進が謳われています。支援機器は、障がいのある人々の基本的な権利の享有に、欠かせない存在です。しかし、その開発から利活用に至るプロセスには関与者が多く、また一般製品とは異なる課題が山積しているために、支援機器の実用的な利活用までスムーズに進められない現状があります。
 その解決策として、利用者、開発・製造者、供給者、専門職、行政が、それぞれ有する問題意識や知見、情報などを共有し、協働して取り組むこと、すなわち支援機器イノベーションの創出が重要です。国立障害者リハビリテーションセンターでは、それを実現するために、前述の研究を実施し、基礎情報、人材育成、当事者からの情報創発に資する基盤構築に取り組んでいます。
 本シンポジウムでは、これまでの研究成果を報告するとともに、すでに支援機器の利活用と開発の促進に取り組んでいる関連分野からの現状の報告を頂き、情報共有を図るとともに、日本全体として取り組むべき共通の課題を認識すべく開催いたしました。さらに、その解決における、情報基盤の役割や方向性についても議論しました。
 なお、本シンポジウムは、以下、2つの関連イベント、障害者自立支援機器シーズ・ニーズマッチング交流会(主催:テクノエイド協会)、ニーズ&アイデア フォーラム(NIF)(主催:ニーズ&アイデア フォーラムプロジェクトチーム)との併催にて、開催いたしました。当日は、両イベントの参加者の聴講もあり、約200名がシンポジウム会場に来場し、盛況となりました。

【 プログラム 】
 本シンポジウムのプログラムは、以下の通りです(敬称略)。
〈第一部〉
10:00‐10:20
開会
国立障害者リハビリテーションセンター
総長 中村耕三
挨拶
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課
自立支援振興室長補佐・福祉工学専門官 廣瀬秀行
挨拶
経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課
医療・福祉機器産業室長補佐 阿部英紀
 
10:20‐11:20
基調講演
「支援機器利活用の拡大のために〜社会保障政策の観点から〜」
一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラム
理事長 中村秀一
 
11:20‐12:00
講演
「地域包括ケアシステムと福祉用具の活用」
公益財団法人 テクノエイド協会
理事長 大橋謙策
 
〈第二部〉
13:00‐13:20
「厚生労働科学研究委託費(障害者対策総合研究開発事業)研究報告―支援機器イノベーション創出のための情報基盤構築に関する研究―」
国立障害者リハビリテーションセンター研究所長
加藤誠志
 
13:20‐14:35
〈支援機器の利活用の現状と情報基盤構築への期待〉(1演題15分)
▶「福祉用具の給付制度と課題」
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課
自立支援振興室福祉用具専門官 加藤晴喜
▶「リハ医学領域における支援機器の利活用の現状と情報基盤構築への期待」
公益社団法人 日本リハビリテーション
医学会 理事 浅見豊子
▶「理学療法領域における支援機器の利活用の現状と情報基盤構築への期待」
植草学園大学 保健医療学部 理学療法学科 講師
日本支援工学理学療法学会運営幹事 松田雅弘
▶「作業療法領域における支援機器の利活用の現状と情報基盤構築への期待」
社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団 地域リハビリテーション部
研究開発課 作業療法士 粂田哲人
▶「義肢装具利活用の現状と情報基盤構築への期待」
一般社団法人 日本義肢装具士協会
常任理事 大塚博
 
14:50‐16:05
〈支援機器の開発促進の現状と情報基盤構築への期待〉
▶「開発における当事者の役割」
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
バリアフリー担当顧問 今西正義
▶「JASPAにおける支援機器開発促進の取組」
日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)専務理事 清水壮一
▶「NEDOにおける福祉用具実用化開発推進事業について」
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) イノベーション推進部
プラットフォームグループ 統括主幹 村越正毅
▶「支援機器開発の具体例と情報基盤構築への期待」
株式会社 今仙技術研究所
代表取締役 山田博
▶「ロボットリハビリテーションの取り組みと情報基盤構築への期待」
兵庫県立リハビリテーション中央病院
ロボットリハビリテーションセンター長 陳隆明
 
〈第三部〉
16:20‐17:20
パネルディスカッション
支援機器の利活用と新たな開発を促進する情報基盤構築
登壇者
横浜市総合リハビリテーションセンター
顧問 伊藤利之
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
理事 浅見豊子
一般社団法人 日本義肢装具士協会
常任理事 大塚博
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
バリアフリー担当顧問 今西正義
株式会社 今仙技術研究所
代表取締役 山田博
兵庫県立リハビリテーション中央病院
ロボットリハビリテーションセンター長 陳隆明
 
17:20‐17:30
閉会

【 報告および議論の内容 】
 本シンポジウムでは、中村秀一氏の社会保障政策全体のお話から、大橋謙策氏の社会福祉分野における支援機器の位置付け、各専門分野からの支援機器に関するお話をいただくことができ、当該分野の包括的な意識共有を行うことができたと思います。パネルディスカッションでは、データやエビデンスに基づく機器開発や機器利用、人材育成、当事者参加等、情報基盤の重要性が指摘され、本研究プロジェクトの位置づけが明確になるとともに、今後の研究の進め方にとても有意義な成果が得られたと考えています。

【 謝辞 】
 この度のシンポジウム開催にあたり、以下の団体の皆様に、ご後援をいただきました。ご講演者、後援団体の皆様を始め、開催にご協力いただきました皆様に、この場を借りて、心より、感謝申し上げます。
一般社団法人 日本義肢装具学会
一般社団法人 日本義肢装具士協会
一般社団法人 日本作業療法士協会
一般社団法人 日本リハビリテーション工学協会
経済産業省
公益財団法人 テクノエイド協会
公益社団法人 日本理学療法士協会
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
全国頸髄損傷者連絡会
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)