〔特集〕
学院における養成・研修の取組と卒業生・修了生の活躍

発達障害児・者支援の幅広い専門性を学ぶ〜児童指導員科
教育内容について
 児童指導員科は我が国で唯一の発達障害分野における福祉専門職を養成する学科です。1年間の修業期間で発達障害についての幅広い知識と支援の専門性を身につけるとともに、児童指導員、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事の任用資格を得ることができます。
 発達障害は、広汎性発達障害(自閉症など)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、脳機能の発達に関係する障害です。発達障害のある人は、他人との関係づくりやコミュニケーションなどがとても苦手ですが、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害です。発達障害の人たちが個々の能力を伸ばし、社会の中で自立していくためには、子どものうちからの「気づき」と「適切なサポート」、そして、発達障害に対する私たち一人一人の理解が必要です。※参考(政府広報オンライン特集「発達障害って、なんだろう?」http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html)
 このような発達障害のある人への支援は、専門的支援を行う特定の機関や施設における支援から、気づかれにくい彼らの特徴に配慮した生活場面における支援に至るまで幅広い支援が必要です。またそれらの支援は彼らのライフステージの変化に合わせながら途切れることなく行われることも重要です。児童指導員科ではこれらの支援について理解し、様々な場所やライフステージに応じて支援を考え実践できる人材を養成しています。
画像:発達障害児・者への幅広い支援
児童指導員科のカリキュラムの特徴
 児童指導員科の前身は昭和38年に開所した国立秩父学園附属保護指導職員養成所であり、50年以上に渡る障害児・者支援の専門職養成のノウハウを継承しています。平成24年に組織統合により「児童指導員科」として国リハ学院6番目の学科となりました。
 児童指導員科では外部有識者を含めた『カリキュラム見直しについての検討会』を経て、平成27年度から新カリキュラムをスタートさせました。新カリキュラムは養成所から長く培われてきたカリキュラムを発達障害児・者支援に特化した内容へと発展させたものです。また新カリキュラムでは講義と現場実践の結びつきをより重視し、多くの実習と講義を通した学習により、現場の実践に基づいた理論と実践を学ぶ構成になっています。
<カリキュラムの例>
画像:療育実習
療育実習
 『発達障害福祉論』(発達障害医学、発達障害福祉史、知的障害者福祉論、発達障害者福祉論)
 『発達障害支援論』(ソーシャルワーク理論、児童発達支援論、生涯発達論、家族支援、就労支援、強度行動障害、性と支援、虐待、触法・非行)
 『発達障害演習』(研究方法、支援技法、個別支援計画、コミュニケーション支援、スーパービジョン、カウンセリング、福祉機器、統計調査、アセスメント、多職種連携、創作活動、講読演習)
<個別支援計画に基づいた実習の展開>
画像:ケースカンファレンス
ケースカンファレンス
 発達障害への理解を深め、支援方法の基本理念や具体的な方法について学んでいきます。そして更に、講義を踏まえた演習や実習によって実践力と振り返る力を身につけることができます。実習では、個別支援計画に基づいた家族支援に携わり、現場から学ぶ貴重な時間となります。
<国立障害者リハビリテーションセンターが開催する研修会への参加>
 国立障害者リハビリテーションセンターでは、現任職員向けの研修会が年間を通して開催されます。当科では、知的・発達障害に関する全ての研修会に参加し、全国各地から集う受講生と共に最新情報を学びます。
<国内トップクラスの講師陣による講義>
 専門分野における外部講師は、医療、教育、福祉それぞれの分野の日本が誇る著名な先生ばかりです。これは長い歴史を持つ児童指導員科のとても大切な財産でもあります。
卒業生の活躍状況
画像:グラフ卒業生(1〜5期生)進路内訳
 卒業生の進路は福祉関係を中心として、知的障害施設や発達障害の療育機関、公務員(福祉職)等の形で発達障害と関わる多様な現場で活躍しています。
<卒業生懇談会>
 9月9日(土)に児童指導員科卒業生懇談会を開催しました。児童指導員科1期生から5期生の7名が参加しました。卒業生は、障害児入所・通所支援、福祉事務所、特別支援学校、進学(大学院:障害児教育関係)と多岐にわたり、それぞれ障害児・者支援をはじめとする現場などで活躍されています。
 卒業生懇談会では、現在のお仕事や近況等についての情報交換をはじめ、それぞれの現場の課題、専門職養成に期待することなど、活発な意見交換が行われました。卒業生が現在のお仕事の中で、児童指導員科での学びを実感することとして「子どもの行動や言葉の背景を考える習慣が身についていた」、「実習などの経験を通して、大きなパニックなどに冷静に対処できる力が身についた」、「教材作成や支援の手立ての検討など、児童指導員科で学んだことを元に実践している」などの意見が挙げられていました。
また現場に出て必要性を感じた知識や技術として「一般的な子どもの発達についての知識」、「保護者や家族の理解や、その支援の方法」などの意見が挙げられました。
 児童指導員科ではこのような機会を通して現場の貴重な意見を専門職養成にも活かすとともに、卒業生同士の専門職としての繋がりを作り、卒後教育の機会などにも繋げていきたいと考えています。
画像:発達障害児・者への幅広い支援
卒業生懇談会の様子