国立障害者リハビリテーションセンターの
今後の方向性について
「国立障害者リハビリテーションセンターの今後のあり方について(報告書)」(平成30年12月19日)より抜粋

■国リハの今日的役割と今後の方向性



 人口構造の変化への対応
 国リハが設置された昭和54年(1979年)頃の我が国の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)はおよそ9%であった。平成28年(2016年)の高齢化率は26%であり、2025年の推計は30%である。また現在の身体障害者のうち65歳以上の方は75%とおよそ4人のうち3人は高齢身体障害者である。
 このような少子高齢化問題に対して、平成28年(2016年)に「ニッポン一億総活躍プラン」が打ち出された。そこでは「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の一億総活躍社会を実現」すると謳われている。また、「介護離職ゼロに向けた取り組み」の中で「健康寿命の延伸」「障害者等への活躍支援」「地域共生社会の実現」を目指すと述べられている。「活躍支援」の具体策として「障害者等が、希望や能力、障害や疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境を整備するため、就職支援及び職場定着支援、治療と職業生活の両立支援等を推進」が掲げられている。
  このような方針に国リハが貢献することが必要である。また、障害者における健康増進、健康(機能)寿命の延伸についても国リハは寄与すべきである。

 法・制度改正への対応
 平成18年(2006年)12月、「障害者の権利に関する条約」が国連で採択された。日本では、平成25年(2013年) 6月に「障害者差別解消法」が制定され、同年12月に同条約が国会にて承認、翌年に発効された。平成30年(2018年) 3月に障害者基本計画(第4次)が閣議決定された。基本計画においては「障害者の権利に関する条約」の実現に向けた計画が盛り込まれている。同条約の理念として「障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるように支援」すると述べている。
  国リハにあっては、このような理念等を踏まえ、障害を負って間もない障害者や、情報から遠ざけられている障害者に対し、サービスの提供や情報支援を通じて、社会参加を促し、共生社会の実現を目指していく必要がある。またそのことを情報発信し、地域における相互の情報交換も促進し、障害者支援の均てん化を図る必要がある。

 科学技術の活用
  情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)、ロボット技術(RT)の発展は障害者を技術から遠ざけるものではなく、それを利用することによって様々なことが容易となってきている。例えば、環境制御装置と呼ばれるものは、重度障害者が、呼気や頚、あるいは僅かな手指の動き等で指令を選び、それを実行させるというものであったが、今や音声で指令を出したり、障害者用の特別仕様でなくともコミュニケーション手段として活用できたりするようになった。これらの技術を積極的に利用することにより、高額な、あるいは複雑な機器を設置する必要もないことも多くなっている。今後は障害者のコミュニケーション手段として、情報アクセス、移動支援等に利用されていくことが望ましい。
  国リハは、障害者の自立や生活を支援するための機器について障害者による利用促進のための技術開発、人材育成、障害者の技術へのアクセス支援を行っていく必要がある。

 情報ネットワークの形成と情報収集・発信による地域の均てん化
  昭和54年(1979年)、当センター設置当時、リハビリテーションセンターのあった地方公共団体は10カ所に満たなかったが、現在では30カ所を超える。しかしながら未だ地域格差も大きく、取組が十分でない地域もある。このような状況において国リハのすべきことは情報ネットワークの形成と、先進的な取組の紹介、情報交換、及び国リハにおけるモデル開発とその情報発信による地域の均てん化を図ることである。さらには、海外のリハビリテーションに関する情報を集め、諸国の先進的リハビリテーションの国内への紹介、取組の推進を行うべきである。

 国際社会に対する情報発信
  我が国は超高齢社会先進国であり、その中で、国リハは我が国の障害者リハビリテーションの中核的な役割を果たしてきた。その取組は今後多くの国の参考になるため、技術移転とともに国リハの取組を国際社会に向けて情報発信すべきである。

■国リハの今後持つべき機能


  国リハは、医療から職業訓練まで一貫した体系の下で保健・医療・福祉サービスの提供、リハビリテーション技術の研究開発、リハビリテーション専門職員の人材育成等の機能を一元的に備え持ち、他のリハビリテーションセンターに類を見ない特性を有する。 国リハに求められる役割を果たしていくためには、部門の垣根を越え、国リハとして課題を共有し一体的に取り組むことにより、その特性を活かした機能を発揮する必要がある。

@ 新しい課題への取組と情報発信
・ 医療から職業訓練まで一貫した支援の充実を図るために、自立支援局と病院はより連携を密にして取り組んでいく必要がある。
・ 最新技術のリハビリテーションへの応用、開発成果物のリハビリテーションへの導入について、研究所は病院、自立支援局と連携して行う必要があり、その体制を構築する必要がある。
・ 障害者の自立と社会参加を促進していく上で、障害者の高齢化、高齢者の障害に対し、障害者健康増進・運動医科学支援センターは、健康寿命、機能寿命の延伸のための機能を十分発揮する必要がある。
・ 国リハの取組等を情報発信する際には、学会や研究会、研修会、論文、研究課題報告書等による発表・報告やホームページを利用した広報活動等あらゆる手段、機会を利用する必要があり、これらの情報発信を総合的かつ効果的に実施するための仕組及び体制を構築する必要がある。
・ その際、特に研究所は各部門の取組により蓄積された知見やノウハウについて、その解析、情報発信を支援する必要がある。
A 地方及び国際社会とのつながりの強化
地方や他国の先進的なリハビリテーション技術や取組の収集、解析、国内外への情報発信を推進していくために、地方公共団体や関係団体、関係諸国、WHO等との連携強化を引き続き図っていく必要がある。
B 人材育成の取組
学院における専門職の養成・研修のみならず、病院、自立支援局、研究所等においても、研修生、実習生等の受入れを推進し、人材育成に貢献していく必要がある。

 リハビリテーション医療の提供
@ 国リハ病院の機能及び役割
 目指すべき国リハ病院の機能、役割を明確にする必要がある。時代の要請に応えた取組を強化し、先導的なリハビリテーションプログラムの開発(重複障害などの困難事例等)や、モデル事業的サービスを提供していくべきである。
ア 高度救命救急センターで救命し得た多発外傷重度障害者に対するその後のリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
イ 頸髄損傷を含む脊髄損傷重度障害(高齢脊髄損傷及び重複障害合併を含む)に対するリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
ウ 切断重度障害(多肢切断・重複障害合併を含む)に対するリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
エ 先天性四肢形成不全児に対する小児筋電義手等のリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
オ 高次脳機能障害のリハビリテーション医療においては、高次脳機能障害支援等の課題解決に向けた取組を行う必要がある。
カ 発達障害臨床のはざまにある思春期・青年期の発達障害及び重複障害を合併する発達障害のリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
キ 吃音のリハビリテーション医療においては、訓練ガイドラインやリハビリテーションアプローチ開発等の取組を行う必要がある。
ク ロービジョン対応においては、短期入院訓練を含む本格的なロービジョンケアの提供に取り組む必要がある。
ケ 難聴遺伝学的検査や新しい補聴機器を用いた難聴、人工内耳のリハビリテーション医療に取り組む必要がある。
コ 脊髄損傷等の再生医療リハビリテーションにおいては、再生医療リハビリテーションプロトコールの作成等に向けた取組を行う必要がある。
サ IT機器リハビリテーション医療においては、重度障害者がIT機器を使って、コミュニケーション・家電操作・家事・在宅就労等の訓練を行い、自立支援・社会参加の促進を図ることができるよう、環境整備に取り組む必要がある。
A 自立支援局との連携
 重度障害者に対して、病院→自立訓練→就労支援→自立生活といったリハビリテーションパスの中で、病院と自立支援局が連携してリハビリテーションを行うことができる国リハの特徴を活かした取組を行う必要がある。
ア 肢体不自由、高次脳機能障害、青年期発達障害においては、病院と自立支援局との連携を強化し、就労支援、自立生活を目指すリハビリテーションパスの充実に向けた取組を行う必要がある。
イ ロービジョン対応においては、病院と自立支援局が連携し、病院(数日〜1ヶ月以内の短期集中訓練)と自立支援局(長期訓練)における役割を分担して取り組む必要がある。
B 研究開発の推進
 臨床研究開発部門の充実を図り、国リハの他部門と連携して研究開発を進めていく必要がある。
C 今後の病院運営
 病床数に対するセラピストの人数が少なく、セラピストの大幅増員ができない中で、病院を運営していくことが必要である。引き続きセラピストの体制について現状を維持するべきであるが、充実したリハビリテーション医療提供のために増員を図ることも検討すべきである。また、対象患者と適切なサービス提供体制についても検討すべきである。

 障害福祉サービスの提供
@ 障害者福祉サービスの均てん化や新たなニーズへの対応
ア 設備、医療体制、専門職の配置等コスト的に現状では民間で対応が難しい頸髄損傷者への取組拠点としての機能を維持する必要がある。
イ 地域で頸髄損傷者のリハビリテーションを担っている機関の連携を図る取組が必要である。
ウ 頸髄損傷者に対する在宅就労支援を進める必要がある。
エ 病院と連携して、ロービジョン者に対する機能訓練及び復職支援を行う必要がある。
オ 医療的ケア、重複障害などにより特別支援学校での対応が難しい、あはき師資格取得を目指す者に対する支援を行う必要がある。
カ 視覚障害者に対する支援機器を活用した事務系技能の獲得支援と、多様な就労の場の確保を図り、職域拡大を図っていく必要がある。
キ 理療教育を利用する中高年者に対する効果的・効率的学習プログラム開発が必要である。
ク 地域包括支援における高齢視覚障害者に対する支援の均てん化の推進が必要である。
ケ 就労移行支援利用者の就職率及び定着率向上に向けた支援プログラム開発が必要である。
コ 発達障害者に対する就労支援の継続と、生活訓練への取組を行う必要がある。
サ 先端的技術を活用した支援方法の試行、開発への取組が必要である。
シ 社会や障害者等のニーズ、社会情勢を踏まえ、国立施設としての役割に沿った支援体制の検討を行う必要がある。
A 情報発信の強化
ア 地域の課題、障害者等のニーズの情報収集・分析を行う必要がある。
イ 障害福祉サービスの均てん化や新たなニーズへの対応等によって得られたノウハウを、地域の支援機関が持つ機能やニーズ、あるいは地域のリハビリテーションパスにおける支援機関の位置づけに応じた具体的な形で情報発信を行う必要がある。
ウ 国リハの機能にかかる広報では、訓練効果や訓練終了後の社会活動状況等、訓練終了者の状況を分かり易く伝える必要がある。
エ 情報発信計画策定、統計処理等を専門的に取り組む人員配置や研究所とのさらなる連携が必要である。

<秩父学園>
@ 入所機能の再構築
ア 知的障害児等への支援に関して地域の中核となる人材の養成(支援者への研修等)や支援のノウハウについての研究も含めた取組などを行っていく中で、入所機能を再構築していく必要がある。特に、支援が困難な事例や重複障害の事例等について、短期間受け入れてその障害児に適切な支援方法を構築する等、先駆的・総合的な支援を国立施設として行う必要がある。
イ 今後、地域や他の事業所での対応が困難な重度・重複の知的障害児や精神症状合併ケースを受け入れ、自立に向けた支援を行うためには医療との連携と複数の障害を切り分けて整理ができる専門性(見立て)が必要であり、国リハ第三診療部との連携のあり方も含めて支援体制の充実強化が必要である。
ウ 被虐待児の入所については、当該児に対する支援のみならず、家族への働きかけも児童相談所等関係機関と連携して行う必要がある。
エ 強い行動障害等により特別支援学校に通えない入所児童に対して、医療との連携による療育や、入所後の安定した生活環境の中で教育の機会を作ることを検討する必要がある。
オ 全国規模の利用者の受入れ促進のための方策について検討する必要がある。
カ 秩父学園の役割を果たすために適切な事業規模(利用定員)について検討する必要がある。
キ 今後の障害児支援施策のあり方も踏まえ、秩父学園の方向性を検討していく必要がある
A 拠点機能の強化
ア 福祉型障害児入所施設の目的である自立(地域生活移行)のための支援を入所者の状態像に応じて確実に行うとともに、その支援のノウハウを全国に広めていくよう国立施設としての役割を果たすことが重要である。
イ 拠点としてのフィールドについては、知的障害も含めた発達障害を中心に据える必要がある。その際、発達障害情報・支援センターとの関係や、国立のぞみの園との連携・協力をどのようにするか整理する必要がある。
ウ 入所児童が入院や治療対応が必要となった場合の受入れ先が見つからない現状については、地域の医療機関とのネットワークの構築が必要である。
エ 退所後のフォローや家庭での養育が困難となった時の一時的なサポートを行うことについて検討が必要である。
B 人材育成・調査研究機能の強化
ア 全国の知的障害児を支援する事業所の人材を養成していくために、研修の受入れ、実習の場の提供、指導者の派遣を行う必要がある。
イ 知的障害児の養育について、現状を調査して把握し、理解を促進するための啓発活動を行う必要がある。
ウ どんな困難事例にも対応できるコンピテンシー(業績優秀者の行動特性)獲得のための経験とその共有が可能となる取組の検討が必要である。

 支援技術・支援機器・支援システムの研究開発
@ 研究所の役割
 研究所は、障害者の自立支援に資する研究及び国の施策に資する研究を様々な人・機関と協力して推し進める要となり、未来に備えた革新的課題及び現在の社会背景における実用的課題の両面で障害福祉分野に貢献すべきである。
A 研究テーマの立案プロセスの見直し
ア 国リハ内の各部門や関係機関(厚生労働省等)等から要望を収集し、その実施について検討する場を設けるべきである。
イ ボトムアップ型立案に加え、トップダウンで組織的に進められる環境作りをするとともに、自立支援局や病院と障害者支援及び支援機器開発等について連携を強化し、横断的な研究の推進や他の研究機関、企業、大学等と共同研究を行なう等により一層の充実を図ることが必要である。
ウ 社会的影響が大きいことが見込まれる研究テーマについては、組織的に取り組んでいく必要がある。また、当該研究プロジェクトの目標達成に向けた長期にわたる行程と進捗状況を公表する必要がある。
エ 障害(脳機能、運動、感覚)の病態を分子・細胞レベルで明らかにし新たな治療法を見出す研究、神経制御メカニズムを明らかにし新たなリハビリテーション技術・機器の研究開発を促進すべきである。
オ 障害者との親和性が高い支援機器開発を行う際、一般に多くの人にも役立つようにユニバーサルデザイン化を進めた物つくり研究や社会に加速度的に普及しつつあるICT、ロボット技術の活用等による障害者の生活や自立を支援する技術の研究及び機器の開発支援をすべきである。
カ 障害者の自立・社会参加の促進に向けて、障害者に関する問題解決に取り組む際に依拠しうる基礎情報の基盤構築を進めるため、障害統計等データの整備を図る必要がある。
キ 医工連携をより進めるともに、義肢・装具の新しい科学的適合法等、新たな製作技術・計測技術・リハビリテーション手法等を開発すべきである。
B 研究体制の見直し
ア 研究人材をより活かし、研究所各部や他部門との組織的・横断的な取組が進みやすく効率的な研究を行い、有意義な情報を外部に発信ができる体制整備が必要である。
イ 研究職員が研究所以外の部門に研究職のキャリアを活かしたポストを設置することを含めた研究体制の検討が必要である。
C 指定研究・外部資金獲得の方策及び環境整備
ア 引き続き、質の高い研究成果を報告し、研究費獲得の可能性を高める必要がある。
イ 指定研究(厚生労働省が研究拠点として国リハを指定する研究)のテーマについて、国リハの特性を生かし、現場のニーズや時代の要請に応じた研究課題を積極的に提案すべきである。
ウ 補助金扱いとして交付可能な研究資金を積極的に活用する検討が必要である。
エ 研究所の環境整備及び情報発信の環境整備等について機会を捉えながら推し進める必要がある。

 リハビリテーションに関する専門職の人材育成
@ 養成課程が担うべき役割
 高度専門職業人、教育者、研究者等専門職の指導者育成を目的とした教育のあり方について新たに検討すべきである。
A 養成課程各学科
ア 言語聴覚学科については、今後とも効果的広報に努めるとともに、有資格者に対する更なる教育の場を提供することを検討すべきである。
イ 義肢装具学科については、入試実施方法を検討するとともに、指導者育成の観点から、将来的に応募資格を大卒に絞ることも検討すべきである。
ウ 視覚障害学科、リハビリテーション体育学科については、パラリンピックも一つの好機と捉え、専門職の行う支援を効果的に広報すべきである。
エ 児童指導員科については、非常に重要で深刻な子どもの問題解決にどのように結びつく専門職を育成するかの整理も含め、更なる広報に努めるべきである。
B 研修課程
 立地条件や定員の制約等を解消する観点から、現行の集合研修方式に加え、eラーニング等の導入を検討すべきである。

 障害者の健康増進推進、運動医科学支援
@ マッチングシステムの構築
 健康増進への取組を普及させるには、これにかかわる専門職間の連携を支援していく必要がある。諸外国の取組や、関連する国内事例を参考にして国リハが主体となって、国内状況に応じた、ニーズとリソース(健康増進の機会提供)のマッチングシステムの構築と運用を行うべきである。
A 地域での連携のモデルと支援プログラムの提示
 地域に存在するリソースが効率よく連携できるよう、地域の中核施設と関連する医療・福祉・運動施設間の連携モデル及び支援プログラムを示す必要がある。また、健康増進の重要性を学会等を通じて発信し、医療・福祉制度の中での位置づけを明確にしていくべきである。
B 情報発信力の強化
 健康増進の実践の場を、データ収集や新しい介入法の開発など研究フィールドとして活用するべきである。国リハ研究所、外部研究機関・大学の研究者に利用しやすい環境を整えることで、情報発信力を強化する必要がある。
C 病院内での連携強化
 他の訓練部門との連携強化と役割分担を明確にすることで対応できる症例の幅を広げていく必要がある。地域で生活する慢性期障害者に対しても体力向上を目指した短期入院を検討していくべきである。
D パラリンピックへの支援
 国立スポーツ科学センター(JISS)との連携を深め、障害者スポーツについてのJISSの活動を支援していくべきである。
E 障害者スポーツの裾野拡大に向けた取組
 障害者スポーツの裾野拡大を図るため、健康増進での活動を経て、障害当事者をスポーツ実践につなげるモデルを提示する必要がある。

 リハビリテーションに関する情報収集及び提供
 リハビリテーションに関する国内外の先進的な取組等の収集及び国リハにおける支援モデルの開発等を行い、その蓄積された知見やノウハウについて分析・研究し、障害者やその家族等に対する情報支援を行うとともに、地域における障害福祉サービスの均てん化を図るための情報発信を推進していく必要がある。

<高次脳機能障害情報・支援センター>
@ 都道府県の支援拠点機関に対する適切な助言・指導
 「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」が地域で活用されるように、都道府県の支援拠点機関に対し引き続き適切な助言・指導を行う必要がある。
A 先進事例の紹介
 都道府県内に複数の圏域を設定し、圏域内で医療を受けたり社会参加が行えるとともに、市町村レベルで高次脳機能障害に関する相談ができる体制を全国に広めるため、体制の整備が進んでいる自治体の状況を調査し、他の自治体へ紹介していく必要がある。
B 障害特性に応じた支援マニュアルの開発及び現場へのフィードバック
 障害福祉サービス利用時の障害特性に応じた対応に資するため、それぞれの障害福祉サービスで行われている先進的な取組内容を厚労科研費等を用いて調査・研究してとりまとめ、障害特性に応じた支援マニュアルを開発して現場(事業所)へフィードバックする必要がある。
C 精神医療・保健と福祉との連携体制の構築及び専門的アドバイスと地域での問題解決に資する仕組み作り
 高次脳機能障害者の社会的行動障害について各地域で事例を積み重ねるとともに先進事例を収集し全国に紹介していくことにより、精神医療・保健と福祉との連携体制の構築を進める。また厚労科研費等を用いて社会的行動障害による社会参加困難への対応に関する研究を引き続き進めて、専門的アドバイスと地域での問題解決に資する仕組み作りの提案を行う必要がある。

<発達障害情報・支援センター>
@ 発達障害情報・支援センターの役割
ア ネットワークの要としての責務を果たすため、組織体制を強化し、情報分析・発信機能の充実を図る必要がある。
イ 国立のぞみの園や秩父学園と連携し、支援者への助言・指導を行う専門的技能を有する集団を組織して、その機能の活用を検討する必要がある。
ウ 発達障害者支援センター全国連絡協議会との関係性の充実を図り、そのネットワークを活用して、支援現場の実績把握を行う必要がある。
エ 支援現場の情報を常に吸い上げるシステム構築や、情報分析会議等を活用した上で政策提言やウェブサイトからの発信をするためには、ICT等の計画的導入を図る必要がある。
A 支援者(人材)育成
ア 国の機関のひとつとして、eラーニングシステムなどICT環境を整備し活用することにより、効率的に支援者(人材)育成を行う必要がある。
イ 巡回支援専門員や発達障害者地域支援マネジャーは、現在横のつながりがないため、発達障害情報・支援センターと厚生労働省本省が連携して全国組織を構築し、統括することによって専門性向上を図るべきである。
B 支援体制整備の充実及び均てん化への取組
ア 自治体における好取組事例を収集・整理・発信することで、支援体制整備の充実及び均てん化に寄与すべきである。
イ 各発達障害者支援地域協議会の間で情報共有を図るために、発達障害者支援地域協議会のネットワーク化を検討する必要がある。
C 「トライアングル」プロジェクト報告への対応
ア 国民が発達障害に関して根拠に基づく正確な情報を、利便性良く得られるようにするため、発達障害情報・支援センター及び発達障害教育推進センター共通のポータルサイトを構築し、より早く的確な情報が得られるようにICTの活用等、環境整備する必要がある。
イ 専門性の整理は、有識者等を含めた検討会を立ち上げて、研修テキストの作成について検討する必要がある。併せて成果の普及方法等も、全国の自治体で地域特性に応じた形での導入・活用について検討する必要がある。
D 国リハ内の連携
 国リハ内の発達障害者支援連携の調整を発達障害情報・支援センターが担うべきである。

<支援機器イノベーション情報・支援室>
@ 情報発信と人材育成
 地域によっては、支援機器に関する十分な知識、技術が普及されているとは言い難いところがあり、情報発信や人材育成等を通じて、地域格差の解消を図っていく必要がある。
A 更生相談所等との連携
 補装具支給制度に新たに貸与が導入されるなど更生相談所等の役割がますます重要になっており、更生相談所及び地方公共団体との連携、ネットワークの構築が必要である。
B 対象支援機器
 補装具を中心とした支援機器だけでなく、福祉用具、その他障害者の支援機器全般について取り扱っていく必要がある。また、引き続き、利用者の個々のニーズに応じた支援機器が適正に給付されるよう必要な支援を検討していく必要がある。
C 体制整備
 障害者の支援機器全般に関する情報拠点化、情報発信、制度の普及、人材育成等を行っていくための体制整備を検討していく必要がある。

 効率的かつ効果的な事業運営  効率的かつ効果的な事業運営を図るため、引き続き、各部門における事業のPDCAサイクル
(企画・実施・評価・見直し)の取組状況を企画部門において取りまとめ、国リハ全体で事業の着実な実施、見直しに取り組んでいく必要がある。

 リハビリテーションに関する国際協力
  国リハが有する障害者のリハビリテーションに関する情報や技術を以て、WHO指定研究協力センターとしての活動等国際機関への協力や日中韓のリハビリテーションセンター間の連携・協力等の国際協力の活動を今後も推進する必要がある。

 情報セキュリティ対策
  インターネットを使った情報収集・発信に当たっては、情報セキュリティの確保について全職員に周知徹底し、研修を通じてその重要性を一層認識することが必要である。
 また、平成30年8月からLANシステムが厚生労働省本省のネットワークに統合されたため、厚生労働省本省との連携を密にしながらセキュリティ対策を推進する必要がある。


国立障害者リハビリテーションセンターの今後のあり方に関する検討会構成員名簿

○学識経験者または関係行政機関 *50音順  (敬称略)

氏名

役職

奥山 眞紀子

国立成育医療研究センターこころの診療部長

鎌田  実

東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻教授

芳賀 信彦

東京大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学教授

南   砂

読売新聞東京本社常務取締役調査研究本部長

吉永 勝訓

千葉県千葉リハビリテーションセンター長


○厚生労働省本省

氏名

役職

橋本 泰宏

社会・援護局障害保健福祉部長

内山 博之

社会・援護局障害保健福祉部企画課長

遠藤 征也

社会・援護局障害保健福祉部企画課施設管理室長


○国立障害者リハビリテーションセンター

氏名

役職

飛松 好子

総長

森   浩一

自立支援局長

西牧 謙吾

病院長

阿久根 徹

副院長

緒方  徹

障害者健康増進・運動医科学支援センター長

 

氏名

役職

小野 栄一

研究所長

深津 玲子

学院長

吉田 正則

管理部長

伊沢 功次

企画・情報部長

山田 英樹

企画統括官



国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局秩父学園の
今後のあり方に関する検討会構成員名簿

*秩父学園は自立支援局の他施設と対象者や事業内容が異なるため、秩父学園に求められる役割や重点的事業等の検討会を別途設置し検討を行った。

○学識経験者または関係行政機関 *50音順  (敬称略)

氏名

役職

早川 洋

社会福祉法人慈徳院嵐山学園園長、児童精神科医

大塚 晃

上智大学総合人間科学部社会福祉学科教授


○厚生労働省本省

氏名

役職

遠藤 征也

社会・援護局障害保健福祉部企画課施設管理室長


○国立障害者リハビリテーションセンター

氏名

役職

飛松 好子

総長

森   浩一

自立支援局長

西牧 謙吾

病院長

 

氏名

役職

川鍋 慎一

秩父学園園長

齋藤 奈津子

秩父学園療育支援課長

山田 英樹

企画統括官