〔トピックス〕
座位保持装置部品の安全性確保のための基準をめぐる提案作りの取り組み
研究所 障害福祉研究部 我澤賢之

 障害福祉制度における補装具のひとつ座位保持装置について、厚生労働省は部品の安全性及び使用者が誤った使用をしないことの必要事項を「座位保持装置部品の認定基準及び基準確認方法」(以下、「厚労省基準」)として定めています。国リハ研究所は、その策定や改訂に携わってきました。
厚労省基準策定の背景
 座位保持装置の製作に、完成用部品と呼ばれる厚生労働省による認可を受けた一定の機能を持つ部品が用いられる場合があります。完成用部品が認可を受けるには申請が必要で、そのなかで部品の壊れにくさを確認するための資料として工学的試験評価結果の提出が要件となっています。
 しかし平成14年当時、同様の完成用部品制度を持つ義肢・装具と異なり、座位保持装置については工学的試験の規格・基準がなく(国際規格ISOが策定作業中)、申請された製品が破損しないで安全に使えるかどうか判断することが困難な状況でした。何らかの工学的試験評価のための規格・基準を早急に作成する必要がありました。
初版の策定
 そこで厚生労働省では、基準策定のため「座位保持装置の工学的評価基準に関する検討委員会」を組織しました。この委員会には国立身体障害者リハビリテーションセンター(当時)からも、委員長を務めた山内繁 研究所長(当時)をはじめ、病院ならびに研究所福祉機器開発部、補装具製作部(現、義肢装具技術研究部)のメンバーが委員や事務局メンバーとして参画しました。平成14年度よりISO規格原案や手動車椅子にかかるJIS規格(JIS T9201:1998)などを踏まえた検討が行われ、平成16年1月6日、最初の厚労省基準が策定されました。
その後の取り組み
 厚労省基準はその後、平成19年4月2日の改訂版、平成23年4月21日の改訂2版(現行基準)と2回改訂されています。これらの改訂では、研究所福祉機器開発部が改訂案作成作業の中心となりました。改訂2版では、使用者体重区分の見直し(子供用、大人用の2区分→100kgまでの4区分)を主とした項目の修正と、JIS、ISO等の規格との整合性についての確認を踏まえて提案をまとめ、厚労省基準に反映されました。
 その後、平成27年度に厚生労働科学研究費「座位保持装置部品の安全性確保基準等の見直しに関する研究」で、研究所福祉機器開発部、障害福祉研究部他複数の機関のメンバーが改訂に向けた修正提案事項をまとめました。ここでは、支持部の依拠規格改訂や破損事例を踏まえた検討、体重100kg以上の使用者に係る検討のほか、クッション、ティルト・リクライニング機構にかかる新規を含む項目の検討を行いました。この検討で最終的な結論を出し切れなかった部分もあります。今後も年々新たな部品が登場し、関連規格の策定や改訂が行われるでしょう。こうした作業を続けていくことが重要と考えます。

厚生労働省 第13回補装具評価検討会議事要旨別紙 のページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001hioc.html
※このページから厚労省基準の改訂版ならびに改訂2版をダウンロードできます。