〔特集〕
第10回北京国際リハビリテーションフォーラム参加報告
−義肢に関する発表−
病院 整形外科医長 大熊雄祐 病院 作業療法士 中川雅樹 企画・情報部企画課国際協力室

 平成27年9月11日から13日の3日間、第10回北京国際リハビリテーションフォーラムが中国国家会議場で開催され、センター病院の大熊整形外科医長と中川作業療法士が参加、それぞれ義肢とリハビリテーションに関する内容の発表を行いました。
 本フォーラムは北京の中国と海外のリハビリテーション医学に関する協力と交流を強化し、リハビリテーションの国際的な研究を促進することを目的として、毎年開催されており、中国はもとより、日本、韓国、欧米の国々から専門家が参加し、リハビリテーション医学、工学をはじめとして、リハビリテーションの幅広い分野での講演や意見交換が行われるものです。今回は34の分科会が設けられ、当センターからは、四肢切断と義肢、先天性上肢欠損の小児に対する義肢を含めたリハビリテーションについて発表いたしました。1000人規模の国際的なフォーラムの場での発表は、義肢に関する当センターの取組を紹介する良い機会となりました。
 以下に、発表を行った2名の職員から発表内容の概要とフォーラムの様子を報告いたします。

“四肢切断者の義肢作成・リハビリテーション −肺炎球菌性電撃性紫斑病での四肢切断者の症例報告−”

病院 整形外科 大熊雄祐
 本年9月に北京で開催された第10回北京国際リハビリテーションフォーラムに参加させていただきました。今回私は肺炎球菌性電撃性紫斑病による四肢切断患者の義肢作成・リハビリテーションについて報告しましたので、以下に報告内容の概要を述べます。
 四肢切断は非常にまれな病態である。電撃性紫斑病は急性に進行し、時に致死的で、血管内凝血による循環障害をきたし四肢切断にいたることもしばしば起こる。今回は当センターでは3例目の症例で58歳男性、両前腕切断および両下腿切断者であった。両上肢の能動義手を用いて日常生活動作を行えるようにし、続いて義足歩行で実用歩行も獲得できた。移動能力の回復及び義肢の自己装脱着を可能にするのが課題であった。義手・義足に改良・修正を加え特殊な用具も用いてこれらの課題を解決した。今回の症例では義手を用いて木工細工などの手作業も可能、義足の自己装脱着も可能、床からの起き上がり、街中の実用義足歩行や駅の階段昇降も可能となっておりこれらの動作を動画で供覧した。適切な義肢作成・リハビリテーションによって日常生活上の障害を最小にできた。
 非学術面で印象深かったことを記載させていただきます。症例発表はかなり目立つ内容と考えていました。外国での英語の発表は初めてなので原稿を病院長に何度も添削していただき、張り切って北京に赴きました。会場は巨大なコンベンションセンターでした。到着後、早速中国リハセンターのスタッフに依頼し送ってある発表スライド(動画入り)が再生できるかを問い合わせ、発表会場も見に行きました。同日夜はコンベンションホールで会食およびオープニングセレモニーが行われました。コンサートのような光線や演出に度肝を抜かれました。中国服の美女達もいます。一体いくら費用をかけているのか?
 さて翌日の発表当日、私の発表は午後2時の予定でしたが、念のため午前中に再度下見に行きました。その後午後の指定された時間に会場に行き日本語のわかるスタッフにスライドを確認させてもらいました。危惧した通り会場のパソコンでは動画は稼働せず持参したノートパソコンを直接プロジェクターにつないで映写できることを確認しました。「やれやれ後は早く発表して肩の荷を下ろしたい」と思った時にスタッフに「予定変更で発表は3時50分から」と急に告げられ、驚きました。午前中にも確認してあり変更の連絡・掲示などどこにもありません。
困っているところに前院長の赤居先生がいらして、事情を話したところタイトな予定が入っている赤居先生が急な変更は困ると申し入れてくれました。
 結局私は最初の予定時間より約20分遅れでそのセッションの3人目で発表したのでした。こうした運営に少し不信を抱いたが帰りに中国リハのスタッフと話してまたビックリしました。学会運営もセレモニーもすべて中国リハのスタッフが自前で行っていたのです。
 あの鷹揚さやパワーが逆にうらやましく感じました。(今回お世話になった国リハおよび中国リハの関係者の方々、大変ありがとうございました)
発表の様子

“先天性上肢欠損児に対する当センターでの取り組み”

病院 リハビリテーション部 作業療法 中川 雅樹
 この度、北京国際リハビリテーションフォーラムに参加し発表する機会を頂きました。
このフォーラムは、アジアだけでなく欧米からの参加もありました(1000人を超える参加者があったとのことでした)。オープニングセレモニーでは、大型モニタを使った演出やダンスが披露されとても盛大に行われました。
 私は日中韓連携作業療法の分科会で発表しました。この分科会には韓国から2演題、香港と開催国である中国から1演題、日本からは私を含め3演題の計7演題で行われました。中国、韓国、香港とも各施設での作業療法の取り組みを紹介した報告が多くみられました.テーマが小児分野と指定されていたため、私は当センターで取り組んでいる先天性上肢欠損児に対するリハビリテーションの紹介として、「A project for Children with Congenital upper limb Deficiency(先天性上肢欠損児に対する当センターでの取り組み)」を報告しました。以下はその概要です。
 我々は2011年10月より先天性上肢欠損児に対する取り組みを開始しました。開始から2015年7月までの間に、23人の子ども達とそのご家族が参加されています。
 スタッフは、医師、作業療法士、義肢装具士、理学療法士、運動療法士、エンジニアの専門職で対応しています。
 この取り組みでは、先天性上肢欠損を持つ子ども達とそのご家族をサポートしています。そのため、我々は子ども達とご家族のニーズを把握するように努めています。
 個別訓練とグループ(複数の子ども達とそのご家族が参加)訓練とを毎月1〜2回行っています。子ども達の年齢,発達段階に合わせ、四つ這いや、つたい歩き、マット運動や縄跳び、跳び箱などの運動、ブロックや玩具を使った遊び、ハサミを使った工作など両手を使った活動を行っています。また食事や着替えといった生活動作も行っています。これらの活動を義手(手の機能と形態を補うための人工の手)や自助具(目的動作の実施を補うための道具)を用いて、もしくは義手や自助具無しでも出来るようにサポートし、さらにご家族へのアドバイスも行っております。
 このような取り組みを行っている施設は、日本国内でもまだ多くはありません(それも影響してか会場からの意見はありませんでした)。
今後も参加される子ども達、ご家族のご期待に応えられるよう取り組んでいきたいと思います。
 最後になりましたが、私にとりまして初めての海外発表のため、不安だらけでしたが、国リハより参加された大熊医長、現地でご一緒頂いた前病院長の赤居先生に支えられ無事に終えることが出来ました。
 このような貴重な機会を与えて頂いた中村総長、原稿作成にご尽力頂いた飛松院長、中国リハとの橋渡しと渡航手続きにご尽力頂いた国際協力室の皆さま、義肢装具技術研究部の皆さま、作業療法室の皆さまへ深く感謝申し上げます。
組織委員会から感謝状をいただきました